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アンナチュラル (第7話・2018/2/23) 感想

アンナチュラル

TBSテレビ系・金曜ドラマ『アンナチュラル』公式
第7話『殺人遊戯』、ラテ欄『殺人犯がネットで生中継!? 囚われた人質を救え』の感想。


ミコト(石原さとみ)は予備校で働く義弟・秋彦(小笠原海)の頼みで、法医学に興味があるという高校生・白井(望月歩)に会いに行くがすっぽかされる。連絡先を伝えてもらった翌日、白井からライブ配信のURLが届く。映像には「殺人者S」を名乗る白井と遺体が映っていた。白井は級友を殺したと言い、ミコトに死因を質問。制限時間内に正解できなければもう1人殺すと宣言する。ミコトは、映像から遺体の死因を検証する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---


脚本:野木亜紀子(過去作/重版出来!、逃げるは恥だが役に立つ)
演出:塚原あゆ子(過去作/リバース、Nのために、夜行観覧車) 第1,2,4,5
   竹村謙太郎(過去作/警視庁ゼロ係シリーズ、火の粉、バイプレーヤーズ) 第3,6
   村尾嘉昭(過去作/リバース、ラブホの上野さん) 7
プロデュース:新井順子(過去作/リバース、Nのために、夜行観覧車)
音楽:得田真裕(過去作/家売るオンナ、嫌われる勇気、カンナさーん!)

まえがき

一部の読者の皆さん、たいへんお待たせしました。やはり、本作の感想は見ながら、酒を頂きながら、電車に乗りながらなんて、何かをしながら書けません。従って、投稿が遅くなりました。その分? 既に濃厚版になっておりますので、録画でも観ながらじっくり読んで頂けると、より楽しめると思います。

ミコトへの感情移入が止まらない!

今回も脚本が冴えわたっている。冒頭の賑やかなUDIラボの甘味ネタの直後に、深夜のバーでの六郎(窪田正孝)とフリー記者・宍戸(北村有起哉)の会話のメリハリ、いやアンバランスさが絶妙。

宍戸「人間には必ず裏がある」
六郎「そんな人ばかりじゃありません」
宍戸「お前が いい例じゃねえか 裏切り者」

以前にも書いたが、本作に於ける当初の六郎は、一般人が立ち入れない異空間である死因究明の現場にポツンと存在する “一般人の代表” 的な立場で、それは合わせて “視聴者の代表” であり、我々をドラマの世界へ惹き込んでくれる役目も果たしていた。

しかし、数回前から六郎の “裏の顔” が描かれるようになったお蔭で、視聴者は次の “信頼出来る登場人物” 探しをしながら見せられる。そう言う脚本の仕掛けがあると思う。

だから、第5話の壮絶な恋人殺しの私刑の時も、前回の合コン相手の中に真犯人がいる時も、いつでも「次は誰が信じられなくなるのか?」の怖さと「誰を信じれば良いのか?」の疑問を抱えつつ、ミコト(石原さとみ)を信じるしかない! と言う気持ちになるのだ。だから、ミコトへの感情移入が止まらない!

今回は、ミコトの私生活(弟)を登場させて大正解!

さて、前回はミコトの私生活のくだりを排除したことを褒めたのだが、今回は冒頭からミコトの義弟で予備校「明陵ゼミナール」の講師・秋彦(小笠原海(超特急))が登場し、今回の事件のきっかけを作る。何気ないことだが、この時点でミコトを「綺麗で可愛くて親切な普通のお姉ちゃん」に描くのはいいこと。

だって、この直後にミコトへ訪れる信じ難い殺人事件の当事者となり、一瞬にして「綺麗で可愛くて親切な普通のお姉ちゃん」から「不自然死の放置が許せない合理的思考の法医解剖医」に変貌する。そんなメリハリ、表と裏、真実と虚偽…が冒頭の「人間には必ず裏がある」に巧みに繋がるのだ。

今回も見事なアバンと言わざるを得ない!

さて、今回のアバンタイトルも良く出来ている。僅か5分足らずで「殺人者S」が登場。更に「殺人者S」が法医学に興味があるという高校生・白井(望月歩)であることも容易に分かるように描く。殺人実況生中継のネット動画が事件そのものの拡散のスピードと一致するから、時間軸の進み方も視覚的に容易に分かる。

この分かり易さがいいところ。こうすることで、「ミコト VS 殺人者Sの勝負」の行方にだけ視聴者は集中出来るのだ。ここまで約7分半。更に冒頭で描かれた「遠隔死亡診断」のくだりが、ネット動画で死因や犯行動機を探し当てると言う内容の伏線になっていた。やはり、今回も見事なアバンと言わざるを得ない。

もう少し警察の動きを描いたら良かったかも?

