コウノドリ[2] 「第7話」の感想 ~かなり濃厚な第2弾~
![コウノドリ[2]](https://blog-imgs-112.fc2.com/d/m/e/dmesen/kounodori2__dra.jpg)
TBSテレビ系・金曜ドラマ『コウノドリ[2] 命についてのすべてのこと』(公式)
第7話『母になる人生、ならない人生』、ラテ欄『母になる人生 母にならない人生 何が違うの?』のかなり濃厚な第2弾。
なお、原作:鈴ノ木ユウ「コウノドリ」(漫画)は未読。
仕事中に突然、小松(吉田羊)が倒れた。検査の結果、子宮の病気がかなり進行していることが判明。サクラ(綾野剛)と四宮(星野源)は子宮の全摘出がベストだと判断するが、小松は迷う。一方、下屋(松岡茉優)は異動先の救命科で何もできない自分を痛感していた。産婦人科には下屋の代わりに、仕事と子育てを両立させるシングルマザー・倉崎(松本若菜)が。彼女は優秀だが周囲に頼ろうとせず、サクラたちを心配させる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
脚本:坪田文(過去作/コウノドリ 第7,8話) ※第1,3,6話
矢島弘一(過去作/毒島ゆり子のせきらら日記) ※第2,4,7話
吉田康弘(過去作/プラージュ) ※第5話
演出:土井裕泰(過去作/コウノドリ、重版出来!、逃げ恥) ※第1,2,5話
山本剛義(過去作/Nのために、夜行観覧車) ※第3,4,7話
加藤尚樹(過去作/コウノドリ、ホワイト・ラボ) ※第6話
まえがき
一部の読者の皆さん、たいへんお待たせしました。さて、先日の第7話もいつもの濃厚な感想を書けなかったので、書き足りないかった部分を全力でフォローする、今や恒例?となった濃厚な感想の第2弾です。早速書きます。
※放送終了後も読み直して楽しめるような仕様にしてみました。
女性には、多様な健康観やQOL(生活の質)の欲求がある
既に視聴済みの読者さんや話題になっており知っている読者さんもいると思うが、今回はこれまでの本作で描いて来た「妊娠」「出産」「育児」と言うカテゴリーとは違った、周産期医療の中で「新生児科」と「産科」と並んで重要な「婦人科」に大きく関わる問題を扱うストーリー展開になっていた。
更に言えば、周産期医療を考える上で最も大切な「母性」を主題にした “女性ならではの人間ドラマ” が、この第7話となる。そこで、ドラマに入る前に管理人なりの考えた方を書いてみる。皆さんは「ウーマンズヘルス」と言う言葉をご存知だろうか。
元東京女子医科大学 看護学部 学部長、現在いわき明星大学 看護学部 学部長で、日本ウーマンズヘルス学会 学会長(公式)で、私も公私ともに25年以上のお付き合いのある母性看護学が専門の久米美代子先生によれば…
「ウーマンズヘルス」とは、「産む女性、産まない女性、産めない女性、外国人女性等、文化や価値観の違う女性たちの多様な健康観、多様なQOL(quality of life = 生活の質)の欲求を実現する」と言う意味。
第7話は、正に助産師・小松 留美子の “産む女性、産まない女性、産めない女性” の「人生の選択」を賭けた、小松の健康観や小松のQOL(生活の質)の欲求を、サクラたち周囲の人間たちがどう満たし実現するのか? その過程を視聴者全員が見守りつつ考える1時間となっていた。
こんなことを頭の隅に置いて、続きの感想を読んで頂ければ嬉しい限りだ。
全ては、ここから始まった!
さて、予告編でもサブタイトルを見ても、今回が大変にシビアでシリアスな物語になるのは既に承諾済みだ。そこで私が最初に注目したのは、この厳粛で重大な物語をどう語り始めるのか?すると、どうだろう。なんと、サクラが小松をお姫様抱っこして、検査室に連れて行くではないか!
