カーネーション:再放送 (第109,110回・2018/9/3) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第19週『自信』の『第109回』と、第20週『あなたを守りたい』の『第110回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第109回】
直子(川崎亜沙美)の見舞いに行った千代(麻生祐未)。若者たちの将来に思いをはせる。一方優子(新山千春)の店での修業もかなり板についてきた。若い妊婦からサックドレスの注文が入り、糸子(尾野真千子)は優子に任せてみる。はりきって取り組む優子だが、まじめで完璧主義なのが気になる糸子。案の定、仮縫いに時間をかけすぎ妊婦が倒れてしまう。大したことはなく、謝った優子も気を取り直すが、直子からある知らせが入る。
【第110回】
昭和34年、直子(川崎亜沙美)は若手デザイナーの登竜門・装麗賞を取る。優子(新山千春)は直子を祝福するが悔しさをこらえきれない。糸子(尾野真千子)は受賞を喜び、優子に対してはふだんどおりに振る舞う。北村(星田英利)が糸子がデザインした服が売れたと金を渡しに来る。時代遅れだったはずだと不思議に思う糸子。自分にはどうせ才能がないと店で、しょげている優子。ついに糸子は腹を立て母娘の大ゲンカが始まる。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第109回】
"自分の気持ちを良く喋る糸子" が映像として魅力的に映る
本放送時は、2012年2月11日(土)で、第19週『自信』の最終回。直子の見舞いに行っていた千代が、東京から無事に帰って来て、安堵する糸子と優子。だが、安堵するのも束の間、若い妊婦がオハラ洋装店を訪れる。店に出始めて約1か月、ぼちぼち仕事に慣れて来た優子に、糸子がサックドレスのデザインを任せてみることにした。
自信満々で仕事を請ける優子。真面目で完璧主義の優子は、デザインに悩み、客が “つわり” で痩せたら痩せたで悩んで、仮縫いまでに大幅に時間が掛ってしまう、特に、採寸の時には、あろうことか45分も掛かってしまい、妊婦の客はその場で気を失って倒れてしまう。涙を流して謝罪する優子。
客は「丁寧にやってくれた」と言うし、迎えに来た客の母親からは、逆に「気にせんといてて。こっちこそ世話かけて 堪忍やで」と感謝される優子。そんなまだまだ一人前とは言い難い優子に対して、こんな風に糸子が安堵のため息をついて、こう言う。
糸子(M)「たまたま優しいお客さんやったんは
優子にとってよかったんか 悪かったんか。
もっと厳しいお客で こってり油 搾られた方が
ためになったんちゃうけ ちゅう気もするけど…
糸子「ああ… よかった… よかった…」
このような、必然性のあるモノローグと台詞の組合せで、“自分の気持ちを良く喋る糸子” が映像として魅力的に映るのだ。最初の2か月にはたくさんあった、こんなのが、ずっと続いてくれれば良いのだが。
その後、妊婦の客が無事だったこともあって、松田恵と昌子からも励ましの言葉を貰って、落ち込んだ表情が明るくなる優子。と言うことで一段落だ。
優子と直子のそれぞれの "歩み" が描かれたから悪くはない
全体を通して見てみると、一段落ついた直後に、直子が東京で “ごっつい賞” を取ったらしいと言う電話が、直子から掛かって来ると言うくだりがあり、優子と直子のそれぞれの “歩み” が描かれたから悪くはない。
ただ、惜しいのは「三姉妹」なのに、相変わらず聡子の描写が少ないこと。大人の事情があるのか知らないが、もっと「三姉妹」として描いて欲しい。
「優子が完璧主義」を、糸子の独白に頼り切ったのは残念
