わろてんか (第71回・12/22) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』(公式)
第12週『お笑い大阪 春の陣』
『第71回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
3軒の寄席のうち2軒が休業に追い込まれ、てん(葵わかな)はこの窮地を脱するために伝統派落語家の文鳥(笹野高史)の助けを借りようと、藤吉(松坂桃李)を説得する。風太(濱田岳)はオチャラケ派も芸人を月給制で雇うべきだと寺ギン(兵動大樹)に提案するが、けんもほろろに拒絶され風太はクビを言い渡される。藤吉が協力を頼もうと文鳥を訪ねると、そこには寺ギンがいて追い返されてしまう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
藤吉のボソ声では、貼り紙の意味が全然伝わらない!
前回の感想では、これまでの3か月にきっぱりと別れを告げて、風鳥亭が3軒になってからを第1回と思って見れば何とかなると書いたし、今週のアバンタイトルは中々良く出来ていると褒めてもいたのだが、キリ番を過ぎた第71回で一部を撤回させて頂く。
うーん、やはり前回でも感じたのだが、主人公が風鳥亭の入り口に貼る「回想の為 近日閉席 乞ご期待 席主敬白」の貼り紙を、これまでの順調経営の日々や芸人たちとのやり取りや、寺ギンとの攻防戦などを振り返った上で、万感の思いで筆を認める…そんな藤吉と主人公を描いて欲しかった。それも前回の終盤で無く今回のアバンで。
物語で大事なことは "主人公" に語らせろ!
アバンの序盤でのボソ声の藤吉の言い分では、貼り紙の意味が全然こちらに伝わらないのだ。「まっ、しょうがないか…」的な印象だけ。しかし、次のトキと風太の会話を見れば、「閉席=休業」の重みは誰の目にも明らか。だから、言いたい。物語で大事なことは主人公に語らせろと。脇役を使うにはこの脚本家の腕では早過ぎる。
トキ「あんたが あそこにいてるんは
おてん様を助けるためやったんちゃうの!?」
と書きつつ、このトキの台詞↑も「えっ?そう言う理由って明確だったっけ?」って感じ。まあ、過去の3か月は封印したら好意的に解釈しておくが、脇役の出番を作るために、週末になって強引になって来たぞ。あと、ここへ来て脇役の恋バナも要らないから!
字幕と藤吉のボソ声では貨幣価値も財務情報も分かり辛い!
主題歌明け。早速トキと亀井のコントが始まる。が、藤吉のボソ声と辛気臭い顔の前では亀井役の内場勝則さんの演技も虚しく撃沈。それにしても、「大阪の商い」を扱うテーマなのに劇中の金銭感覚や貨幣価値が全く見えて来ないのもよろしくない。1万円だ500円だと連呼されても、なんのこっちゃ?だ。
主人公までボソ声で辛気臭くなったのなら、ここはナレーションと映像で、現在の北村笑店の財務状況をイラストで、面白く楽しく見せるべき。だって、そう言う雰囲気を醸し出したいために、先のトキと亀井のコントを書いたのだから。とにかく、字幕表示を読んでも貨幣価値も財務情報も分かり辛いのに変わりはない。
文鳥がなぜ「できん」と言ったのかが不明瞭ではダメ!
ここで、私が前回の感想を好意的解釈だらけに書いたために折角封印したことが、「なぜ蒸す返す?」と言わんばかりに藤吉の台詞に書かれてしまう。それがこれ↓。
藤吉「そら できんと言うたやろ」
風鳥亭に出演する芸人がいないから、主人公が文鳥師匠に芸人を回して貰えるように頼んで欲しいと藤吉に言うくだりだ。確かに前回で、藤吉は文鳥から門前払いを食らっているから、台詞自体は間違っていない。問題は、いやここで大問題なのは、文鳥師匠がなぜ「できん」と言ったのか。その理由が不明瞭なことだ。
即刻、文鳥から言われた "寄席の色" を提示しなくちゃ!