鴻鳥「行きますよー」
小松「ちょっと恥ずかしいから下して」
©TBS
まずサクラのカッコ良さを見せて、小松を丁寧に女性扱いしている紳士な部分も盛り込んだ、僅か5秒程度のコミカルな1カットを使って、視聴者の緊張感を一瞬だけ解(ほぐ)すなんて! 本作は、このような緩急の付け方が本当に上手い。冒頭の1分半で本作が優れたドラマであることが一目瞭然だ。
いつもはサクラの背後に笑顔で立っている小松が…
検査結果が出て、診察室でサクラが小松に診断を下すシーンは印象的だ。いつもはサクラの背後に笑顔で立っている小松が、サクラの診断を聞いている間はずっと下を向いたままだからだ。
©TBS
そして、小松は天を仰ぐように上を見て、「どうしたらいいんだろ?」と呟く。きっと、こぼれ落ちそうな涙をサクラに見せたくないような…
©TBS
しかし、小松はすぐに目の前のサクラに顔を戻して、突然こんな↓ことを言い出す。
小松「でも あれか。私から子宮がなくなっても
世界が平和なら それでいいか ハッハッハッ」
©TBS
と、空元気でその場を繕うが、小松の心の中は暴風雨が吹き荒れ凍えるような寒さだったに違いない。すぐに下を向き神妙な面持ちの小松を見ていられない…
©TBS
救命に異動した下屋が進み道は、まだまだ険しい
メインタイトル明けは、前回で救急救命センターに異動になった下屋のくだり。救急搬送の患者が送られてくるが、下屋は処置室で全く使い物にならない。むしろ、処置の足手まとい。そんな時、ベテラン救命医の加瀬が「ライン取れ」と指示を出す。しかし、産婦人科では難なくこなしていたライン取りが出来ない。慌てる下屋。
©TBS
そんな使えない下屋に対して、救命科部長の仙道から救命救急センターの洗礼↓が浴びせられる。
仙道「どうせ 妊婦のラインしか取れないだろ」
時間経過と共に患者の容体は悪くなる。そんな中で今度は加瀬が「心マやれ」と指示を出す。しかし、「浅い もっと深くだ。もっと!」と指示をして、ありったけの力で心臓マッサージをする下屋。その甲斐あって患者の呼吸が戻る。「何かあったときに お母さんと赤ちゃん両方を救える産科医になりたい」にはまだまだ遠い…
どんよりした気持ちを "心のスイッチ" 1つで切り替える小松
院内の屋外休憩スペースだろうか。前回でサクラと下屋が会話したベンチのある場所。あの時と90度違うベンチに小松が一人座っている。そこに下屋が通り掛かり、小松を見つけて嬉しそうに駆け寄る。
小松は恐らく一人で悩んでいたのだろう。そんなどんよりした気持ちを “心のスイッチ” 1つで切り替える小松は、真の看護師、助産師だと思う。いつも小松は自分の言葉で自身の気持ちと同時にその場の雰囲気を一瞬で変えてしまう魔法を持っているから。この場面でもこんな↓台詞がそれに当たる。
小松「いやあ すっかり 外の空気も冬だね」
下屋「私の心も すっかり冬ですよ」
小松自身の話に方向が向かないように、敢えて季節の話を持ち出して、下屋自身がここにいることに言及しないようにしているのだろう。いや、もしかしたら、下屋に「私の心も すっかり冬ですよ」と言わせて、愚痴を聞いてあげようとしているとさえ思える。小松のキャラクターが明確だからこそ書ける台詞だ。
そして、下屋の愚痴と熱い志を改めて聞いて、こんなこと↓を言う小松で、小松の人生の選択が小松をもってしても簡単で無いことが表現される。吉田羊さんの笑顔とも苦しいとも言えない複雑な表情が、視聴者の緊張感を高める…
小松「決断か… 下屋は 前に進んでるなあ」
©TBS
小松、サクラ、四宮が「女心」で戯れるのも楽しい
場面は産婦人科の医局。「産む(んだ)女性」であり「母になる人生」を選択した産婦人科医の倉橋が一人空回りしていた。早く仕事に職場に馴染もうとしつつ特別扱いもイヤ、しかし子育てとの両立もあっての意地っ張りだ。正に、“後ろ髪を引かれる” 思いの倉橋の小さな後ろ姿が印象的なカットだ。
©TBS
このシーンの最初に小松がサクラと四宮を相手に、母親になる選択をした女性の気持ちを話す場面にもグッとくるし、そのあとに “女心” で男2人をギャフンと言わせて、言い返されるくだりも本当に本作らしくて面白い。
小松「女手一つで子供を育てるって
相当な覚悟がないと できないもん。
ましてや 自分で それを決めたんだから」
鴻鳥「空回りしなきゃいいけど」
四宮「そうだな」
鴻鳥「うん」
小松「まったく… 分かってないなあ」
鴻鳥「うん?」
小松「そうは言っても 甘えたくても素直になれないのが
女心ってもんなの そういうの分かんないから
あんた達 いつまでたっても 彼女ができないんだよ」
鴻鳥・四宮「俺達の何を知ってるんですか?
