まんぷく (第34回・11/8) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『まんぷく』(公式)
第6週『お塩を作るんですか!?』の
『第34回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
神部さんが連れてきたのは、戦争で身寄りを無くした、14人の男たち。彼らを受け入れる課題が山積みの中、萬平さんは塩の大量生産を目指します。一方、若者たちの食事にお風呂、寝床の準備と、福ちゃんと鈴さんはヘトヘト。でも若者たちを引っぱる萬平さんの生き生きとした姿に、福ちゃんは疲れを忘れて、新たな可能性を…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
アバンでのカメラアングルや編集も手抜きが無くて良かった
アバンタイトル。前回の内容の良さが、アバンタイトルにも使用された前回のラストシーンを見ても分かる。黒く見える大量の鉄板を画面に入れ込んで、画面を右下は暗めで左上は明るめの斜めの構図で、まず現状の不安定さを表現し、更に福子と萬平を俯瞰のカットにすることで “2人の不安感” も表現。
そして、まるで明るい未来がやって来るように、画面の一番明るい場所から上手(画面右)向きに、たくさんの働き手たちが入って来る。それも、一気に入って来ずに徐々に入って来ることで、「一体、何人いるの?」と言う視聴者の期待感も高めた。こう言うところを手抜きしないのは、とっても良いことだ。
短い海辺の作業シーンは、演出、編集の妙だ
主題歌明け。先日の感想でも書いた通り、泉大津の新居のスタジオセットの出来は、『あさが来た』以来の秀作だと思う。そして、スタジオセットが良く出来ているから、オープンロケのシーンが映える。特に、撮影時期が良いせいもあって、海の青色が実に美しい。
テレビの外は紅葉が始まり、秋から冬への季節の変わり目だけに、このような清々しい風景を見るだけでも、朝ドラらしくて良いなと思える。もし、あの海辺のシーンが無くて、主題歌明けに鈴のアップから始まったら、ドラマそのものが小さくなってしまう。この辺は、演出、編集の妙と言って良いと思う。
鈴には、"視聴者の声の代弁者" と言う重要な役割がある
さて、5人程度で良かった若い働き手たちが、神部の尽力で14人(も)集まってしまい、食事や風呂や寝床、そして金銭的な問題が山積なのを愚痴る福子。それを、「暴動」と「土下座」対「武士の娘」の対峙構図にして、武士の娘敗退の結論に導いたシーンも楽しかった。
そこで、鈴について、先日の『拍手コメントへ返信 (2018/11/7,8の分)』にも書いたのだが、本来は今回を見て書こうと思っていたので書いてみる。
鈴には、朝ドラの中で大事な役割として、“視聴者の代表” や “視聴者の代弁者” と言うのがあると思う。福子や萬平たちは、意外とフィクションの中の人たちって感じが強い。決して、非現実的と言う意味でなく、テレビの中の人物と言う感じだ。
それに対して、鈴は、テレビの外の視聴者と唯一繋がっている登場人物で、架空の出来事に対して文句や意見を言う視聴者みたいな立場で、テレビの中で生きている人と私は捉えて見ている。
すると、福子の不満や愚痴は視聴者が感じていることを喋っているようにも見え、福子が鈴を上手に窘(たしな)める姿は、福子が「劇中の私もおかしなことは分かっていますが、これはフィクションの朝ドラですからね」と我々を説得しているように見えて来る。それが前回も今回も上手く行った。
例えば、今回のこの鈴の台詞↓なんて、正にその代表的なものだ。
鈴「ああ… あのまま 克子の家にいてれば よかった」
これまで少々パターン化していた母と娘の会話に新鮮味を感じるのは、私の見方が変わったからなのか、実際に脚本と演出もそのような方向に持って来ているのかは分からないが、今回、鈴の最後の台詞「土下座は い…」が、途中でカットされて次のシーンへ繋がれた。これも「視聴者さん、まずは先を見て」と言う作り手のメッセージに見えた。
萬平に目配せした "大人の仕草" で福子が大人の女性に!
その後の展開は、15人の働き手を受け入れたは良いが、課題が山積みのままの大胆な見切り発車。まるで、ドラマのお手本のような “見切り発車の初日” の描写で、福子と鈴のヘトヘトの姿へ。そんなヘトヘトの鈴が、ここでも視聴者の代弁をする。
鈴「塩は いつ出来るの? いつ お金が入ってくるの?」
どうだろう。先の見方で鈴の台詞を捉えると、鈴の愚痴が実に普通のことを言っているのが分かる。そして、実は萬平自身も、それを支える福子も “見切り発車” は十分承知で、「文句ばかりの母の面倒は私が見ます」と言わんばかりに萬平に、福子が鈴に気付かれないよう目配せをして風呂に入るように促すくだりがあった。
あの “目配せ” は良かった。どうしても、これまで無心に夫の才能を信じる妻に見え易かった福子が、前回から実はきちんと萬平の考えていることや実行しようとしていることを先読みして、行動している “大人” に見えるようになったから。
喋り方はまだまだ幼稚だが、大人らしい仕草をちょこっと入れるだけで、印象が全く変わる。その辺の演出も明らかに前回から変わったように思う。
過程を端折らず、日常や過程を丁寧に描くのは大切なこと
その後の、塩づくりの作業の様子や福子がハナの家に借金をする様子も、実に普通だ。ただ、最近の朝ドラの傾向として、過程を描かずに結果だけを羅列して、寄席が増えただの、扇風機が完成しただのの類とは明らかに違う “過程” の描写。これが大事なのだ。
決して斬新さや新鮮味は感じないが、過程を端折るより、奇を衒わず日常や過程を丁寧に描き続けるのは本当に良いこと。脚本家も演出家も、やるべきことはやる。それで初めて萬平たちも、やるべきことはやっているから結果が出る…に繋がるのだから。
あとがき
中盤で鈴が言った「はあ… 先が思いやられる」を、そのまま15分間描き続けた第34回。人々の感謝や思いやりの気持ちも描写され、ラストでは萬平が「僕たちの塩が出来たら 清香軒さんにも お分けしますよ」と言い、萬平の塩が商品として通用するのか見極めの映像が入りそうな良き予感さえ漂いました。
作風の好みはあると思いますが、どうやら前回から再び着実に物語を前進させながら、ホームドラマを描き始めたようで、なによりです…
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