カーネーション:再放送 (第68,69回・2018/6/22) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第12週『薄れゆく希望』の
『第68,69回』感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第68回】
善作の通夜と葬式で食料を使い切ってしまい、糸子(尾野真千子)は慌てて縫い子を買い出しに行かせる。しかし、小原家は闇商売をしているとウワサが立ち、売ってもらえない。洋服作りの礼に食料をもらうため、配給所に行かなかったことが誤解を招いていた。喪が明けるのを待たず、糸子は店を開けるが、今更ながらに世間の恐ろしさを知る。だが千代(麻生祐未)は、晴れやかに糸子の妹たちを励まし、小麦粉でだんご汁を作る。
【第69回】
大日本婦人会の澤田(三島ゆり子)がやって来て、モンペ教室を閉め、ミシンを供出するように糸子(尾野真千子)に迫る。思い悩むうちに、かつて善作の世話になったという、軍需工場でもうけている男性の話を思い出した糸子。軍需品を作れば供出を免れることに思い至り、大急ぎでその縫製の手はずを整え、ミシンは事無きを得る。その過程を振り返り、結局は善作に助けられたのかと、不思議な感慨を覚える糸子だった。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第68回】本放送時は、2011年12月20日の火曜日…
第12週の火曜日。本放送時は、2011年12月20日(火)で、当時の年内の放送が12月28日の第75回だから、かなり年末の放送時に善作が亡くなったことになる訳だ。そして間もなく半年の半分が終わろうとしている、そんな第68回。
糸子が "世間" を知り、"変化と成長" をした15分間
善作が亡くなり、従業員たちを含めた大家族、大所帯の方が正しいか。大所帯を支えることになった糸子が、自分の気概や気骨だけでは何ともならない “世間” と言う “現実” を知り、周囲の人たちの助けを借りて、また1つ “変化と成長” をした15分間だった。
食糧が絶えた小原家の最大のピンチに、救世主現れる! の巻
それにしても、今回も「一話完結モノ」としての完成度の高さが光っていた。もちろん、誉め言葉であることは言うまでもない。「食糧が絶えた小原家の最大のピンチに、救世主現れる」と、でも言おうか。
その救世主も、この回のために作られた、ぽっと出のキャラクターでなく、これまでも小原家に絡んできたキャラクターの立場を少し変えて、まるで新キャラ風に仕立てたのが、まずお見事。
更に、その救世主・節子だけに手柄を与えずに、まず、いつもの千代の明るさとハルの知恵袋でピンチを乗り越えようと努力した上で、妹たちや縫い子たちの協力を経由して、節子に辿り着く流れが気に入った。
「アホやな…」までの心の変化が丁寧に描かれた
そして、今回も私が好きな、糸子の心情をモノローグから台詞に跨がって語るくだりにも、良いのがあった。
糸子(M)「配給を遠慮して行けへんかったんも ほんまや。
けど… やっぱし そんだけとちゃう。意地もあった。
うちの者をあの列に並ばさん事で
うちは 自分を特別やて思おうとしてた。
自分には そんだけの かい性があるんやて 思いたかったんや」
糸 子「アホやな…」
誰もいない店でポツンと呟いた「アホやな…」と言う結論に達する糸子の心の変化がモノローグで丁寧に語られている。カッコつけたポエムな台詞など一切使わなくても、登場人物の気持ちは十分に伝わる。そんなことも、再認識させてくれた。
濃度の濃さとテンポの良さが半端ない。やはり「名作」か!
