カーネーション:再放送 (第58,59回・2018/6/14) 感想

連続テレビ小説「カーネーション」

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』公式
第10週『秘密』の 『第58,59回』の感想。


 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
 また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。


【第58回】
昭和17年末、糸子(尾野真千子)の3回目の出産が近くなった矢先、勝(駿河太郎)に召集令状が届く。糸子はあえて仕事で気持ちを紛らわすが、勝の髪をバリカンで刈っているうちに万感の思いが込み上げる。出征前夜、善作(小林薫)に向き合った勝は、すみませんと頭を下げ、糸子は思わずむせび泣く。そして、善作と勝は徹夜で飲み明かした。数日後、勝が送り返してきた背広のポケットにあった1枚の写真に、糸子は仰天する。

【第59回】
写真の女は、歌舞伎座で声をかけてきた勝(駿河太郎)の浮気相手だった。勝の浮気を知りながら、もう出征したのだからと気にもとめず、面会に訪ねてみようなどと言う善作(小林薫)の態度に、糸子(尾野真千子)は激怒する。自分は女として見られておらず、仕事好きだから重宝されたのだと、これまでの勝のすべてを腹立たしく思う糸子。そして糸子は、男たちではなく、珍しく奈津(栗山千明)に話を聞いてもらおうと思い立つ。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---

【第58回】アバンでの、光と構図の工夫について

第58回は第10週の木曜日。冒頭(アバンタイトル)の召集令状が届いたシーンの特に1カット目の映像が実に計算されている。画面上手(右側)の手前に配達人、画面中央に糸子、画面下手(左側)に家族たち。そのそれぞれの頭の上近くに「電球」が点いている。そして、本作では珍しくこのカットだけ外光が弱めに仕込まれている。

で、配達人の「電球」が一番大きく映って尚且つ明るい。その他の2つの「電球」は同じ傘が点いていて小さく光る。これって、舞台照明演出的な手法で言うピンスポット(ライト)の役目をさせているのではないだろうか。ほら、真っ暗な舞台で、その登場人物だけに光が合ってる、

あれだ。そう考えると、この赤紙が届くシーンを夕方や夜にして、同じように撮影したら、かなり “重苦しいシーン” に描けたに違いない。しかし、作り手は昼間のシーンにした。そのお陰で、赤紙が来た瞬間に「すべてが終わった」ような印象にならずに、出征の日までの物語があることを、やわんわりと視聴者に伝えていると思う。

第3子を身ごもっているヒロインの夫に赤紙が届いたと言う誰の目にも衝撃的なシーンなのだが、舞台照明演出の技法を使いつつ、奥行きのあるカットで、中央の糸子の孤立感を見事に魅せた。因みに、次のハルがやって来るカット以降での外光の強さを見れば、直前のカットだけが特別な演出になっているのは、お判り頂けると思う。

勝の頭をバリカンで刈る糸子のシーンは秀逸だった

主題歌明け、勝の出征が4日後であることが分かり、明後日まで勝が実家に帰ることに。

勝が実家に帰ると、正一と勇が小原洋装店に顔を出すが、近況報告を入れる程度で、映像は、いきなり上下が厚い雲で覆われ、中央部分だけが橙色のちょっと湯がんがイメージの夕景の空にカラスの鳴き声のインサートカットを挟んで、3日間の時間経過を表現して、店に帰って来た勝の頭をバリカンで刈る糸子のカット。

2人とも薄っすらと涙を浮かべる中、バリカンのジョリジョリと言う小さな音と、ピアノの劇伴と、小さく聞こえた糸子の鼻をすする音が、悲しい夫婦だけの時間を丁寧に描いた。

また、いつもなら入りそうな糸子のモノローグも排除して、グッと寄った俳優の演技で魅せたのは、ここ数回続いて過剰モノローグの放送回との差別化にもなり、新鮮な糸子と勝の夫婦の時間となったのは良いことだ。

