まんぷく (第5回・10/5) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『まんぷく』(公式)
第1週『結婚はまだまだ先!』の
『第5回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
咲姉ちゃんの結婚から3年の月日が流れました。すっかりフロント係の仕事に慣れた福ちゃんはある日、大阪商工会のパーティーを手伝います。そこでズボンを濡(ぬ)らしてしまった男性のお世話をすることになった福ちゃんがズボンを乾かしていると、「今井さんですよね?」と話しかけられます。「え?」と、改めて顔をよく見た男性は…会社が成功して立派になった萬平さんだったのでした!
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
無言のカットと語りのバランスが秀逸だったアバンタイトル
前回から3年経過。前回の長台詞のお祝いスピーチのおかげで福子の喋りにだいぶ慣れた本作。相変わらずアバンタイトルの編集も無言のカットとナレーションのバランスも的確で、説明過剰になっておらず、安心してスタートした第5回。
ドラマ演出のお約束である「キーン!」が無かった!
ホテルで開催された大阪商工会のパーティーのシーンで意外な演出があった。ドラマでよく見かける場面に、ホテルなどの大きな会場でマイクに向かって誰かがしゃべり出そうとするとハウリングが起こる演出があるのにお気付きだろうか。
ちょっと専門的な話になるが、ハウリングとは所謂「共鳴」のことで、ドラマでは「キーン!」と言う音響効果で表現される。最近は音響機材の性能が格段に進歩して無くなって来たが…
劇中の時代の音響機材ではあって当然だし、ドラマの演出上でも大阪経済界の重鎮が登場するシーンだから、「キーン!」と入れて、ゲストたちを三田村の方に向かせると思ったのに、その演出が無かった。時代的にも演出的にやるのが当然のことを演出家・渡邊良雄氏はやらなかった。これはとても共感が持てる。
実は、こう言う「ドラマ演出のお約束」をやればやる程に作品の個性が失われて行くのだ。ちょっとしたことだが、良くやった、いや良くやらなかった と思う。
3年前の萬平との出会いに気付かなかった福子で描いたこと
「ドラマ演出のお約束」の話をしたから、今度は「ドラマ脚本のお約束」的な話をする。萬平のズボンが濡れてしまい、福子がアイロンをかけるくだりにそれはあった。まず脚本がお見事だったのは、このシーンで視聴者に2つの「ハラハラドキドキ」をさせて福子への興味関心を寄せさせて成功したことだ。
1つは、三年前の出会いなのに福子が萬平のことになかなか気づかない「ハラハラドキドキ」だ。これで、福子が記憶力抜群でないことや、あまり小さなことに拘らないおおらかな性格であることが予想できた。
アイロンで焦がさない脚本と演出に、作り手の思いが見えた
もう1つは、横を向きで萬平と話しながら福子がアイロンをかけていることで、いつズボンを焦がすんだと言う「ハラハラドキドキ」だ。これなんかは、「朝ドラのお約束」とも言って良いような脚本であり演出なのに、これもやらなかった。
やれば「ほらね」と微笑ましい一瞬は生まれるが、ここで福子がドジである印象を付ける必要がないとの判断なのだろう。いや、ここで「お約束」をやることで、ホテルのフロント担当に抜擢された才能も、幻灯機を披露宴で使ったセンスも、あわや消してしまう可能性があった。
きっと、それらを避けるために「お約束」をやらなかった。「お約束」が面白いのに…と言う朝ドラの楽しみ方もあろうが、ドラマを描く、登場人物を理解して貰う「状況説明」の今では、やるべきでないと言う判断には共感する。
萬平と福子の互いへの気持ちを、少しずつでも描くべき
前回までの描写だと、いずれは結婚するであろう福子と萬平を分けて並行に描いていく手法に疑問を感じていた。分かっているなら早くくっ付けた方が良いのだ。それで失敗したのが『わろてんか』だ。いつまでも夫婦になるべき2人を並行に描き続けたせいで、お互いを思う気持ちが表現されず、結果的に「どこが好きで結婚するの?」となった。
だから、本作もそうならいか心配したのだ。『結婚はまだまだ先!』と言うサブタイトルから想像すると、次回には突然の萬平からのプロポーズがあるのだろう。そして、咲姉ちゃんの病気で恋バナムードは1週間お預けって流れになるんだろう。この1週間の「福子と萬平の並行路線」が実に心配だ。
しかし、今回、3年経過した時点で、再会させて更に萬平の気持ちをチラリと描いた。こんな感じで良いから、咲姉ちゃんらの枝葉の部分は描いても、本作の背骨である「夫婦二人三脚」的なところは、毎回少しずつでも描いて欲しい。そうすれば、この調子で安心して見ていられる朝ドラになると思う。
あとがき
「お約束」をやらなかった脚本と演出に明るい未来が見えたって感じの15分間でした。それは、成すべき事と為さぬべき事を、しっかり精査して作品が作り込まれているのを感じたからです。まだまだ先がどうなるか分かりませんが、第1週の金曜日に糸電話のエピソードでだらだらやっていた『半分、青い。』より、ずっと面白いです。
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