あくまでも、主人公である糸子の気持ちの変化を中心に描きながら、周囲の人たちも描いて、更にメリハリもあるし、ラストはホッと出来る。
そして、丁寧な描写の積み重ねが、ドラマとしての面白さを支えているのは間違いない。「一話完結」でも「連ドラ」としても楽しめる『カーネーション』。間もなく半分が過ぎようとしているが、濃度の濃さとテンポの良さが半端ない。こりゃあ、確かに「名作」の予感がプンプン匂うぞ。
【第69回】今は亡き "善作のおかげさん" を描いた15分間
今回は、前回で善作がいなくなった糸子が “新生・糸子” へ大きく “脱皮” し始めた姿が描かれたような気がした。そして、今回の「脱皮エピソード」は、“糸子自身の頑張り” に加え、“善作の置き土産” であるミシンを始め、善作の仕事や交遊関係を絡めて描かれた。まさに、今は亡き “善作のおかげさん” を描いた15分間だった。
糸子が前回から "一皮剥けた" ことが誰の目にも明らか…
第68回の感想では、「一話完結」でも「連ドラ」としても楽しめると書いたが、今回だけを見た視聴者に対する配慮も欠かさない。こんなシーン↓にその配慮が見える。
糸子が、モンペ教室の挨拶を終えると、大日本婦人会の澤田たちが店にやって来る。「ちっ!」と舌打ちをして、敢えてイラッとしたのを澤田に見せる糸子。しかし、表情は一変し、こんなことを考える…
糸子(M)「いや 待て待て。このおばはんらかて 世間や。
世間とは うまい事やらなあかんちゅう事を
うちは よ~う勉強したとこや」
糸 子「ご苦労さんです。ちょっとすんません。
今日は 何ですか?」
そして、モノローグが終わった途端に、更に表情は一変して、今度はにこやかにお辞儀をして、姿勢正しく店の入り口に正座した。
途中、まだ修行不足で怒りを抑えられない場面もあったが、最後まで見れば、澤田への糸子の見事な対応。もう、このシーンを見ただけで、糸子が前回から “一皮剥けた” ことが誰の目にも明らかになる。分かり易い描写、理解し易い台詞、これもまた本作の良いところだ。
終盤の糸子が遺影を見る表情に注目した!
そして、今回で私が注目したのが、糸子が善作の遺影に手を合わせる場面が意外と少なかったこと。いや、効果的にピンポイントで使ったと言うのが正しいかも。
そんなピンポイントの使い方の中で、特に上手いなと思ったのが、中盤でなく終盤で、澤田たちに軍服のアイデアとぶつけて、一山乗り越えたあとで、糸子が善作の遺影に手を合わせるシーンでの、糸子が遺影を見る時の表情だ。
糸子(M)「お父ちゃん ミシン どないかなりそうです。
お父ちゃんが教えてくれへんさかい
うち 自分で どないかしてんで」
最初は悲しみに寂しく見えたのに、モノローグの直前から糸子の表情は、ちょっぴりどこか誇らしげであり、善作への感謝の気持ちで見ているように、私の目には映った。
それが、演技によるものなのか、私の思い込みなのかは分からないが、とにかく遺影を見る表情から、糸子が自分の手柄でなく、“善作の置き土産” のおかげ…と魅せたのには恐れ入った。
そして、映像は時間が逆戻しになると言う、朝ドラらしからぬ “ハイカラ” な映像処理で、「やっぱし お父ちゃんか」の笑顔でのモノローグで締めた。やるなぁ。
あとがき
さて、先週末から月曜日の怒涛の展開で驚かされたと同時に悲しみのどん底から、今回の「立ち直り劇」へのドラマの流れが、戦争中の話なのに、暗さや辛気臭さがなく、明るく前向きなホームドラマに仕上がっているのは、本当に楽しいし、ドラマとして完成度が高いです。
また、何となく、糸子が、善作に似ていたようにも感じました。身内には厳しく、お客には頭を下げ腰が低く、ご近所さんには愛想よしで、一度キレると手が付けられないところが。その辺も、親子の繋がりを描くホームドラマの楽しさだと思いました。
最後に。前回の感想に 134回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。善作に似て来た糸子、どんな母親になって行くのか楽しみです。
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11516/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47 48
第9週『いつも想う』
49 50,51 52,53 54
第10週『秘密』
55 56,57 58,59 60
第11週『切なる願い』
61 62,63 64,65 66
第12週『薄れゆく希望』
67
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