まんぷく (第17回・10/19) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『まんぷく』(公式)
第2週『…会いません、今は』の
『第17回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
福ちゃんにまた会いたいと、憲兵隊の厳しい取り調べに耐え続ける萬平さん。福ちゃんはそんな萬平さんを救うために奔走しました。協力を買って出た世良さんの調べによって、怪しい人物の影が浮かんできます。そしてついに三田村会長が動き、憲兵隊に顔のきくある大物に会いにいくことに…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
今回は、ちょっぴりカメラのお勉強会をします
今回のアバンタイトルは、なかなか興味深い編集が施されていた。本作のカメラワークの特徴の1つに「俯瞰(ハイアングル)と煽り(ローアングル)」と「ローとハイのポジション」と言う縦軸移動のカットの多用がある。因みに「俯瞰」とは被写体を上から見下ろすようなカメラアングルのこと。逆に「煽り」は被写体を下から見上げるアングルのこと。
カメラの高さと向きの組合せは全部で9通りある
「ローポジション」は子どもや小動物など低い位置にカメラを置くこと。ハイポジションは高い位置にカメラを置くこと。この「2×2」の組合せで、それぞれの意味があるのだが、文章で書くととんでもない量になるので、それは別の機会に…
アバンの5つのカットで、実践編やります!
例えば、福子が部屋から月を見上げているカットは「ローポジション×煽り」の組合せで、且つ被写体が画面下手(左)を向いているから、まず「ローポジション×煽り」で未来を案じる雰囲気を出して、下手向きでその未来が暗雲であることを示している。
次のカットの福子は「ハイポジション×俯瞰」に下手向きの組合せ。これは上からの圧力に抑圧されている上に、左上を見る福子で未来を案じているものの、その未来は明るくないってことを示す。
次の5つのカットは画面右上を見る萬平の「アイレベル」のカット。「アイレベル」は被写体の顔の高さにカメラを置くことで、強く被写体の心情を描くのによく使うポジション(高さ)。それで萬平が明るい未来を感じさせる画面右上を見ている訳だ。
この次のカットはその直前のカットの意味を更に強調するために、「ローポジション×煽り」の右上目線にして、より明るい未来を信じる萬平が表現されている。そして次のカットは「ハイポジション×俯瞰」で右上目線の顔に寄って行くカット。これで、より萬平の信じる気持ちの強さが表現された。
この4カットが連続することで、福子も萬平も不安な気持ちは一緒なのだが、福子はネガティブ、萬平はポジディブに「互いが再び生きて会えることを願っている」ことが強調される。なぜネガティブとポジティブなのか? 福子はポジティブ派じゃないの? と思われるかも知れない。
でも、ここで描くべきは2人が離れていても「感じる不安」が一緒で、未来への思考回路は違うと言う個性の描写。それを僅か30秒程度内の4カットで表した。この4カットを初めて見た人はナレーション無しでも、投獄されている理由は分からなくても、男性の投獄で引き裂かれた男女が再会を信じていることは分かると思う。
映像だけで表現すると言うことはこう言うこと。それをアバンでサクッとやるから堪らない…
こちらの記事も、参照して頂けると分かり易いです。
[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~
なぜ「永遠の愛を誓った男女の運命の再会」に見えたか?
さて、今回の逮捕からの釈放劇。正直、数回しか会っていない福子と萬平が、どうしてここまで互いを大切に思い、互いの未来を信じられるのかは、実は微妙なのだ。そして、釈放される理由についても実に説明っぽくて、本来ならシラケるはずなのに、そうならない。むしろ、その逆、「永遠の愛を誓った男女の運命の再会シーン」に見えた。
それは何故か? 答えは簡単。福子と萬平と言う人物が、視聴者に応援され共感される登場人物として描く努力をし、それが視聴者に伝わっているから「虚構」になんて見えないのだ。「2,3度会っただけなのに?」「大袈裟じゃないの?」なんて、微塵も感じさせない説得力。それが本作の脚本と演出、そして俳優の演技によってもたらされているのだ。
フィクションを作りものを思わせず、自然に「虚構の中の真実」として受け入れさせるのは、決して俳優の演技力だけでは無理。計算し尽された脚本と演出の上で、登場人物たちが自ら考えて動く姿を丁寧に描き紡いでいくしかない。それを本作は出来ているから面白いし、連ドラとして「続く時間軸」を楽しめるのだ。
物語を創り紡ぐのは登場人物であってナレーションでない!
さて、感動の再会の場面は、思いの外、尺を短くしたのも良かった。何故って?
だって、本作は「永遠の愛を誓った男女の運命の再会する朝ドラ」ではないのだから、2人のこの先長い人生の忘れられない出来事ではあるが、所詮はその先の出来事に比べれば「ただの1ページ」。そう言うことも感じさせる意味もあったと思う。
そして、世良の「毎日 ご苦労さん」のたった一言で、福子と萬平の距離感が一気に縮んだことも分かった。例えばここで、「福ちゃんは〇日間、毎日萬平さんのお見舞いに来ています」なんてナレーションが入ったら一気に興覚めしてしまうに違いない。あくまでも物語を創り紡ぐのは登場人物であってナレーションでない。この鉄則も守られているのだ。
あとがき
ラストは「食べることは生きること」できれいに締め括るかと思いきや、鈴の「武士の娘です」で明るく「つづく」へ送り出しましたね。今回も見応えのある15分間でした。とても良い感じで第3週を終えそうで、それも良かったです。
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