映画「ウインド・リバー(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる作品。
★★★☆☆ まあまあ。お金を払って映画館で観ても悪くない。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。無理して映画館で観る必要なし。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
ディレクター目線のざっくりストーリー
ネイティブアメリカン(先住民族)が追いやられたアメリカ・ワイオミング州の深い雪で囲まれた土地「ウィンド・リバー」で、女性の遺体が発見された。FBIの新人女性捜査官ジェーン・バナーが現地に派遣され 1人で捜査を開始するが、雪山の厳しい環境や不安定な気候で捜査は難航する。
そこで、遺体の第一発見者である地元のベテランハンターであるコリー・ランバートに協力を依頼し、2人は事件の真相に迫っていく…
女性にとって "生き地獄" のような土地で、男たちは…
The True Story Behind 'Wind River' Is This Hidden Injustice Against Native American Women
https://www.bustle.com/p/the-true-story-behind-wind-river-is-this-hidden-injustice-against-native-american-women-75304
ニューヨークタイムズの記事↑によれば、本作の舞台になったウィンド・リバー先住民居留地では、 ネイティブアメリカンの女性は、全米平均の4倍の割合でレイプされ、性的暴行を受けており、彼女たちは他のアメリカ人よりも殺される可能性が10倍も高い。また、住民の平均寿命は49歳で、失業率は80%。おまけにアメリカの地下核実験場でもある。
正に、女性にとって “生き地獄” のような土地で、男たちはどうしているか。男たちは深い雪に囲まれて仕事も金も夢も希望もない日々で、酒と薬物と銃に依存して生きている。そして、やり場のないウサを晴らすかのように男たちが女性をレイプし性的暴行を行うから、女性たちは常に怯えて生活し、娘が殺された親は、亡き娘の復讐も出来ずに、ただ涙する…。
アメリカの複雑な警察捜査事情が、事件の真相を闇に…
そんな町の雪の上で、1人のネイティブアメリカンの女性の遺体が見つかる。息をしただけで肺が凍結して死に至る極寒の地で、彼女は追っ手から逃げるために6マイル(約10km)を裸足で逃げて来た。
事件を解決するためにFBIの新人女性捜査官が派遣されるが、町には保安官は6人しかおらず、レイプ犯を男性たちを束ねて捜査しなくてはならないと言うのがポイントだ。女性が女性の敵をやっつけると言う分かり易い構図。でも、そう簡単に行くはずはない。
その上、先住民居留地は、応連邦政府の土地だから事件が発生するとFBIが出て来て捜査する。先に登場した保安官と言うのは警察官ではなく地元から選出される有名人みたいな立場。
で、先述の通り息をしただけで肺が凍結して死に至る極寒の地だから、今回の遺体も「自然死」って検死されちゃうとFBIは事件じゃないから手を引かざるを得ない。そんな中で慣れない極寒の地で思うように捜査を指揮できない捜査官が、地元のベテラン猟師の手を借りることにする。ここから物語が動き出す。
本作は、自分で自分の身を守るしかない "現代の西部劇"
あまり詳細に書くとネタバレになるから気をつけて書くと、要は本作は『現代の西部劇』だ。アメリカの開拓時代の無政府、無秩序の場所で、もちろん警察もないから、保安官と町のワルたちと荒野のガンマンが銃と暴力で事を解決するってのが王道の西部劇。
それを現代に置き換えて描いたのが本作。従って、問題解決の方法については今の思考回路だとハテナマークが出る訳だが、自分で自分の身を守るしかない、守ることが出来ずに死んでいくの2択しかない土地での出来事だから、しっかりと説得力があるのだ。
あとがき
社会から隔離された先住民居留地では、警察が来るのも病院に行くのも相当の時間を要し、防寒対策をしないと息を吸うだけで肺が凍り死んでしまう。そんな現代と隔離された極限状態の中で、人は倫理観を保てるのか。先住民族たちのアイデンティティは守られるのか。そして、アメリカの銃社会はどうなっていくのか。ネイティブアメリカンの “村社会”の闇から、アメリカの抱える本当の闇が見えて来る秀作です。
Wind River / [Blu-ray] [Import]
Wind River (Original Motion Picture Soundtrack)
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11656/
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