海月姫 (第8話・2018/3/5) 感想

フジテレビ系・月9『海月姫』(公式)
第8話『涙腺崩壊!海月の決断と涙の別れ最後の晩餐』の感想。
なお、原作:東村アキコ「海月姫」(講談社「Kiss」所載)は既読で、2014年12月27日公開の監督・川村泰祐/主演・能年玲奈の映画『海月姫』は鑑賞済み(感想なし)。アニメは未見。
やり手のアパレル会社社長・カイ(賀来賢人)に認められた月海(芳根京子)がデザイナーとしてシンガポールに誘われた。だが、蔵之介(瀬戸康史)は拒否し月海を連れて去る。そんな中、稲荷(泉里香)から天水館の売却契約が終わったと告げられた‘尼~ず’は絶望する。蔵之介も打つ手なしの状況に落ち込むばかり。修(工藤阿須加)に連絡が付かず焦った月海は、カイに天水館を買ってもらう代わりにシンガポールに行くことを決める。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
脚本:徳永友一(過去作/HOPE~期待ゼロの新入社員~、僕たちがやりました)
演出:石川淳一(過去作/リーガル・ハイ、リスクの神様、フラジャイル) 第1,2,5,8話
山内大典(過去作/キャリア~掟破りの警察署長~、櫻子さんの足…) 第3,4,7話
紙谷 楓(過去作/世にも奇妙な物語'17 春/秋の特別編) 第6話
佳境に入る第8話らしい脚本と演出の秀逸なアバン!
「視聴率=ドラマの質」で無いことを、見事なまでに毎回証明している本作。今回は、前回で登場したやり手のアパレル会社社長・カイ(賀来賢人)が参戦して、新たな三角関係(四角関係?)が誕生するのかハラハラしたところから、アバンタイトルが始まった。
いつもなら、賑やかな “尼~ず” の日常で始まるのに、今回は意外なほどにシリアス。その上、いきなり賀来賢人さんと蔵之介役の瀬戸康史さんが、月海(芳根京子)が理解できない英語でペラペラと。まさしく、いよいよ佳境に入る第8話らしい脚本と演出。某朝ドラのアバンも見習うべきだ。
序盤から中盤は、意図的にやや淡々と描いたか?
さて、本編。おや、どうした? いつものようなメリハリある物語が今回の序盤にない(正確に言えば、中盤まで)。原因は「天水館」の売薬契約が決まったために、“尼~ず” のお別れのくだりと稲荷(泉里香)が執拗に登場し絡んでくるために、「いつもの展開」が出来ないのだ。
その上、修(工藤阿須加)のくだりも挿入しているから、場面がどうしても紙芝居のように次々パタパタと切り替わった印象。要は、一気に月海に関わる登場人物が増え、その上で月海の見せ場を作るために、映像的な面白さより、物語を前進させることを重視した仕様とでも言えば伝わるだろうか?
まあ、作品自体が最終章にグィっと足を踏み入れた、そんな第8話であり、これまでも丁寧に人間描写をしてきた脚本家・徳永友一氏の技術を考えれば、意図的にやや淡々と描いているのは分かる。ただ、ちょっと今までと比較すると薄味かな?
「月海」でも「月海さん」でもない、「君」…
そんな若干否定的な見解を述べたが、今までの作風が戻ってきたのが中盤 24分頃から始まった月海とカイの釣りのシーン。カイが自分の生い立ちを語り始める部分の劇伴の入り方なんてお見事。その後、地元の漁師さんたちとバーベキューをするシーンで、さりげなくカイが言ったこのセリフが良い。
カイ「ほら 君も食べて」
月海のことを「月海」でも「月海さん」でもない、「君」、そして「ミス月海」と呼ぶ登場人物・カイに新鮮味を持たせた。こう言うシーンが入ると、カイがこの物語の行方を左右する重要人物であることが明瞭になる。
"蔵之介の男気" と "花森の男気" がひしひしと伝わる…
そして、蔵之介が鯉淵家の運転手・花森(要潤)に月海を探し出すように依頼するシーンでのこの台詞も…
蔵之介「なのに あいつだけ犠牲にするなんて
俺には できない」
女装の蔵子の姿で、花森に頭を下げる “蔵之介の男気” が印象的なシーンだ。うん、中盤までは目をつぶろう…と決めた瞬間だ。
蔵之介「俺は諦めない。どこにいようと。
どんな遠くに行こうと 俺は あいつをつかまえる」
そして、帰国した修に怒りをぶつける蔵之介が言う、この台詞↑もいい感じだ。更に、月海を取り戻そうとホテルの場所を花森に聞く修に「その必要は ありませんよ」と淡々と言う“花森の男気”もひしひしと伝わってくる…
「最後の晩餐」からシャワーシーンも見応えあり!