小松「えっ!? まさか…」
©TBS
ソファーへ座る位置で、小松の心境が分かる演出
小松の自宅。ペットの金魚「宮本君」に餌を上げて、ソファーに座る小松。このカットの演出が面白いので管理人なりに解説しよう。
私が以前書いた『[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~』によれば、下手(画面左)向きの小松は「絶望や敗北感」を表していると読めるのはその通り。しかし今回の小松は画面のほぼ中央にいる。しかし、演出的には下手(画面左)の位置の小松で「不安や苦しさ」を表現したい。
©TBS
そこで、上手(画面右)の半分に金魚鉢を大きく入れ込んだ。この部屋も小松の衣裳もほぼ白一色だし、小松が左隅に座るのは不自然。そこで、ソファーの下手側に色のアクセントに赤いクッションを置いて、上手のオレンジ色の金魚と対比させ、小松をギュッと閉じ込めた空間に押し込めて「不安や苦しさ」を表現したと考える。どうだろうか?
©TBS
そして、「頓服薬」を飲んで言う、この小松の一言が何とも寂しい…
小松「私の餌は これか」
©TBS
同期会で "いつもの小松" を演じる小松に泣けて来る…
小松の入職20周年の同期会。全員が助産師だ。そして、小松以外は結婚し子育て中のようだ。そして、幹事で小松の仲良しの武田 京子が妊娠を報告。この時点で小松が決断をしていたかどうかは不明だが、結末を知ってこの場面の小松を見ると、表面的に “いつもの小松” を演じる小松に泣けて来る…
小松「よしっ 武田のおなかの子は 私が取り上げたる!」
武田「頼んだ!」
友人「こりゃ 小松も負けてらんないね」
小松「いいのよ 私は 自分の子じゃなくてもさ
新しい命の誕生を手助けする毎日に
幸せを感じてんだから」
©TBS
それにしても、武田役の須藤理沙さんは『救命病棟24時シリーズ』でずっと看護師・桜井ゆき 役を演じていたから、助産師役も自然に受け入れられた。役のイメージって強いのだなあ…
同窓会の帰路で1人歩く小松のカットも良く出来ていた
©TBS
同期会の劇伴を引き摺ったまま、小松がとぼとぼと買い物をして歩く姿を足元からパンアップ。この足元、歩幅は広く力強いが、カメラが表情を映すと最初に下を見てから上を、そして前を見る。まだ心の中には迷いがあるが、前述の「下屋は 前に進んでるなあ」と重なって、小松も前には進んでいると言う意味だろう。
©TBS
そして、偶然にメディカルソーシャルワーカーの向井とその子供たちと交差点で出会う。妊婦や母親を支えるこの2人の会話は、いつも現実味があっていい。そして、向井は常に仕事柄、リアルな物言いをするが、この時の向井は小松のこの質問↓に即答できない。
小松「お母さんになる人生と お母さんにならない人生
何が違うのかな?」
向井「ああ… えっと… えっ…」
小松「フフッ… ごめん いいや」
©TBS
答えに困るのも、「産む(んだ)女性」であり「母になる人生」を選択した向井なら当然かも知れない。しかし、そんな質問をする小松を不思議に思う向井の表情もなぜか心に残る…
©TBS
倉橋で描く、シングルマザーが働く歯がゆさ
場面変わって、産婦人科医局の問題児?倉橋の乱。自己中心的な考え方で、チームワークを乱す倉橋。女心の分かっていないサクラと四宮が手を焼くと言う訳だ。このシーンの冒頭から、ずっと倉橋の乱を静かに傍観している小松。いや、倉橋を見守っていると言うのが正解だ。その答えが次のシーンにある。
©TBS
小松が、倉橋に "心のマッサージ" をする…
病院の食堂。どうしても感情的になってしまう我が身に自己嫌悪なのか、正しいことは分かっているのに認めたくない自分に悩むのか、倉橋がため息をつきながら椅子に腰を下ろす。倉橋のあとを追って来た小松が、突然に倉橋の肩を揉んで、心のマッサージをするシーン。今回の中でも好きなシーンの1つだ。
小松「お客さん 肩凝ってますね。
もうちょっと力を抜いて仕事しましょうか」
倉橋「心がけてはいます。でも… なかなか うまくいきません」
小松「なら… 職場の仲間に もう少しだけ頼ってみましょうか。
そうすれば大丈夫です」
倉橋「それができれば 苦労しないですけど」
小松「まっ ゆっくりやっていきましょう」
©TBS
非現実こそが、劇中の "チーム医療" を現実に見せる
続いて、食堂に下屋もやって来る。下屋や積極的に肩もみをするように小松にアピール。「仕方ないなあ」と心のマッサージを受ける。前半は、下屋の背中をさすって彼氏がいないことをピタリと当てて、しかめっ面ばかりの倉橋に笑顔が戻るくだり。こう言うの、いいよね。
©TBS
そして、後半も倉橋の時と同様に「肩の力 抜いて 仕事してみたら どうですか?」と下屋にアドバイスをするが、下屋は倉橋のように小松の言葉を素直に受け取らない。いや、この↓台詞を聞けば、受け取る訳にはいかないと言うのが正解だろう。
下屋「ウフフ… 私には 肩の力を抜いている時間がありません。