台詞通りにドラマ自体が "派手を禁止" することを具現化

丸坊主になった勝の頭を、優子が気持ち良さそうに触るシーンに、こんな糸子のモノローグが入った。

糸子(M)「このごろは
     派手な出征祝ちゅうのは 禁止されてるよって
     家族と店の子らだけの 小さな会をやりました」

実は、この糸子のモノローグの中の「派手な出征祝ちゅうのは 禁止されてる」と言う台詞が、この第58回の脚本と演出の背骨になっているのだ。文字通りドラマ自体も “派手を禁止” することを具現化するために、お得意の “大量のモノローグで飾る” ことを止めて、俳優の演技で魅せたのだ。

だから、善作に赤紙が来たことを報告する勝の苦笑いと男泣きに視聴者の心は大きく揺さぶられるし、ハンディカメラでわざと揺らして撮影する善作や糸子の表情や動きの1つ1つが心に突き刺さる。出征の朝も、前夜に善作と飲み明かしたと言う二日酔いの少し充血して浮腫んだ目の勝が、とても印象的だった。

出征までの5日間を、アッサリめに描いたのが良かった

出征までの5日間を、回想シーンの挿入も無く、夫婦の今生の別れになるやも知れない人生の1ページを、決して派手でなく静かな描写で丁寧に丁寧に糸を紡ぐように、むすろアッサリめに描いたのは、見応えがあった。

拙速な展開の中に、稀に静かな回があると作品が引き締まる

そして、終盤の勝の出征後のくだりは、再びいつもの本作の雰囲気へ。

それでも、荷物の中から出て来た勝が出征時に着ていたグレーの背広を見て笑顔になるシーンも静かで良かったし、糸子が背広の隅々を調べるとポケットから、勝が浴衣を着た写真が出て来て、以前に歌舞伎座で出会った “菊乃” と言う女性を思い出すと言う新展開を匂わせたのも巧みな脚本だ。

全体的には相変わらず拙速さはあるのだが、このように急ブレーキをかけたようになっても、静かな描写を入れることで視聴者は糸子が仕事一辺倒だけでないことを、好意的に脳内補完できる。

あとは、この “好意的” と “拙速さ” による、糸子の仕事以外の部分、特に育児の描写不足の駆け引きが、今後の本作の課題になるかも知れない。いや、2か月を過ぎた本作の新たに目指すべきところであるのは間違いないと思う…

【第59回】いよいよ『秘密』が核心へ…

今週のサブタイトルである『秘密』が、金曜日になって首をもたげて来た。異常とも言える回想とモノローグの多用ではあるが、これが不思議と絶妙なバランスで成立しているお蔭で、次々と妄想と想像を廻らせる糸子も面白いし、次第に切なさも増していく過程を、本作らしいちょっとコント風のテイストで描いて来た。

また、戦争中であることの描写が抑え気味なのも気にはなるが、そう言うのも本作らしいと言えばその通りであり、更にこんな一個のモノローグが入ると、いつまでも戦争の暗さを描かれるよりは、ずっとマシだと思えちゃう。

糸子(M)「要するにや」
ハ    ル「こら あんまり食べなや」
糸子(M)「うちは 女として好かれちゃった訳ちゃうんや。
     ただの稼ぎ手として 見込まれちゃっただけや。
     ほっといても 嫁は せっせと稼ぎよる。
     そやさかい 自分は なんぼでも外で別嬪と遊べる。
     ほんで うちを大事にしてくれちゃった。そんだけや」

やけ食いの演技のお手本みたいに糸子がサツマイモを頬張りながらの、このモノローグが楽しい。「要するにや」で始まる自問自答への自分が出した答えが、勝が浮気をしていたとかそんな小さなことでなく、男だけに許されているような “男のズルさ思考” みたいなものに腹を立てると言うのが糸子らしい。

そして、以前にも書いた糸子ならではの “ブレイクスルー思考“ が発達した女性であることも強調された。自己解決能力の長けた女性、それが糸子の持ち味だから。

たまには、糸子のちょっと幼稚な可愛らしさも良い

その後も、勝の浮気を善作と電気店の栄作が、これまた “男のズルさ思考” を上乗せして庇うから、そりゃあ糸子はブチ切れる。

糸子(M)「はあ~ 男っちゅうもんは! 分かった。よう分かった。
     うちのお父ちゃんも 木之元のおっちゃんも
     木岡のおっちゃんかて 男は みんなで こう言うんや。
     『男の浮気の一つや二つ どうっちゅうこちゃないよ。
     堪忍したれ」
     どうっちゅう事あるかないかは 女が決めるんじゃ!」