ホテルでカイの計らいで「最後の晩餐」をしている月海と蔵之介のこの会話も実に良い。台詞も良いのだが、2人の演技が。特に本作ではハチキレキャラが開眼した芳根京子さんだが、このシーンでの芳根さんは感情をグッと堪えて、孤独な1人の女性として月海を演じた。
蔵之介「あいつらもホント薄情だよな。
月海を簡単に手放したりして。
自分さえよければ それで いいのかよ」
月 見「いいえ! 尼~ずの皆さんには
ホントに お世話になってきましたし
こんな私が役立てるなら それは本望であります」
蔵之介「じゃあ ちっとも寂しくないんだな?」
月 見「ありませんよ」
蔵之介「嘘つくなよ」
月 見「嘘ではありません」
そんな月海の目をじっと見つめる蔵之介を演じる瀬戸康史さんの目力も凄いが、その直後のシャワーシーンでの蔵之介の目、表情も良かった。そして、いつものハイテンションキャラの月海。全裸で倒れる蔵之介。月海を抱きしめる蔵之介…
蔵之介「行くな 月海。行くな。行くなよ。
どこにも行くな 月海!」 月 見「…」
ラブコメ中の男性のシャワーシーンで、ここまで必要性があり、いや無ければドラマが成立しない作品は久し振りだ。客寄せでない脚本と演出。だから、視聴率が伸び悩んでいるのだろうが、これが正しい。これが正解だ。視聴率のためにドラマを捻じ曲げるなんて愚の骨頂だ。
"尼~ず" が月海を笑って送り出した真相を話し出す…
場面は月海がいなくなった「天水館」。部屋に残されたくらげのドレスを片付けだす “尼~ず” に、月海が出て行くのを引き留めなかったことを激高して攻める蔵之介。蔵之介に対して泣きながら、“尼~ず” が月海を笑って送り出した真相を話し出す…
まやや「月海殿の…才能が買われたのだぞ!」
ばんば「そうだ。わしらと違って あいつには才能がある!」
千絵子「みんな全然平気なんかじゃないわよ。
寂しいに決まってるじゃない。
悲しいに決まってるじゃない!」
「寂しい」と「悲しい」の使い分けなんて、如何にもドラマの脚本っぽい表現だが、学園モノやスポ根モノのようなベタな台詞が、却って新鮮に耳へ届いた。
またしても "神タイミング" の主題歌で胸の中がザワザワした!
稲荷が修を焚き付けて、「天水館」を手中に入れようとする目論見と、蔵之介たちが「天水館」と自分たちのブランド「Jellyfish」のためと、月海をカイから取り戻す思惑が一致した。“尼~ず” の月海への本心を知った蔵之介が動き出す。修も動き出す。
でも、月海は「CUBE」の中で独りぼっち…
ところが、偶然見る『たけ散歩』の中に蔵之介と修と“尼~ず” の姿を見つける。この展開だけでも十分感動的なのに、ここまでまた “神タイミング” と絶妙な音量でBeverlyが歌う主題歌『A New Day』が流れ始める。いいやぁ、漫画も実写映画版も鑑賞済みだが、本作らしい描写に胸の中がザワザワとした。
全10話の本作とすれば、正に最終章の突破口となった第8話。序盤から中盤は少し淡々としていたが、終盤に向けてこれだけの盛り上がりを持ってこれたのは秀逸だ。
あとがき
視聴率は低迷していますが、ネット上の評判はそれほどに悪くないですよね。どうか、『海月姫』のスタッフやキャストに本作で感動し、毎回楽しみにしている視聴者が多いことを伝えたいです。
最後に。前回の感想に 75回もの Web拍手とたくさんのコメントを頂き、ありがとうございました。恐らく、残りあと2話ですが、次回からでも、1人でも多くの人に見て欲しい作品です!
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
フジテレビ系ドラマ 海月姫 オリジナルサウンドトラック 末廣健一郎 MAYUKO
海月姫 [DVD] 能年玲奈
海月姫(1) (Kissコミックス) 東村アキコ
海月姫 コミック 全17巻セット 東村アキコ
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/11096/
【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話
- 関連記事