[読書] 吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉 (坂本 優二/著・イースト・プレス) 感想

『わろてんか』のヒロインのモデル「吉本せい」と実弟の語録
「吉本せい」とは、2017年10月から放送中のNHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』の主人公・藤岡てんのモデルとされる人物。知る人ぞ知る “「お笑い帝国」とも称される吉本興業の創業者” だ。「吉本せい」は山崎豊子氏の小説『花のれん』にも登場するが、『わろてんか』のヒロインとはだいぶ異なる。
そこで、「吉本せい」とはどんな人物だったのか興味を抱いたので、早速入門書として『笑いを愛した吉本せい - 吉本興業創業者の波乱万丈記 (洋泉社)』を買ってみたのだが、この本だけで「吉本せい」の魅力を知るのは無理だった。「吉本せい」が、時代と共に大局的な見地で書かれていたから。
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姉"せい"と弟"正之助"が度胸と知恵で商いを広げていく
そこで、吉本興業創業者として「吉本せい」以上に有名な「せい」の実弟「林正之助」と「せい」の姉弟の語録集を手に入れた。サブタイトル『愛と勇気の言葉」通りに、姉「せい」と弟「正之助」の言葉とエピソードがたくさん紹介されている。
特に面白いのは、「せい」の夫「吉本吉兵衛(通称:吉本泰三)」が37歳の若さで亡くなり、35歳で後家になってからの「せい」と叔父の後を継いた「正之助」が、度胸と知恵で商いを広げていく生き様が手に取るように見えて来ること。エンターテインメントとしても、ビジネス書としても十分参考になる。
「花月」と言う屋号に込められた "せい" の覚悟
例えば、吉本が運営する劇場名に付いている「花月」と言う屋号には、「花と咲くか、月と陰るか、すべてを賭ける」と言う「せい」の覚悟が込められているとか。
軽視されていた芸人達に定期券を渡した "せい" の配慮
「せい」の時代、当時のエリートであるサラリーマンや学生だけが持つ一種のステータス・シンボルだった定期券。吉本は阪急電鉄と阪神電車の定期券を大量に買い込んで、寄席までの交通費として芸人に貸し与えていた。日頃から軽視されていた芸人たちの自尊心を保とうと言う彼女のきめ細やかな配慮が伝わるエピソードだ。
あとがき
本書は見開きで1つずつ、合計85の「愛と勇気の言葉」とその解説が載っている。「芸人」と言う人材こそが企業の生命であると言う、当時では珍しいビジネスモデルを成功させた姉弟の生き様は、常に時代と人材を的確に活かした人生でした。それが、よーく見えて来ます。
人生に行き詰まったり、部下の指導に困ったりしている人など、直感と熱意と誠意で人を動かして来た姉弟の言葉に、ブレークスルーのヒントを貰えると思います。エンターテインメント書としても、ビジネス書としても面白いです。
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吉本せい 笑いを商売に変えた吉本興業創業者の波乱の人生 (三才ムックvol.967)
吉本せいの生涯 (別冊宝島)
吉本せい お笑い帝国を築いた女 (中経の文庫) 青山 誠
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