学ばなきゃいけないことが 多すぎます」
小松「そうしたら もう少し自分を認めてあげましょうか」
下屋「うん?」
小松「一日の終わりに 「よく頑張りました」って
自分に声をかけてあげてください」
下屋「はい」
©TBS
そして、我が家の周産期医療従事者が見ていて「スゴイ!」と言ったのが下屋が肩を、倉橋が小松の腕をマッサージする場面。「ドクターが助産師にこんなことをするなんてあり得ない」と。でも、この非現実こそが、劇中の “チーム医療” を現実に見せる。現実にないことが起こるのがドラマだから…
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小松が初めて患者として仕事を振り返る素晴らしい台詞
場面はペルソナ総合病院のエントランスホール。退院する家族を元気に見送る小松が、その勢いで四宮を「シノリン」と呼んでしまう微笑ましいシーン。しかし、その直後の四宮と小松の会話が興味深い。「産婦人科医と助産師」の関係から「産婦人科医と1人の患者」に変化するくだりだ。
小松「みんな不安なんだよね。
産科に入院してくるお母さんも退院したお母さんも
私さ 自分がこういう立場になって改めて思ったんだ。
ちゃんと お母さん達に寄り添えてたのかなあって」
助産師歴20年、とり上げた赤ちゃん4,000人の小松が、子宮腺筋症と卵巣チョコレート嚢胞を患って、初めて患者の立場になって自分の仕事を振り返る素晴らしい台詞だ。しかし、4,000人とは凄い数字だよね。私が演出した結婚披露宴が通算約22年で2,000組、でも我が家の周産期医療従事者は約30年で5,000人以上らしい(驚)
©TBS
おっと、話が逸れたので本作に戻そう。助産師として益々やる気を見せる小松に、産婦人科医として四宮が言う台詞が、さり気なく優しくて好きだ。
四宮「小松さん それよりも まず
自分のことを 考えてあげてください」
小松「えっ?」
四宮「助産師としてじゃなくて」
小松「ああ… うん うん」
実は、私は「○○してあげる」と言う言い回しに、とても違和感を覚える。いるでしょ?料理番組で「肉を良く揉んであげましょう」とか。ここでも四宮が「考えてあげてください」と言う。でも、ここの用法は年下の医師が年上の助産師に言い難いことを言わなくてはいけないと言う事情が良く表されている台詞になっている。
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そして、そう言われた小松の少し小さく感じた背中が痛々しいし、悲しそうだったのも印象的だ。
左右から壁が、サクラと四宮を押しつぶすようなカット
場面は病院の屋上で、日の当たらない左右から壁が、サクラと四宮を押しつぶすような画角のカット。上手の壁が無ければ2人の気持ちが前向きに見えるが、そこを壁が塞いでいることと、奥の空の曇天が2人の重苦しさを上手に表現している。
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束の間の "母親気分" を味わう小松
場面は産婦人科の医局。倉橋が子供を迎えに定時で帰ろうとすると担当の患者が急変し、今日こそは帰らないと言う。サクラと四宮でフォローするから帰るように促すが、倉橋の気持ちはモヤモヤしたまま。そこへ小松がチームの一員として助け船を出す。
小松「もし よければ… 私がユリカちゃんのお迎え行こうか?」
倉橋「えっ?」
小松「鴻鳥先生 ここがチームなら
こんな協力の仕方も ありだよね?」
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ナース服にダウンジャケットを羽織って、ユリカを迎えに来た小松。そのお蔭で、倉橋は主治医として患者と向き合える。そんな倉橋のオペを前立ちで支援する四宮。束の間の “母親気分” を味わう小松が病院に戻り、コットに入るユリカをあやす姿を見る寂し気なサクラの表情が心に刻まれる…
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小松が、BABYの演奏で決心をする "大人のファンタジー"
次のシーンはまるで “大人のファンタジー” であると同時に “大人のリアルな現実” と言う相反する状況が幻想的に描かれており、第7話のシーンの中でもとても好きな場面。サクラが小松に何かしてあげられることはないかと、屋上にアップライトピアノがあるレストランへ小松を誘い、BABYがピアノを弾くシーンだ。
鴻鳥「今日は 小松さんのためだけに弾きますよ」
小松「え~っ!?」
鴻鳥「何かリクエストありますか?」
小松はある曲のイントロを単音で弾くのを聞きながら…
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小松「私 BABYの曲で これが一番好きなんだよね」
