[読書] 映画原作派のためのアダプテーション入門 (波戸岡 景太/著・彩流社) 感想
採点は、★★★★☆(最高5つ星で、4つ)です。
【私の評価基準:書籍用】
★★★★★ 傑作! 是非とも本棚に並べたい一冊。
★★★★☆ 秀作! 私が太鼓判を押せる一冊。
★★★☆☆ まあまあ。お小遣いに余裕があれば買っても良いい。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。図書館で十分。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
当blogは、原作と映像作品は基本的に比較しない
当blogでは、テレビドラマや映画の感想の際に、冒頭で「当blogは、原作と映像作品は基本的に比較しない立場です」と表記することがある。それは、原作物(小説や漫画やアニメ)と映画やドラマの熱烈なファンが、私の感想に対して、両者を混同してコメントされると返答に困るからだ。
小説の映画化から、原文と脚本を読み比べて解説
本書のタイトルにある「アダプテーション」とは、原作となる小説(本書では漫画やアニメには触れられていない)からを、映画用に脚色することを示す。
しかし、本書ではカナダの文芸評論家リンダ・ハッチオンの物語制作の方法論の中の「アダプテーション(適応)理論」をヒントにし、小説の映画化を考察し、小説と映画の表現の違いなどを小説の原文と映画の脚本を読み比べて解説してあるアダプテーション理論の入門書。
名作映画に於ける仕掛けや工夫を明快に解説
小説『グレート・ギャッツビー』とレッドフォード主演とディカプリオ主演の各映画版『華麗なるギャッピー』での小説と各映画版とのシーンの比較や、キューブリック監督が映画『シャイニング』で魅せた長編小説の芸術的な圧縮技法など、多数の名作映画に於ける仕掛けや工夫を明快に解説してある。
原作の小説と映画の関係性を少し掘り下げたい人向け
「ただの小説」は、他のメディアと関係をもった瞬間、たちまち何かの「原作」となってしまう
こんな序章で始まる本書。小説好きの人が読めば “映画の原作となった小説には、失うものと得るものがある” と言う視点で楽しめるし、映画好きな人が読めば “映画スタッフ側の意図や工夫” を見て取れる。原作となった小説と映画の関係性を少し掘り下げたい人向けの、読み易いが内容は濃い目な一冊だ。
あとがき
「これは原作を超えた」とか「やはり原作には勝てない」など言われますが、「原作となった小説」から「映画版」 への移行を、AからBへの単なる翻案(以前に誰かがした事柄の大筋を真似て、細かい点を造り変えること)と否定的に捉えずに、メディアの転換としてのクリエイティブな行為として考えるのは、未来があって面白かったです。
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アダプテーションとは何か 岩田 和男
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