まんぷく (第29回・11/2) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『まんぷく』(公式)
第5週『信じるんです!』の
『第29回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
福ちゃんたちが居候している香田家に忍び込んできた泥棒は、神部茂と名乗りました。戦争で家も家族も失い、路頭に迷った末に魔が差して泥棒に入ったとのこと。実は大阪帝大出の秀才だということがわかり、子どもたちの家庭教師として家に置いてもらうことになります。ある日、闇市に出かけた福ちゃんと萬平さんは、見覚えのある顔をみつけます。因縁の再会…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
前回は、こんな内容だった…
前回は、福子たちが居候している香田家に、福子たちが始めたハンコ屋の売り上げ目当ての「神部茂」と名乗る泥棒が忍び込み、次の夜には克子の夫・忠彦が無事に戦地から帰還した。
それも福子と萬平の子づくりに協力すると言う、気が利いているのか良く分からないが、とにかく鈴ならではの微笑ましい理由で、忠彦のアトリエに寝床を作った鈴の大活躍で締め括られた。
無事に帰還した忠彦の不穏や表情で終わったアバンタイトル…
そして、今回のアバンタイトルでは、神部が庭掃除をし、福子たちはハンコ製作、そして忠彦は今まで通りに絵を描く日常が始まる様子が描かれると思いきや…
忠彦自身が以前に描いた「木の実を加えた鳥(コザクラインコだろうか?ラブバードと呼ばれる程パートナーへの愛情が深い)が、枝に下向きにぶら下がっている絵」を見て触れ、そこに野鳥らしき鳴き声が重なり、何かを思い出したように不穏な表情に。今回も何かが起こる予感だ。
「置いておいて」と「と思いきや…」の展開が面白い
主題歌明け。忠彦の不穏な表情の件は置いておいて。この辺の「置いておいて」的な前回でも触れた「箇条書きなのに面白い」は今回でも踏襲される。なぜか忠彦は絵を描かずにハンコ製作を手伝い、その一方で神部が大阪帝大出の秀才だと言うことが分かり、子どもたちの家庭教師として家に置いてやることになる。
まあ、トントン拍子で嬉しいこと続きかと思いきや…。この「と思いきや…」と言う展開が本作には多用される。要は「先が読めない」とか「予想を裏切る」とか「メリハリがある」と言うことに繋がる訳だが。
アバンの「置いておいて」が、5分後に回収される気持ち良さ
この度の忠彦が戦地で敵の照明弾の強烈な閃光を浴びて、緑色と赤色が判別出来なくなってしまったくだりの衝撃と言ったら…。だから、先に体色は緑色で、額から前胸にかけては赤色の鳥の絵を見て落胆していた…と言う訳だ。放送時間にして僅か5分間にも満たない尺で、「置いておいて」を素早く回収する。この辺も私好みの作風だ。
作家によっては忘れた頃に古いエピソードを持ち出して「神回」だの「見事な回収」だの騒ぐが、やれば良いと言うものでない。特に半年間の長丁場で幾度もやられたら、こっちの記憶力も大変だし、毎日見ている視聴者ばかりいないのだから、朝ドラに於いては「即回収」が似合っていると思うのだ。
そして、このシーンは、萬平の「治らない…」と鈴の「絵は描かないの?」に対しての、忠彦の答えの「描けません」が、こちらに何と寂しく悔しく響いて来るか…で終わる。ここまで約6分。続く寝床の場面では、画家を諦めると宣言した忠彦の気持ちを察する福子と萬平、案ずる克子が描かれて終了。ここでまた「置いておいて」となる。
加地谷を前に、萬平と福子の気持ちをしっかりと描き切った
場面には語りが入って、戦後も暑い夏から冬になったことを示しつつ、いつもの「置いておいて」のあとは「と思いきや…」を期待していると、突然に加地谷との再会だ。このシーンがこれまでの福子と萬平のシーンと違うのは、2人それぞれの気持ちを曖昧にせず、しっかりと描き切ったことだ。
それも、加地谷への怒りと同時に、加地谷への感謝(結婚出来たこと)と、2人本来の人間的な優しさを表現したことだ。実は、本作は登場人物の感情を必ずしもきっちりと描き続けて来た訳では無い。憲兵に捕まったくだりでは怒りを、幸せなエピソードでは喜びを前面に出したが、その裏にある気持ちまでは曖昧にして来たのだ。
あの晩、夫婦二人三脚がスタート地点から、また一歩前進した
例えば、前回から登場した神部についても、正直曖昧だ。悪く言えばなし崩し的に同居してしまった。しかし、前々回で萬平と福子に叱咤激励した世良は、本音を全部ぶちまけた。だから、萬平と福子が「夫婦二人三脚のスタート地点」に立ったとしか見えなかった。そして、今回の萬平と福子は、加地谷へ本音を全部ぶちまけた。
だから、2人が加地谷と再会した晩、夫婦二人三脚がスタート地点から、また一歩前進したように見えなかっただろうか。互いが加地谷を思う気持ちを察して、夫婦で同じ道を進んで行くように選択したように。
ハンコで一捻り。この辺の絶妙さが本作の面白さの原点かも?
翌日、萬平に頼まれた萬平が加地谷を探しに来て、萬平の言伝と「加地谷」と印字されたハンコを手渡し帰って行く…。「自分自身の証」「自分が自分であることを証明する大事なもの」を加地谷に(渡して…と言うより)授けて、自分の人生を歩むようにとの無言の叱咤激励に見えた。
まさか、ここで福子たちが家族の生活を豊かにするために始めたハンコ屋のハンコが、加地谷の人生の再起を願うハンコになるとは! ハンコ1つで、戦後を生き抜く人々の逞しさや苦しさを描きつつ、その後に訪れる明るい未来を感じさせた15分。全く奇を衒わないが、ハンコで一捻り。この辺の絶妙さが本作の面白さの原点かも知れない…
あとがき
前作のように、商売や発明をするのが単なる奇を衒う奇襲攻撃的な小道具にしか見えず、全て空振りしたのに対して、本作は生きるために始めた商売と発明が、我が身だけでなく周囲の人まで何気に変えて行くのがスゴイですね。神部も加地谷もハンコに救われた訳ですから。真一さんたちも無事に帰還すると良いのですが…
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