私はこれまで、口が酸っぱくなる位に、風鳥亭を開業する前に(少なくても2軒目を開業する頃までに)文鳥師匠から店をやるなら決めろと言われた “寄席の色” を提示すべきと書いてきた。しかし、うやむやのまま3軒も成功してしまった。なら、「成功の原因=風鳥亭の色」であるはずなのに、何かモヤモヤする。
それは、前述の貼り紙と同じ。物語で大事なことは主人公に語らせろってこと。それをやらずにズルズル来ているのが最悪なのだ。もちろん、私以上に好意的な脳内補完をして観ている視聴者は「文鳥と “寄席の色” が合わないから」と捉えるだろう。しかし、私のようなへそ曲がりの好意的脳内補完ではそこまで準じることは出来ない。
脚本や演出で"不必要な3か月" を蒸す返すのは愚行…
やはり、“風鳥亭の色” が気になるのだ。結局、脚本家も演出家も、やはり全てが思い付きの台詞でありエピソードであり、それらで生まれた出来事や騒動の回収も尻拭いも、もちろん整合性や連続性すら考えていないのだ。
いくら過去の3か月を忘れて楽しもうと前向きにいても、脚本家や演出画家が自らの手で蒸し返すと言う愚かな行為を続ける限り、やはり本作が10月から描いた3か月は “不必要な3か月” だったと言わざるを得ない。
月給制の斬新さと芸人達の高評価を描くチャンスを逃した!
寺ギンの言い分も今一つ分からない。借金返済のために一生懸命に芸をやって稼ぐと言うことと、月給制は相反することだろうか?むしろ、ここは「寺ギンの歩合制 vs 風鳥亭の月給制」と言う分かり易い対立構造を視聴者に提示しつつ、風鳥亭の月給制が当時どれだけ斬新で芸人たちから喜ばれたのかを描くチャンスなのに…
でね。風太が寺ギンにビシッと言うシーンがあるが、ああ言うのも、物語で大事なことは主人公に語らせろ、なんだよね。正確には藤吉に…なのだが。やるべきことをやらないから、その直後の料理屋の文鳥の席に想定外の寺ギンがいて驚く藤吉が、風太よりカッコ悪く見えてしまう。
風太と藤吉を交換し、2度目の一騎打ちで撃沈した方が…
私なら前回あたりで、一度「寺ギン vs 藤吉」の一騎打ちで、今回の風太の役をそのまま藤吉にさせて、寺ギンに引導を渡されるみたいなくだりのフラグを立てておいて、「最後の頼みの綱の文鳥師匠に!」とはせ参じたが、寺ギンに先を越されてまたまた撃沈。こんな展開の方が藤吉の見せ場になるのでは?
そうしないから、寺ギンと文鳥を見て意気消沈した辛気臭い藤吉を見ることになるのだ。本当は言いたくないのだが藤吉の中の人の演技がいつも同じだから、本来は「今度は流石にノックアウトの藤吉」みたいに映るべきなのに、夫婦喧嘩をして妻と意思疎通出来ない時と同じだもん。何とかならないかなぁ…
あとがき
もう、今回を見て今週の主人公が風太なのは決定ですね。明日は、風太がオチャラケ派芸人を大勢連れて風鳥亭にやって来て、風鳥亭万事休すかと思いきや、寺ギンは芸人たちの借金のカタを理由に勝手を認めず、文鳥登場でめでたしめでたし。で、「春の陣」は終了。また、今週もおてん様の存在感はほぼゼロで終了かなぁ。
最後に。前回の「過去3か月を忘れましょう」と言う提案の感想に、53回もWeb拍手と、たくさんのコメントを頂き、嬉しかったです。分かる人には分かって頂けて。さて、いよいよ主人公がいてもいなくても良くなっているのが気になります。「月給制」の提案者なのですから、ここは主人公が解決したら良いと思うのですが…
★「北村(藤岡)てん」のモデル「吉本せい」のについて書かれた本の感想
[読書] 笑いを愛した吉本せい - 吉本興業創業者の波乱万丈記 (洋泉社) 感想
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笑いを愛した吉本せい (洋泉社MOOK)
吉本せい お笑い帝国を築いた女 (中経の文庫)
吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉
連続テレビ小説 わろてんか Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 わろてんか 上
NHK連続テレビ小説「わろてんか」オリジナル・サウンドトラック
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【これまでの感想】
●「わろてんか」なぜ視聴者を “場違いの笑いと置いてけぼり” を続けるのか?(2017/10/15)
第1週『わろたらアカン』
1 2 3 4 5 6
第2週『父の笑い』
7 8 9 10 11 12
第3週『一生笑わしたる』
13 14 15 16 17 18
第4週『始末屋のごりょんさん』
19 20 21 22 23 24
第5週『笑いを商売に』
25 26 27 28 29 30
第6週『ふたりの夢の寄席』
31 32 33 34 35 36
第7週『風鳥亭、羽ばたく』
37 38 39 40 41 42
第8週『笑売の道』
43 44 45 46 47 48
第9週『女のかんにん袋』
49 50 51 52 53 54
第10週『笑いの神様』
55 56 57 58 59 60
第11週『われても末に』
61 62 63 64 65 66
第12週『お笑い大阪 春の陣』
67 68 69 70
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