物語はサクサクと殺害現場を特定、ミコトが呼んだ少年課の刑事・宮前(螢雪次朗)が翠川高等学校に現着。ミコトらは殺人事件としての捜査を要望するが、宮前から断られてしまう。さて、ここで褒めてばかりでは能が無いから、ちょっと口を挟みたい。

実は、今回はこれまで以上に警察の捜査が描かれない(敢えて、ドラマの時間軸に沿って表現する)。警察が動かないからUDIラボの存在が際立ち、ドラマとして成立するのだが、学校内が殺害現場で、死体を動かし、次の殺害予告まであり、結果的に事件解決までそれなりの時間が掛かっている。

従って、もう少し警察の動きを描いたら良かった。折角、UDIラボに解剖を依頼する、西武蔵野署の刑事・毛利(大倉孝二)がいるのだから、上手く使ったら、もっともっと完成度が高まったのは間違いない。とは書いてみたものの、中堂(井浦新)のお茶目な様子を見ると、やはり抜け目のない脚本であるのは認めるが。

坂本が因縁の宿敵・中堂と一騎打ちも、また楽し!

物語は 20分前後にまた進展。 ミコトの弟・秋彦の協力で、「殺人者S」が白井と特定され、翠川高等学校の校長(ふせえり)らの話から「被害者Y」が横山(神尾楓珠)、そして「人質X」が海老原崇ではないかと推理。

一方、もうこれはお約束なのか? 転職先の明邦大学病院にいる坂本(飯尾和樹 ずん)が登場。その上、何と因縁の宿敵である中堂との一騎打ち。中堂に「誓約書」を提示して、勝利を勝ち取る坂本、地獄のような時間を使って「ALS(科学捜査用ライト)」を2台借りて来るくだりも面白かった。

それにしも、今回はミコトと秋彦の姉弟コンビの活躍が心地良い。前述したが、今回は秋彦が “一般人の代表” と “視聴者の代表” として機能させている。

良く出来たドラマは、CMのタイミングさえ良い!

そんな秋彦が、白井がずっと読んでいるのが、アーサー・コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズシリーズの短編の1つ『ソア橋』であることを突き止める。 『ソア橋』中のトリックは、凶器のピストルに紐で錘を結び付け、その錘でピストルを引っ張り、現場から凶器を移動させて隠すことで、自殺を他殺に装うと言うもの。

ミコトは、それをヒントに3本のナイフの背中側の刺し傷とお腹側の皮下出血の位置の不自然さから独自の推理を展開。これこそが、 “不自然な死(アンナチュラル・デス)” だ。ミコトは法医学者として、横山の死因を刃物による自殺と断定する。しかし、ミコトの結論に白井が声を荒げて訴える。

白井「違う 全然違う 大はずれ!」

ここで、CM。良く出来たドラマは、CMのタイミングさえ良く考えられており、CM後の形式的に法医学的見解を継げるミコトから、個人としての見解を話すミコトに変わる。上手いとしか言いようがない。

ミコトの名台詞を完全書き起こし!

37分頃からのミコトと白井の対峙は見応え十分。今回はミコトの名台詞を完全書き起こした。

ミコト「これまで多くのご遺体を見てきた
    ご老人から小さな子供まで
    いつも思う
    なぜ この人は死ななきゃならなかったのか
    Y君の背中には たくさんのアザがあった
    日常的に暴力を受けていた痕
    執拗に繰り返され 治る前に次のアザがつけられた
    そんな暴力が見過ごされた
    追い詰められた彼は 最悪の選択をしてしまった
    法医学的には自殺
    でも 私は 殺されたんだと思う
    法律では裁けない いじめという名の殺人
    あなたは それを 大勢の人に伝えたかった」
白 井「そうだ 殺された あいつらに 僕に
    僕も助けなかった 助けてくれたのに」

回想シーンは、映像処理と音楽でまるで非現実的な夢の世界!

この2人の台詞のやり取りだけでも十分に見応えがあるのに、更にいじめの現場、見て見ぬ振りの教師、巻き込まれたくない同級生、いじめられっ子同士の悲しい計画が、何かまるで非現実的な夢の世界の出来事のような映像処理と音楽で趣さえあるように、今回の演出家・村尾嘉昭氏は描いた。

実は演出担当が本作は初担当の村尾嘉昭氏へ交代した。監督デビューは、『マザーゲーム』(2015年)の第7話。最近作の『ラブホの上野さん』(2017年) の 4/5/6話担当で、謂わば今回も『リバース』(2017年)の第5/7話に次ぐ大抜擢。

白井の内に秘めたエネルギーとエネルギッシュな演出が見事に融合!

