カーネーション:再放送 (第42,43回・2018/6/1) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カーネーション』(公式)
第7週『移りゆく日々』の『第42回』と、第8週『果報者』の『第43回』の感想。
※ 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視します。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
【第42回】
糸子(尾野真千子)が家に戻り、末松商店は連日客でいっぱい。結局今までどおりの生活が続く。しかしある日の夕方、善作(小林薫)は突然、吉田屋で盛大な宴会を催す。若おかみの奈津(栗山千明)は泰蔵(須賀貴匡)が気になり座敷をのぞくが、内容を知ることはできなかった。その翌日、善作は店の貼り紙をはがし、小原呉服店の看板を見上げる。そして、いつもどおり仕事から戻ってきた糸子を、あぜんとさせる事態が待っていた。
【第43回】
小原「洋裁店」とするべく、善作(小林薫)は質屋の雇われ店主となり家族と共に家を出た。戸惑う糸子(尾野真千子)だが、千代(麻生祐未)に励まされハル(正司照枝)との二人暮らしを始める。迎えた開店の日、家族たちに祝福され気持ちを新たにする糸子。だが急には繁盛せず、ヤス子(中村美律子)からは以前のように裁断だけを頼まれてしまう。そんなある日、珍しく伯父・正一(田中隆三)に連れ出され、意外な人物と再会する。
---上記のあらすじは[NHK番組表]より引用---
【第42回】視聴者の "詮索する楽しみ" を阻害しない構成
時は、昭和9年(1934年)年2月。あの “神回” のその直後を描くかと思いきや、敢えて糸子が家に帰ってからの2か月間を描かぬ理由があるはずと、そのまま見ていたら、すっかり善作が気落ちしていた。ここで時間経過について少し書いてみる。
時間経過のやり方や、時間経過の前と後の描き方には様々な方法がある。例えば、先に現在を描いておいて、「実は…」と回想するのも一種の時間経過の表現。また、日めくりカレンダーと映像を重ねて変化そのそもを描くのもそれ。しかし、この度の時間経過はそれらとも違う。
さりげなく2か月が経ったことを糸子のモノローグで視聴者に伝えて、“変わり果てた善作” をサクッと見せる。こうなると、視聴者は「この2か月間に善作に何が起こったの?」とあれこれ詮索する。当然、脚本家と演出家は、 視聴者の “詮索する楽しみ” を阻害したくないから、その原因に違いない2か月間を意図的に描かない。
これがニクイ所だ。普通なら見せて納得させて話を進めるのに、この第42回の放送は土曜日だ。だから、普通に2か月間を描いて終わり…では、つまらないと考えたのだろう。そこで、作り手はどうしたか? 糸子を描かずに、奈津を利用したのだ。思えば、奈津もこの2か月で大きく変化した登場人物の1人。
だから、「新生・奈津」を描きつつ、善作が変わった原因を描こうと考えたのだ(と思うだけだが)。
視聴者を焦らして焦らして惹き付ける
で、場面は料亭吉田屋。ここで、朝ドラ名物の立ち聞きだ。おっと、奈津は座って盗み聞きしていたが。そして、ここでまた時間経過。今度は、奈津が他の客の接待をしている間に時間が経って、奈津と一緒に視聴者は肝心のところを見られず焦らされる。
上手いよね。本来は、引っ張るとか引き延ばすと言うのは、こう言うことを言うべき例え。視聴者を焦らして焦らして惹き付ける。それをされるのも気持ちが良い。そう言うのが今回は巧に仕掛けられてる印象だ。
奈津「あ… 終わってしもうてる。何やったんやろ? 話」
この奈津の台詞↑が、焦らしが確信犯であることの証明だ。そして、時間は残り6分。どんちゃん騒ぎで焦らす、焦らす。そしてなんと、翌朝になっちゃった。本当に上手いな、焦らすのが。床に寝転んでいる善作の顔と同じ高さにカメラを置いて、娘たちの行き交う足だけが映るカットが印象的だ。
そうしていると、ハルと善作のやり取りに、2か月間の間にあったことの結末のようなものが見え隠れする台詞が、さらりと流れる…
ハル「朝や… 今日やろ? せやけどな なあんた…」
善作「言うな… わしが決めた事や。好きな様に さしてくれ」
な、な、なんと、善作が店先に貼ってあった張り紙をバリバリと剥がし始めたではないか。全ての張り紙を剥がし終わった時、カメラは店内に入って、店内から小原呉服店と糸子を大きく変えるきっかけとなった “あのミシン” 越しに、屋根にある「小原呉服店」の看板を愛おしそうにじ~っと見ている善作を映した。
そして、そのカットがまるで千代の目線のような編集で、涙を潤ませて夫を見る妻・千代のカットへ。優雅な劇伴の中で夫婦のカットが切り返され、まるで夫婦の心が1つになったような演出。このままの雰囲気でフェードアウトして予告編に繋げても十分に見応えがあるのに、時間はまだ12分と30秒。
視聴者を焦らしては先に進み、最後にどんでん返し