しかし、「三姉妹」よりも惜しいことがある。それは、「優子が完璧主義」であることを、これまで大して描いて来なかったため、たった1つの糸子のモノローグに頼り切って済ませてしまったことだ。これは惜しいし、たいへん残念でもある。
例えば、序盤で優子が夜なべ作業でデザイン画を何度も書き直しているシーンに、こんな糸子のモノローグがある。
糸子(M)「とにかく真面目で
何でも完璧にやりたがりよんのは ええけど」
モノローグが言っている内容は間違っていない。しかし、ドラマなのだから、ここはモノローグなんて無くても、視聴者がすんなりと糸子に共感出来るように、「完璧主義の優子」を描いておくべきだったと思う。
幼少期や少女期の学校での宿題のやり方でも良かったし、三姉妹でのピアノの習得状況で描いても良かったし、放課後や休日の遊びの中で友だちや妹たちとケンカをしても良かったと思う。
先生から褒められたり、何か受賞したりと言うエピソードもそれらに合わせて描いていれば、この度の糸子のモノローグは無くても、デザインに苦悩し、採寸作業に時間が掛るカットがあれば十分に伝わったはずだ。とにかく大人編になった「三姉妹」の設定については、糸子のモノローグでの補強と補完が多過ぎるような気がする。
【第110回】
幼少期の「三姉妹」の描写に "濃淡がある" のが残念
本放送時は、2012年2月13日(月)で、第20週『あなたを守りたい!』の1回目。優子が妊婦の客相手に “大ヘマ” をやらかしたその日、直子から「若手デザイナーの登竜門の装麗賞を史上最年少で受賞した」との電話が入る、先週の土曜日分の続きから始まった第110回のアバンタイトル。
妹に差を付けられて寂しそうな優子に対して、平静を装っている糸子。恐らく、第102回で描かれた、昭和32年(1957)頃の話にも由来しているのだろう、直子が毎朝新聞社の絵画コンクールで大賞を獲得したが、実は優子も過去に同じコンクールに応募したが佳作しか受賞出来ずに、直子から嫌味を言われた過去があったと言うくだりだ。
前回の感想で書いたことだが、このようにきちんと事前に描いておけば、わざわざモノローグで補完しなくても、視聴者は自然に思い出すのだ。そう言うのが「時間の使い方が上手いドラマ」であり「構成の上手い脚本」と言える。どうも、この脚本家は幼少期の「三姉妹」の描写について、濃淡があるのだ。
糸子の表情も口調も、まるで善作の生き写しのようで楽しい
主題歌明け。時は、昭和34年(1959)6月。私の記憶だと、サクッと2年経過。
直子は、装麗賞を史上最年少で受賞して以来、マスコミにも登場するようになっている、その頃、オハラ洋装店には、直子の服が買えるのかと言う客が来て忙しかったと、昔話のように糸子が昌子と八重子に話している。表情も口調も、まるで善作の生き写しのようで、楽しいシーンだ。
糸子が未だに「子育て奮闘中」であることが分かった場面
そんなある日、店に掛って来た直子からの電話に優子が出る(出てしまう…の方が正しいか)。電話の相手が直子だと分かると、少し間をあけてから、無理に明るい声で話し出す優子…
優子「はい オハラ洋装店です。直子。
(間があって)聞いたで… よかったな」
直子「うん… おおきに」
優子「装麗賞 取れたんやったら もう間違いないわ。
あんたは デザイナーとして大成する」
直子「うん」
優子「姉ちゃんは まあ この店を地道に守っていくよって
あんたは 東京で思う存分 やれるとこまでやり。
あんたが 華々しく活躍すんのを
うちは 岸和田から見守らせてもらうわ。なっ」
直子「お母ちゃんに代わって」
優子「うん。お母ちゃん 直子や」
糸子「もしもし?」
直子「ちょっと お母ちゃん 何 あれ?」
糸子「はあ?」
直子「何で あんな ほうけてんよ? アホちゃうか!?
うちが ちょっと装麗賞 取ったくらいで
あんな ふぬけた声で『おめでとう』とか ぬかしよって」
糸子「何がや? 何の話や?」
直子「姉ちゃんや! お母ちゃんな 甘やかしたらあかんで!