冒頭のUDIラボのシーンの会話劇のテンポの良さなんて、決して第6話までと引けは取っていない。いや、むしろ他の2人よりも若さを活かした演出が、第7話の内容に合っていた。上で取り上げたシーンも、若者たちの内に秘めるエネルギーが放出される時の力加減の無さを、エネルギッシュな演出の回想シーンで巧みに魅せた。

白井を見事に演じ切った望月歩さんが素晴らしかった!

事件の真相が明らかになった。「殺人犯S」が仮面を外す。まるで大きな仕事をやり遂げた満足感と清々しさに溢れた笑顔にも見える白井が、パソコンの画面の自分自身に自らがいじめを受けて来たことを吐露するようなカット割りもお見事。

そして、白井を見事に演じ切った望月歩さんにも大拍手。どこかで見たと思ったら、『コウノドリ 1』の第5話『14歳の母この子のため少女の決心』で、彼女を妊娠させた中学生・亮を演じた彼だった。いい大人の俳優になって欲しい。

今回はカット割り、カメラアングル、照明、編集が斬新!

白 井「僕は 僕を殺す」
ミコト「まだ終わってない! 質問に答えて
    あなたが死んで 何になるの?」
白 井「何に?」
ミコト「あなたを苦しめた人の名前を遺書に残して それが何?
    彼らは きっと 転校して 名前を変えて
    新しい人生を生きていくの
    あなたの人生を奪ったことなんて
    すっかり忘れて生きていくの
    あなたが命を差し出しても
    あなたの痛みは 決して 彼らに届かない
    それでも死ぬの?
    あなたの人生は あなたのものだよ」

このミコトと白井の会話を屋外で聞いている中堂たちのカットがインサートされるのが、とても臨場感を掻き立てることに成功している。本当、今回はカット割り、カメラアングル、照明、編集が斬新でいいぞ。

中堂が言った「許されるように 生きろ」の重み…

そして、ついに中堂らが白井の中継場所を突き止め、現場を押さえる。白井は部屋の隅に蹲り、血の付いたナイフを首に当てたまま。中堂は、落ち着いたトーンでナイフを「よこせ」と言うと、白井はボロボロと泣きながら話し出す…

白井「横山は死んだ」
中堂「ああ」
白井「僕だけが 生きてていいのかな」
中堂「死んだやつは答えてくれない この先も
   許されるように 生きろ」

恋人を殺され、なぜ自分はなぜ生き続けるのかを自問自答し続ける中堂が言った「許されるように 生きろ」の重みは半端無かった。

東海林が遺体に自分のコートをそっと掛ける…涙が溢れた

そして、今回も書かざるを得ないのが、米津玄師さんが歌う主題歌『Lemon』のイントロの入りの時期と音量のバランスの絶妙な良さだ。前回では “神タイミング” と言ったが。今回は中堂の言葉に我に返った白井と、中堂の言葉に助けられたミコトの感情がグッと来たタイミングでスタートした。

お蔭で、敢えて台詞を入れずに描いた、中堂が白井からナイフを取り上げるくだり、 立ち尽くす六郎、東海林(市川実日子)がご遺体に自分のコートをそっと掛けるくだりに涙が溢れた。

あとがき

良くぞ、このようなズバッとした切り口で、実際にいつどこで起こっても不思議でない、容赦ない厳しい現実を視聴者に一度ガツンと突き付けて、ラストでは超えてはいけないラインの僅かな手前で救いを残す…。もう、脚本、演出、俳優が素晴らしい。次回にも大いに期待します。

最後に。第6話の最初の感想に 99回、続く第6話の濃厚な感想には 125回もの Web拍手やたくさんのコメントを頂き、ありがとうございました。次回は、六郎の物語が描かれるようです。また、じっくり楽しんで感想を書こうと思いますが、投稿は数日後になるかも知れません。でも、当blogは、本作を全力で応援します。

なお、劇中に登場した、アーサー・コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズシリーズの短編の1つ『ソア橋』が収録されているのがこちら。

シャーロック・ホームズの事件簿【新版】 (創元推理文庫) アーサー・コナン・ドイル

また、法医学や監察医に興味のある方には、私が最近読んだこの本を紹介します。
[読書] 死体鑑定医の告白 (上野 正彦/著・東京書籍) 感想

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第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第6話(濃厚版)

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★職業:宴会/映像ディレクター(フリーランス)

★略歴:東京下町生まれ千葉県在住。ホテル音響照明映像オペレータ会社を経て、2001年独立。ホテルでイベント、パーティー、映像コンテンツ等の演出を手掛ける。活動拠点は都内と舞浜の有名ホテル等。

★ブログについて:フリーの宴席/映像ディレクターが、テレビ,映画,CM,ディズニー,音楽,仕事等を綴ります。記事により毒を吐きますのでご勘弁を。

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