映画「ブレードランナー 2049(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし

なお、1982年制作の映画『ブレードランナー』は鑑賞済み。

ディレクター目線のざっくりストーリー
2049年のカリフォルニア。人間と見分けのつかないレプリカント(人造人間)が労働力として製造され、人間社会はレプリカントと危うい共存関係にあった。旧型の違法レプリカントを追うLA市警のブレードランナー・K(R・ゴズリング)は、レプリカント開発会社のウォレス社の巨大な陰謀を知る。
捜査中に、かつて優秀なブレードランナーとして活躍していたが、ある女性レプリカント(H・フォード)と共に忽然と姿を消し、30年間行方不明になっていたデッカードに辿り着く。ウォレス社の陰謀のカギを二ビルデッカードには、命懸けで守り続けて来た秘密があった…
※PG12
人間本来の姿、魂、愛とは何かをじわじわ問い掛けて来る
レプリカントと捜査官ブレードランナーの闘いを描いたSF映画の超名作『ブレードランナー』の35年振りの続編がこの『ブレードランナー 2049』だ。貧困地区で虐げられ屈辱的な生活をし、抑圧された職場で働く主人公ブレードランナー・Kが抱える深い孤独は、心の拠り所であるホログラムの恋人ジョイによってだけ癒される。
そんなKが目撃するのは、自身の「生の尊厳」を求めて彷徨う、進化したレプリカントたちだ。彼らには “ある奇跡の存在” があり、Kに「人間とレプリカントの違い」や「人間らしさとは何か」をじわじわと問いかける。そして、観客には「人間本来の姿とは?」、「魂とは?」、そして「愛とは何か?」と問い掛けて終わる…
前作匹敵する仕上がり 新たな作品としても十分楽しめる
前作がSF映画の金字塔であり伝説的な作品で、ラストの解釈もファンの間で二分するような難解な所も魅力だったため、続編への不安はファンならずともあるだろうが、その心配の必要は無い。前作と肩を並べても負けない仕上がりであり、ある意味で新たなオリジナル作品としても十分楽しめる作品に仕上がっているから。
人間とレプリカントの境目をとても低くした設定が秀逸
とにかく、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の前作への誠実なリスペクトがありながら、更に深く掘り下げ進化させ広げたストーリーがお見事。
特に今作の設定で秀逸なのが、人間とレプリカントの境目をとても低くしたこと。そのお蔭で、“本物” である人間と人間が作った心を持った “創造物” であるレプリカントの違いに物語がギューッと収束し帰着に向かうのが素晴らしい。
また、Kと今回のヒロインであるジョイとの斬新な映像処理で描くラブシーンや、終盤で “守り続けて来た秘密” に行き着くデッカードの表情から、“本物” の人間として伝える愛と、人間として存在しない“作りもの” が伝える愛に違いはあるのか?いや、本作全体こそ “愛” が溢れる作品なのだ。そこをしっかりと見て欲しい。
映像美と音楽美で、作品に没入出来る独自の世界観は傑作
今や巨匠と言ってもおかしくないドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を筆頭に素晴らしいスタッフとキャストの合体、哲学的で奥深くSF映画の永遠のテーマでもある強いメッセージ性、最新技術を駆使した光と陰のコントラストの映像美と重低音と和音が奏でる音楽美で、完全に作品に没入出来る独自の世界観は傑作と言える。
163分の長尺, Kの掘り下げ不足, 若干の矛盾が残念
ただ、残念な点もある。まず、映画としては163分もあり、正直オジサンには少々苦痛の長尺。また、観るために割く時間もかなり必要になるため、その点でのハードルが高いのが難点。
また、特に派手なアクションが連発する訳でも、テンポも決して良くはないし、聊か説明不足や論理に矛盾がある(おバカな私が理解出来ないだけだと思うが)で、退屈さを感じる人もいるはず。
もっと序盤で「K」の人物設定を掘り下げて丁寧に描いて、中盤を少し摘まめば、せめて2時間前半に収まったのではないだろうか。そうなれば、評価もだいぶ変わって来ると思う。
あとがき
SF映画の金字塔であり伝説的な作品の続編で多少の不安はありましたが、そんな心配は無用と断言します。素晴らしいスタッフとキャストの合体、哲学的で奥深くSF映画の永遠のテーマでもある強いメッセージ性、最新技術を駆使した光と陰のコントラストの映像美と重低音と和音が奏でる音楽美で、完全に作品に没入出来る独自の世界観は傑作です。
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