そして、BABYが弾くのが『candle』と言う曲。因みにこの曲は『TBS系 金曜ドラマ「コウノドリ」オリジナル・サウンドトラック』には収録されておらず、本作のピアノテーマ・監修・音楽を担当をしている清塚信也氏のアルバム『For Tomorrow』の2曲目に収録されている。
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©TBS
まるで夢見心地の中でBABYの『candle』を聴く小松。そんな小松をサクラが励ます。
鴻鳥「小松さんがピンチのときは いつでも弾きますよ」
小松「言ったな」
鴻鳥「僕は ずっと小松さんに助けられてきましたから。
その恩は 忘れません」
そして、曲が終わると同時に、小松の目に涙が溢れている。そして、小松が背中越しにサクラにこう言う…
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小松「鴻鳥先生 私 決めたよ。悔しいけど 仕方ない。ついに、小松は「子宮全摘出」を決意する。そんな小松に今度はサクラがピアノでなく、言葉で応援歌を語り出す…
これが私の人生だ うん」
鴻鳥「あまり頑張りすぎないでください。
頑張ってる小松さんも好きだけど
頑張ってない小松さんも大好きです」
小松「ヒヒッ…」
鴻鳥「だから 一人で全部抱え込まないで
みんな…小松さんの味方ですから」
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小松「私は恵まれてるね。
苦しいとき 手を差し伸べてくれる人が
こんなに近くにいるんだから。
数日間 お休みするけどさ よろしくね。
パッと取って パッと帰ってくるから」
この直後、重い雰囲気をパッと晴らすように、小松がサクラに「結婚しちゃおうか」と言うくだりも、こんな時までその場の空気を読んで気を遣う小松の神経の細かさが丁寧に描かれる。本当に良く出来たシーンだ。だって、サクラがBABYでなければ、成立しない場面だから。
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麻酔のタイミングを自分で決める小松に感動した
我が家の周産期医療従事者が、第7話で好きだと言っていたのが、小松の「子宮全摘出」のオペが始まってから術後の病室のシーンの一連のくだり。まず、オペの始まる前に麻酔薬を入れる場面で、麻酔科医の手を掴んで “今の自分” と向き合って “今の自分” を心に刻み込んで、“次の自分” になる決意をする場面だ。
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小松「ちょっと待って フーッ… ちょっと待って…」
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小松「よし 大丈夫 お願いします」
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そして、居ても立っても居られないサクラと四宮が、お互いのカップ焼きそばとジャムパンを顔を見合わせただけで、無言で交換するシーン。2人は背後から逆光で映るのが心に沁みる…
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カップ焼きそばとジャムクリームパンの存在に涙…
そして術後の小松の病室。麻酔から覚めると傍らにあるサイドテーブルの上に、カップ焼きそばと「プレミアム ホイップクリーム入り ジャムパン」が置いてあるのを、小松が見つける。
小松「食えるわけねーだろ」
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途中に心配する向井のカットも入ったりして、チームがきちんと描かれた上に、みんなに愛されている小松も丁寧に描きつつ、ちゃーんとコミカルなオチも用意してある。お見事!と言うしかない。
子どものいない家庭や一人暮らしの日本での生き難さ
カップ焼きそばと「プレミアム ホイップクリーム入り ジャムパン」のカットから、金魚の宮本君のアップに切り替わると退院した小松の部屋と分かる仕掛けもニクイ。退院お見舞いに向井がやって来たのだ。このシーンでは、子どものいない家庭や一人暮らしの日本での生き難さも語られる。
小松「身寄りがない人って 生命保険入るにも苦労するんだよ。
自分の保険さえ 簡単に かけられない」
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小松「だから 親も兄弟も夫も子供もいない私にとって
子宮は 最後の頼りだったんだ」
この↑小松の台詞を聞いて、今世間を騒がせている「年収800万円超・子供なし世帯への増税案」の検討や、自民党の山東昭子・元参院副議長の「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰」の発言などが気になってしまった。