そしてまた、時間経過。今度は何の説明も無く、夕方らしき照明と路地の雰囲気で伝えて来た。実家に看板が掛かっていないことを知る糸子のカットに、風が吹く音が重なる。正に、何とも言えない虚無感や心の中が空っぽに感じた時の「心に風が吹く」の映像化だ。で、糸子の心の風に対して、今度はハルの揚げ物料理の油の撥ねる音だ。
一体、油のパチパチは何を表しているのかと思いきや、小原家は糸子とハルだけ残して、全員弾け飛んでしまったと言う訳だ。パチパチが更に大きくなって、糸子の不安も大きくなって終了…。今回は、時間経過を上手に活用して、視聴者を焦らしては先に進み、最後にどんでん返しと言う展開だった。前回に続いて、15分間の構成が見事だった。
【第43回】善作を必要最小限にだけ描いて…
第43回は、2011年11月21日からの第8週「果報者」の月曜日に当たる。先週の金曜日と土曜日のダイジェスト版と言う構成のアバンタイトルで始まった。そして、序盤でハルから善作の本音を聞くことになる糸子が描かれたが、これも本作らしい。善作を必要最小限にだけ描いて、視聴者に善作の気持ちを想像させる。
想像させるってことは、糸子と同じ立場になるってこと。だから、感情が糸子に乗っかる。だから、商売人としての意地や父親として娘を思う優しさが視聴者にもしっかり伝わる。今回も、ハルに言わせるのが良い。だって、ハルは善作の母親なんだから、どれほど我が子の気持ちを察するか…
糸子のモノローグで、現状を視聴者と糸子が一緒に確認
場面変わって、雪の中、千代が小原家にやって来る。全ての事情を知った糸子が、千代の胸の中で泣き崩れながら言う、この台詞が泣かせる…
糸子「うちのせいで 家族が バラバラになってしもうたんや。
お父ちゃんが ずっ~としんどかったんやて思うたらな…」
千代「あれあれあれあれ…」
糸子「うちは… なんちゅう事 してしもうたんやろ。
みんなに どないして謝ったらええんやろ思たらな…」
まるで最終回みたいな盛り上げ方で、千代にギュッと抱きしめられる糸子を描いておきながら、ハルと登場させて盛り上がりに、やんわりと一区切りをつけて、ここでまた時間経過。雪の季節から桜の咲く季節へ移動した。驚く程のテンポの良さで話が進んで行く。
が、このまま順風満帆のはずがない。そのことをいつも通りに糸子のモノローグで視聴者と糸子が一緒に確認。
糸子(M)「そいでも 商売っちゅうんは
そんな簡単なもんやありません」
こう言う確認作業が必要なんだよね。連ドラには。特に、15分間の細切れの朝ドラには。やたらにやれば良いと言う訳では無いが、主人公と視聴者が現状を一緒に確認するって、とっても大事だと思う。
『半分、青い。』の「片耳失聴」みたいに、確認作業をせずに進んじゃうと、常に設定がふらついて連続性も担保されないし、面白みも削がれる。でも、本作はそれをちゃんと手抜きをせずやる。やってくれるから面白いのだ。
王道のパターンの繰り返しなのに、毎回新鮮な感動がある
それにしても、毎度のように書いているが、ワンパターンをマンネリに見せない技術が凄過ぎる。今回だって、解析すれば、このパターン↓なのだ。
糸子の何かをやり出す
↓
善作の逆鱗に触れる
↓
糸子が泣く
↓
善作が動く
↓
糸子が感動する
↓
上手く前進する
しかし、毎回毎回異なる感動をくれる。こそが本作の魅力だ。決して、飛び道具で驚かしたり騙したりせず、王道のパターンを繰り返し積み重ねて、物語を紡いで感動を創る。そして、この第43回のラストも、叔父・松坂正一とあの川本がなぜか知り合いで…と言うフラグを立てて、次回への期待へ繋げた。本当に良く出来ていると思う。
あとがき
善作の大英断で、物語が大きく動き、前進しましたね。女一代記だけでなく、ちゃ~んとホームドラマの面白さを盛り込んで、素晴らしいです。予告編では、私の予想通りに糸子と川本が結婚するようです。展開が速くて、見ていて気持ちが良いです。次回も楽しみ楽しみ…
最後に。前回の感想に 165回ものWeb拍手と数々のコメントを頂き、ありがとうございます。第42回も心に残る回ですね。来週は超多忙な1週間なので、『カーネーション』の感想は放送の翌日以降になりそうです。でも、離脱宣言するまでは続けますので、宜しければ待ってて下さい。
ご本人は気付かずに(だと思いますが、結果的に)ネタバレをコメントに書いている人が、多くて困っています。ホント、ネタバレは止めて下さい! 私以外にも、今回が初見で番組と感想を楽しみにしている読者さんがおられるので。引き続き、ご協力お願いいたします。 ※今回まで、テンプレです(謝)
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11433/
【これまでの感想】
第1週『あこがれ』
1,2 3,4 5,6
第2週『運命を開く』
7,8 9,10 11,12
第3週『熱い思い』
13,14 15,16> 17,18
第4週『誇り』
19,20 21,22 23,24
第5週『私を見て』
25,26 27,28 29,30
第6週『乙女の真心』
31,32 33,34 35,36
第7週『移りゆく日々』
37,38 39,40 41
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