あの根性なし どうせ 毎日 メソメソしてんやろ。
あんまし続くようやったらな一発 蹴り飛ばして
『アホか しゃっきりせえ!』ちゅうて 怒っちゃってや!」
ここで、一方的に直子は電話を切ってしまう。そのあとに、受話器に向かって怒る糸子の台詞とモノローグの(いつもの順番と逆)の、糸子のまるで「子育てに悩んでますよ宣言」に聞こえるくだりが面白い。
糸 子「何で うちが あんたに どやされなあかんねん!」
糸子(M)「せやけど まあ 直子に言われるまでもなく、
うちも ここで変な気遣いは むしろ 毒やと思てました。
普通にしちゃあたらええんや 普通に…」
時間経過をしている割に、先週の続きをやっているような感じだ。ただ、話が前進しているから悪くないし、母子喧嘩が描かれたことで、糸子が未だに「子育て奮闘中」であることが分かり、それだけでも意味がある。だって、本作は母と三姉妹の物語でもある訳だから。
相当遠くから聞こえる優子の泣き声を活かしたのは興味深い
そんな頃、北村が店を訪れ、落ち込む優子の気も知らずに、直子の受賞を大々的に褒め称える。怒って泣き出して店を飛び出して行く優子。この辺の描写も「子育て奮闘中」を補強しており、北村のキャラも活かされて楽しいシーンだ。特に、相当遠くから聞こえる優子の泣き声を録音したのは、なかなか興味深い演出でもある。
どうやら、ネタフリのようである…
さて、舞台は「珈琲店 太鼓」。年末に糸子との共同事業で作った既製品の服が完売したと伝えに来た。糸子がデザインをして売れなかった洋服だっただけに、どこに売れたのか北村に聞く糸子だが、北村は話そうとしない。どうやら、ネタフリのようである…
今回のような "母子喧嘩の積み重ね" が重要だ
そして、今度は倒れた妊婦の客の母親が、優子に服の礼を言いに訪れ、自分の服も作って欲しいと言う。上機嫌で優子に話し掛ける母親に対して、硬い表情のままの優子。糸子は我慢できずに、接客を昌子と交代させる。優子を店の裏に連れて行き、糸子は優子を一喝して店に戻る。
糸子「もう あんた 店なんか出んでええ。
お客に あんな しみったれた顔しか 見せられんやったら
店なんか出な。商売の邪魔や」
この辺も、ちゃんと母子喧嘩が描かれており良いと思う。こう言う描写の積み重ねが前述の通り、わざわざモノローグで補完しなくても、視聴者は自然に思い出す「時間の使い方が上手いドラマ」であり「構成の上手い脚本」になっていくのだ。ぞう、本作の最初の2か月の頃のように…
あとがき
週を跨いでの土曜日と月曜日分を見た訳ですが、時間経過をしているのに優子と直子の関係に大きな進展が無いため、ちょっと物語が足踏み状態であるように感じますね。丁度、1か月ほど前の「糸子と周防の不倫関係」が始まった頃のような雰囲気。
まあ、母と娘が本気でやり合っているのが面白いので、1が月前よりはずっと良いですが。さて、あの北村が逮捕されたようです。聡子の姿も見かけません。次回で物語が動くと良いな…
最後に。前回の感想に 103回もの Web拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。なお、Yahoo!テレビの9/10を見ると、大相撲中継で再放送は再びお預けのようです。
https://tv.yahoo.co.jp/listings/?&type=my&a=27&t=TV&d=20180910&s=0&va=6&vb=1&vc=0&vd=0&ve=1&st=15
残念ながら、まだ、本人は気付かずに “ネタバレ” を書いて「教えてあげるよ」と言わんばかりの人がいます。本当に “ネタバレ” は止めて下さい! 私以外にも、この再放送が初見で、番組と私の感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※暫く、テンプレです(謝)
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11813/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47 48
第9週『いつも想う』
49 50,51 52,53 54
第10週『秘密』
55 56,57 58,59 60
第11週『切なる願い』
61 62,63 64,65 66
第12週『薄れゆく希望』
67 68,69 70 71,72
第13週『生きる』
73,74 75
第14週『明るい未来』
76 77,78 79
第15週『愛する力』
80 81,82 83,84 85
第16週『揺れる心』
86 87,88 89,90 91
第17週『隠しきれない恋』
92 93,94 95,96 97
第18週『ライバル』
98 99,100 101,102 103
第19週『自信』
104 105,106 107,108
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