確かに日本の少子化は深刻化し歯止めをかけなくてはいけない。しかし、どんなに願っても「子供を産めない」女性も存在する訳で、やはり配慮に欠いていると言わざるを得ない。そして、小松が、支えてくれる仲間がいることは「すげえ心強いんだよ」と心痛な思いから奮い立とうとするのを察した向井が、小松を励ます。それもちょっぴりユーモアを添えて…
向井「だって… 私 ずっと 小松さんの友達だから」
小松「うん」
向井「おばあちゃんになっても 一緒に温泉 行きたいから。
生命保険の受取人も 私でいいから」
小松「それは嫌だよ。何でだよ?おかしいだろ」
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小松の職場復帰の場面は、徹底的に明るく前向きに
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場面は、無事に職場復帰した小松。元気に挨拶をするが、仲間たちは敢えて小松を無視して働く素振りをするのが楽しい。そんな仲間の中から最初に声をかけるのがサクラ。
鴻鳥「小松さん お帰りなさい」
小松「ただいま」
四宮「もっとゆっくりしててくださいよ。
せっかく静かだったのに」
小松「もうっ 四宮先生 いじわる言って。
鴻鳥先生は 寂しかったよね?」
鴻鳥「いや 僕も仕事はかどりましたよ」
小松「鴻鳥先生まで そんなこと言って
頭 焼きそばにしてやる」
鴻鳥「小松さん これ以上 天パがひどくなったら
どうするんですか」
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そこへ、下屋が走ってやって来る。こうして、きちんと下屋が来るのが良いね。そして、あれこれ語らせず、泣き顔を抱擁で全てを表現しちゃうのも。
小松「もう そんな顔しないの はい スマイル! スマイル!」
下屋「お帰りなさい」
小松「ありがと」
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これで終わるかと思いきや、まだまだ終わらない小松の復帰劇。今度は病室に置いてあったカップ焼きそばと「プレミアム ホイップクリーム入り ジャムパン」のお礼と洗礼の笑えるくだりもお見事だ。
鴻鳥「おいしかったですか?」
小松「うん 二人の優しさを感じながら
おいしくいただきました」
四宮「なら よかった。
あれ 賞味期限 切れてたんですよ」
小松「ペッ! ペッペッ!」
鴻鳥「僕のも ギリギリだったんで」
小松「クッソ… でもね 今の小松留美子は
何を言われても へっちゃらだよ。
目指すは日本一 いや 世界一の助産師だい!
©TBS
©TBS
©TBS
最後は、無事に現場復帰した明るい小松が描かれて良かった。そして、第7話の小松を通して、子宮筋腫の定期検査や早期治療の重要性や、独身の女性が子宮を全摘することがどう言う意味を持つのか、そして多種多様な女性の生き方を、女性だけでなく男性も考えさせられる感動のストーリーに仕上がっていた。
あとがき
次回は、自意識過剰で自信家の「白川の乱」が描かれるようですが、この投稿ではこれ以上は触れるのをやめておきます。さて、前回の第6話では下屋の産婦人科医としての人生の選択が描かれ、今回の第7話は小松の身寄りのない独身女性の人生の選択が描かれました。
何れも未だ男性社会に於ける女性たちの多様な健康観、多様なQOL(生活の質)の欲求を実現するお話でもありました。こう言うテーマを本作が真面目に真正面から扱うのは素晴らしいです。一人でもたくさんの人に考えて欲しいことですから。
最後に。第6話(濃厚版)に 145回、第7話(通常版)に 120回ものWeb拍手やたくさんの応援コメントを頂戴し、ありがとうございました。今回は演出面や「ウーマンズヘルス」など説明が多かったかも知れませんが、やはり小松を通して描かれた「女性のQOL(生活の質)、また倉橋を通して描かれた「働く女性のもどかしさ」は、みんなで考えていきたいです。
引き続き当blogは、『コウノドリ』を全力で応援します。
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★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/10748/
【シーズン1の感想(本家blog)】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 最終回
【これまでの感想】
第1話 第1話(濃厚版) 第2話 第3話 第3話(濃厚版) 第4話 第4話(濃厚版) 第5話 第5話(濃厚版) 第6話 第6話(濃厚版) 第7話
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