映画「ゆずりは」 感想と採点 ※ネタバレなし
【私の評価基準:映画用】
★★★★★ 傑作! これを待っていた。Blu-rayで永久保存確定。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる作品。
★★★☆☆ まあまあ。お金を払って映画館で観ても悪くない。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。無理して映画館で観る必要なし。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
ディレクター目線のざっくりストーリー
水島が営業部長を務める葬儀社「安宅」に、茶髪でピアスの若者・高梨が面接にやって来た。水島は周囲の反対を押し切って採用を決め、高梨の教育係に。今時の風貌と言葉遣いの高梨だが、葬儀社のルールを破ってでも自然体で遺族の心に寄り添おうとする、感受性豊かな青年だった。
一方、ベテランの水島は長年「死」に接して来たため、感情を押し殺す癖が付き、感情の起伏が無くなっていた。水島は自然体の高梨と共に仕事をする中で、心に変化が生まれて来る。そんなある日、高梨がいじめを苦に自殺した故人に感情移入しすぎて、参列者を罵倒するという騒ぎを起こしてしまう…
ロケ地のほぼ全編が、千葉県八千代市内のご当地ヒューマンドラマ
ものまねタレントのコロッケが笑いやものまねを封印し、本名の滝川広志名義で葬儀社のベテラン社員を演じるヒューマンドラマ。原作は、新谷亜貴子の同名小説。ロケ地は、ほぼ全編千葉県八千代市内で、主人公が勤める葬儀社は実際にある「安宅(あたか)」や「京成バラ園」などが登場する。
千葉県八千代市で配布されているチラシには、
「千葉県八千代市が舞台(ほぼ全編)と印刷されている。
「ゆずりは」は若葉が育って "譲る" ように古い葉が落ちる
また、映画の題名になった「ゆずりは」は常緑高木で、一年中若葉が出ると前の葉が落葉することから、親が子に代を譲る様に例えられ、縁起の良い木と知られており、子孫繁栄の幸運を招く木として植樹されることもあり、この事が本作の重要なくだりとリンクして来る…。
感受性豊かな新人と心が死んでしまったベテラン葬儀屋の物語
原作は未読。ある事情で妻を亡くした葬儀社のベテラン社員は、長年の葬儀屋生活で心が荒んでいた。そんな時に茶髪で今風の青年が新入社員となり、感受性豊かな新入社員と感情を押し殺す癖の付いたベテラン社員が、日々の葬儀を通して互いに影響し合って行く人間ドラマ。
「人の死」を扱う作品は数々あれど、本作は「生と死」「生きるとは?」「死とは?」と言ったテーマの他に、「人と人の繋がり」や「親と子」と言う別の角度からの切り口からも同時に描かれる。従って、若干 “ご都合主義” と “盛り込み過ぎ” が見え隠れするのが残念。でも、全体的には「フィクションだから」で納得できる範囲だが。
茶髪のイマドキ社員の成長物語として観ると自然に感動出来る
上映時間111分の殆どが葬儀とその準備の過程に尺が割かれる。そして本作の見所は、時々顔を覗かせる五木ロボット風の主人公でなく、幾つか登場する死と葬儀のエピソードだ。中でも、新入社員の幼き頃の思い出が導き出す数々のエピソードが泣かせる。
その意味でも、ネタバレになるから詳しくは書かないが、茶髪のイマドキ社員の成長物語として見た方が自然な感動を得られると思う。
あとがき
実際の葬儀場で撮影されているせいもありますが、葬儀・告別式からお別れの儀までの映像が実にリアル。すすり泣きがスクリーンの中と客席から聞こえて来ました。若干 “ご都合主義” と “盛り込み過ぎ” は減点ですが、「遺族の気持ち」と「人と人の繋がり」を真正面から描いた良質な人間ドラマです。夫婦やご家族で見るのをお勧めします。
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