まんぷく (第26回・10/30) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『まんぷく』(公式)
第5週『信じるんです!』の
『第26回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
食料を手に入れるため、お金を作ろうと、持っていた着物を闇市で売っていく福ちゃん。嫌がる鈴さんも連れて闇業者と交渉する中で、戦後をたくましく生き抜いている世良さんと再会します。しかし、世良さんは新しい仕事をみつけられずにいる萬平さんを見て…。そんな中、福ちゃんの言葉をきっかけに、萬平さんは新しい商売を思いつきます!
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
不公平の時代を、親孝行と半額と涙と笑顔で直球に描いた!
土曜日の感想にも書いた通り、本作の脚本と演出が昨今のテレビドラマ、特に朝ドラで “テンプレート化されてしまった戦争表現” に対して、違ったアプローチをしている点が興味深いと書いた。
今回のアバンタイトルもそれに則っていた。まあ、普通なら子供の靴磨きのくだりでは、強面のおっちゃんたちがやって来て「誰に断って商売してるんだ!」と叱られて退散するか、客に不払いされて泣くか、そんな所でないだろうか。
しかし、本作はストレートに子供たちの生き抜こうとする力強さと、父がまだ帰還していないから母を助けたいと言う母への純粋な気持ちの両方を描いた。そのために、靴磨きの客には半額を払わせて、客を、大人を悪人にせず、その上で、子供たちが感じた悔しさや理不尽さ、そして靴磨きを上手になろうと言う向上心まで覗かせた。
そして、そんな子供たちの気持ちを受け止める側は、徹底的に無駄な台詞を排除して、克子の涙と福子の笑顔だけで表現した。不公平が当たり前の戦後の時代を、親孝行と半額と涙と笑顔で直球に描いたアバン。見事に映像表現で魅せた2分間。これだけで、今回も満足のいく仕上がりになりそうな予感だ。
物語が期待通りの方向に進む。それが朝ドラらしくて良い
主題歌明け。自分の高価な着物は1枚たりとも売るつもりのない鈴が、いつものように鈴と萬平に愚痴をこぼすシーンの中で、娘と結婚したら幸せにすると言ったのに、今貧乏になっていると鈴が萬平を責める場面があった。時代を考えれば理不尽な責め苦なのだが、直後のこの鈴の台詞が “本作を前進させる原動力” に聞こえた。
鈴「(列車に乗って買い出しに行くこと)そんなことは 誰でもできる。
あなたは 発明家なんでしょ。会社がなくなったって
何か みんなが欲しがるものを考え出すとか できないの?」
そう、いつまでも本作らならではの戦争表現を楽しんでいる場合でない。本作の進むべき方向は見えているのだ。だから、本作の戦争は短時間の描写で終わった。そして、その直後に忠彦の仕事場で数枚の絵画を見ている萬平に、福子が話し掛けるこの台詞も “本作を前進させる原動力” だ。
福子「みんなで頑張れば なんとか生きていくことはできます。
萬平さんは もっと先のことを考えて下さい」
この台詞のいいところは2つ。1つは「生きていくことはできます」と断定したこと。「生きていくことはできると思います」ではないのだ。そして、「できる」と断定し、萬平を安心させた上で、実は「考えて下さい」とさらりと命令しているのだ。そう、萬平がこのままではドラマとして困る。だから発破をかけたのだ。
言葉数の少ない萬平に対して、喋るキャラの鈴と福子をさり気なく利用して、ドラマが前進していること、これからも前進することを視聴者に提示している。どんな方向へ進むのか全く見当がつかず、進めば進んだで何故そっちへ行くの? と思わせた前作との大きな違いだ。物語が期待通りの方向に進む。それが朝ドラらしくて良いのだ。
全編に流れる "新たな発想で生活を良くして行こう" の精神
「すいとん」を小さめの大福だと思って、目をつぶって食べると言う福子のアイデアのくだりも良く出来ていた。そもそも “新たな発想で生活を良くして行こう” と言うドラマだから、発明やアイデアは萬平の専売特許じゃない。冒頭での子供たちの靴磨きもそうだし、「すいとん」もそう。
そして、「すいとん」はどんなに思いを込めても「すいとん」であることには変わりがないと言う結論で終わるかと思いきや、家族全員の落胆する姿を見て、鈴が心変わりをした。福子の “新たな発想で生活を良くして行こう” と言う考え方や生き方が実を結んだのだ。チャレンジして、その結果で何かが好転する。こんな朝ドラ、いいじゃないか。
脚本と俳優を前面に出し、登場人物の心境の変化を魅せた!
そして、その好転が世良との無事の再会に繋がって行く。アバンタイトルから登場人物たちの “新たな発想で生活を良くして行こう” と言う考え方や生き方が、丁寧に紡がれて来たから、全くご都合主義に見えて来ない。むしろ、心変わりをした鈴の思いが、世良との縁を引き合わせたようにさえ映る。
更に、ここでやっと世良自身が「不公平な時代」を語り出す。「不公平な時代」を描いては来たのだが、商人の世良が解説するから。ちゃんと筋が通る。商売っ気のない萬平が言っても説得力が無いのだから。そんな萬平に世良が一撃を食らわす、この台詞も世良らしい、生命力の逞しさを感じる台詞だ。
世良「さっきから黙って聞いとるけど 立花君。
君は 僕の言うことが分かっとるはずや。
僕は 残念やで。
立花君が不公平の負け組で くすぶってんのが。なあ。
はよ出てこい 発明家の立花君」
そして、ラストは夫婦の何気ない日常の会話から、物語が再起する。この15分間、演出の安達もじり氏らしい強い意図を持った映像で魅せる手法でなく、脚本と俳優の演技を前面に出して「不公平の時代」を描きながら、登場人物の心境の変化を魅せた。このやり方も実に王道。安心感のある第26回だった。
あとがき
必要最小限の台詞を積み重ねて、登場人物たちの心情を描き、映像はそれの補足的な役割で、派手さや目新しさを押し付けない作戦が成功していますね。だから、じっくりとドラマに入り込めるし、展開に無理がないので、登場人物にも共感し易く、更に着実に前進するので応援もしたくなる。1か月でここまで到達するのも凄いと思います。
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