と、怒りを心に秘めて、その怒りを河原の石に封入して投げつけるが、先程で “ブレイクスルー思考“ を使い果たしたのか、では「女同士はどうか?」の結論は導き出せない。この辺の糸子のちょっと幼稚な可愛らしさの表現は久し振りだ。

そして、そんな幼稚な糸子が、その答えを聞き出そうとした相手が、幼馴染の奈津と言うのが巧みな構成だ。2人ともちょっぴり子供っぽいところがあるから、この相談のくだりが、コント見たいな面白さを醸し出した。

奈津の「しゃきっとしいや!」に優しさを感じた

そして、女同士の会議のシーン。男らが一致団結して「浮気は浮気」みたいに互いをかばい合う根性が気に入らないことを、自分の旦那が芸妓と逃げても動じていない奈津にぶちまけるが、奈津はまるで子供の戯言のようにかわす。そして、奈津はこの台詞を糸子に伝える。

奈津「あんたの旦那の浮気やろ? 自分で考えりよ」

で、糸子を部屋から追い出す。カットは部屋の中から、廊下に出された糸子に切り替わる。すると、仕舞ってる障子が静かに開いて、奈津がこう言う。

奈津「ほんで あんたの旦那は何ちゅうてんよ?」
糸子「それが… 出征してしもてな」
奈津「はあ! なおさら もう どうでもええ話やんか。
   しゃきっとしいや!」

と言い放って、障子をピシャリと閉める。奈津の家から追い出させたような格好の糸子が、ここで再び自己解決。

糸子(M)「これや! これでええ。
     うちと奈津 女同士は これでええんや」

ラストの泰蔵とのすれ違いと、おおひらの雪が秀逸!

普通なら、自己解決したのだから、スッキリした気分で河原を帰路に向かってエンディングでも良いのに、本作はこのあとで、2つの粋なくだりを添えた。

1つは、勘助の兄・泰蔵と擦れ違うシーン。糸子が「泰蔵兄ちゃん」と幼き頃から一目置いた好青年も、あの男たちと同じ種類の人間なのかって思い、泰造も出征するのかと言う気持ちや、その妻の八重子の気持ちなど、複雑な心境を抱えながら、軽く会釈をして擦れ違う、ちょっとスリリングでもあり切なくもある場面。

もう1つは、擦れ違った後に、糸子が目を開けて空を見上げると、おおひらの雪が降って来た場面。

この2つの場面によって、今回は終始怒り続けた糸子、それも男たちの身勝手な思考回路に怒り続けた糸子が、奈津と会話したことで一定の結論には達したのに、泰蔵と言う1人の男性を見てしまったことで、心に迷いが出る。

その迷いを風で吹き飛ばすでもなく、突然の雨で洗い流すでもなく、ひらひらと舞い落ちるおおひらの雪が包み込むような切なさと温かさが表現されたと思う。「怒りを鎮める」と言うが、正にそれを映像で魅せてくれた。そんな第59回だったのでなないだろうか。

あとがき

第58回と第59回の組合せ、意外と良かったですよね。勝の出征と浮気疑惑をめぐってのコント風の展開の中で、徹底的に糸子が女性であることが描かれ、朝ドラが女性の一代記を描くことも表現されました。

また、第59回だけ見ると戦争らしさが薄まっていますが、2回分をまとめてみると、そんな感じもない。やはり、「1週間縛り」でないことの良さが、こんなところにも表れていると思います。

最後に。前回の感想に 150回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。第57回と第58回の組合せも、メリハリが合って良かったです。さて、今日(6/15)の再放送も、土曜日と月曜日の組合せですね。どんな展開を見せてくれるのか、楽しみです。

ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人がいます。「この後あの役を誰が演じる」と言うのも困ります。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※今週末まで、テンプレです(謝)

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【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,1617,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41 42
第8週『果報者』
43 44,45 46,47 48
第9週『いつも想う』
 49 50,51 52,53 54
第10週『秘密』
55 56,57

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