映画「アリー/ スター誕生(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる作品。
★★★☆☆ まあまあ。お金を払って映画館で観ても悪くない。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。無理して映画館で観る必要なし。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
ディレクター目線のざっくりストーリー
ジャクソンは世界的カントリー歌手だったが、酒とドラッグに溺れる日々を送っていた。カリフォルニア州でのコンサートの後、ジャクソンはドラッグ・バーに立ち寄ると、そこでパフォーマンスが始まり、バーのウエイトレス、アリーの歌に大きく心を揺さぶられた。
アリーの歌に惚れ込んだジャクソンは、彼女を次のコンサートで起用することに。コンサートの当日、ジャクソンとアリーのデュエットは観客から大喝采を浴びる。それで、ジャクソンはアリーをツアーに同行させ、共に旅を続ける内に、二人の間に恋愛感情が芽生える。
やがて、アリーはメジャーデビューのチャンスを掴み、カントリー歌手からポップス歌手へ転身、瞬く間にスターダムを駆け上る。激しく恋に落ちて固い絆で結ばれる二人ではあったが、ジャクソンはアリーの転身に反対で、そのストレスから益々酒に溺れて行き、全盛期を過ぎた彼の栄光は陰り始める。
そんな時、アリーのマネージャー、レズがジャクソンの存在がアリーの出世の邪魔になっていると考え、それをジャクソンに伝えると、とんでもない悲劇的な結末が待っていた… ※PG12
80年間に4度も作られている、アメリカ人が好きな物語
本作は、1937年に公開(ジャネット・ゲイナー主演)された映画『スタア誕生』の4度目のリメイク作品だ。80年間に4度も作られているのだから、余程アメリカ人が好きな物語だと言うことになる。
因みに私はオリジナル版、1954年公開(ジュディ・ガーランド主演)の『スタア誕生』、1976年公開(バーブラ・ストライサンド主演)の『スター誕生』と、過去の全3作品は鑑賞済み。特に、76年公開のバーブラ・ストライサンドとクリス・クリストファーソン主演の作品は思い出深い。
米国では身近で不滅の問題を、真正面から描いた作品
物語は、実に簡単だ。こう言っては何だが、正直、目新しい物語ではない。ダメ亭主の旦那が、奥さんが金持ちになって嫉妬する物語であり、女性が逞しく夢を掴み働く物語でもあり、アルコールとドラッグ依存症の物語の3つが合体したお話だ。
どれも(特にアメリカでは)身近で不滅の問題であり、何としても解決しなくてはいけない問題を真正面から扱った作品だ。
被写体とカメラが極端に近く、臨場感が半端ない!
そのために、本作の描写には強烈なリアリティが要求される。でないと、嘘に見えてしまうから。そのために、監督はカメラと被写体の距離を極端に縮めた。要は、カメラと俳優がとても近いのだ。
と言うことは、観客と俳優(登場人物)の距離が近いってこと。そのことで、スクリーン内で起きていることの臨場感が半端ない。また、台詞もほぼアドリブで、撮影現場でNGテイクになったカットもOKカットで使っているとのことで、更にリアリティが押し寄せるのだ。
歌唱&ライブシーンが見所。音楽の使い方も見事!
本作の大きな見所が、歌唱&ライブシーンだ。レディー・ガガの歌を始めとしたパフォーマンスの素晴らしさはもちろんのこと、監督も務めるブラッドリー・クーパーの歌と演奏シーンも、とても感動的に創り込まれている。
私は、映画を観る2週間前からサントラ盤を購入して聴き込んで劇場へ足を運んだのだが。サントラ盤には劇中で大変重要な楽曲「アイル・ネヴァー・ラヴ・アゲイン」に「映画バージョン」と「エクステンデッド・ヴァージョン」の2つが収録されているのが不思議だった。
ネタバレになるからこれ以上は避けるが、なぜ「映画バージョン」の声が途中から変わるのか、そこだけでも本作を見る価値がある。どのシーンで流れるのかはお楽しみだ。
スターが完成するのは悲劇があってこそ
とにかく、全般に亘って音楽が素晴らしい。本人が歌いパフォーマンスをするリアリティと、劇中の登場人物がきちんとシンクロして見える、特にガガの演技力には驚いた。どうやら若い頃から演技の勉強もしてたそうで、ガガの多才さが大いに発揮され、「スターが完成するのは悲劇があってこそ」と言うショービジネス界の厳しさがひしひしと伝わった。
2人の愛の深さの描写は乏しいのが残念だが、泣ける映画だ!
残念なのは、ジャクソンとアリーの愛の深さの描写が、何とも乏しいことだ。描かれているには描かれているが実に表面的。歌のシーンでは内面性まできっちりと描写出来ているのに、二人の愛のシーンではそれがない。もちろん、脳内補完出来るのだが、136分の上映尺があれば、もっと二人の心の動きや思いの深さを表現するべきだった。
それが無いから、最高に盛り上がるラストシーンが不完全燃焼になってしまった。「あれっ? そこまでアリーってジャクソンを愛してたの?」って。従って、ここだけの話、上記の「ディレクター目線のざっくりストーリー」は、事前に読んでおいた方が良いと思う。実は、ここまできっちりと描写されていないから(困)
ただ、自分が見出し愛したアリーが、どんどんスターになって行き、疎外感と劣等感に苛まれるジャクソンの描写は、自分が監督なだけにしっかり出来ているから、泣ける映画には仕上がっているのは間違いない。
あとがき
全編に亘ってカメラと被写体の距離が非常に近くて、臨場感とリアリティは十分です。音楽のシーンは全てに於いて完成度も高いです。「スターが完成するのは悲劇があってこそ」と言うアメリカのショービジネス界の厳しさが、ひしひしと伝わる作品でもあります。ただ惜しいのは、男女の愛の深さの描写が乏しい事。でも、泣ける映画に仕上がっています。
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