わろてんか (第21回・10/25) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』(公式)
第4週『始末屋のごりょんさん』
『第21回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
てん(葵わかな)と楓(岡本玲)は、藤吉(松坂桃李)が間違って仕入れた古米や外米をどちらが多く売りさばけるかを競うことになった。はじめは商売上手の楓がてんをリードするが、古米を団子(だんご)にして客の関心をひいたり、カレーの試食をやって外米を売るアイデアで、てんが逆転勝利を収める。てんの斬新な売り方を目の当たりにした啄子(鈴木京香)は、思わずてんに軍配を上げ北村屋の“始末の極意”を伝授してしまう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
突然 "デキる若旦那" になったのを "失敗" で軌道修正?
N「さ~て とざい と~ざい!嫁合戦の始まりでございます!」
前回のラストが、こんな↑先走って煽るだけの不快なこんなナレーションで終わった本作。しかし「あとがき」で書いたように、「京都編」を無視して、演出家の解釈で上手く脚本を転がせば、何となく “朝ドラらしい嫁いびり” に見えると思って観始めたのだ。しかし、北村屋の番頭・又八のこの↓台詞にがっかり…
又八「若旦さんが 法外な値段で 古米や外米を
ようけ 買わされてしまわはったんです」
前回にも書いたが、藤吉がいつの間にか母と番頭から1人で米市場での買い付けを任されるまでの「プチ若旦那」に成長していることこそ不自然極まりなかったのに、今回は見事に「藤吉の失敗」を描いて強引に軌道修正したつもりだろうか?
「買わされてしまわはった」は、辻褄が合わない
しかし、私にはこの↑又八の「買わされてしまった(標準語で)」にとても違和感を覚える。又八が藤吉の買い付けに尾行でもして一部始終を見ていたのか、この場面の前に藤吉から「買わされた」経緯でも聞いていなければ、ここは「買って来てしまった」でないと辻褄が合わない。
百歩譲って、又八が藤吉に気を遣って庇った結果で「騙された」の意味を込めたとするならば辻褄は合うが、私を含め視聴者には藤吉と番頭の又八の人間関係は一切説明が無い。結局は、「嫁いびり」をするために「大量の米が必要だと言う結果」のために藤吉の失敗を中途半端に使っただけ。これは本当にダメな兆候かも?
てんが何かを成し遂げたり何かが出来る訳でもないのに?
うーん。この言葉を何度本作の感想に使ったか。そもそも。これも何度使ったか。これまで主人公が「何かを成し遂げた」ことや「何かが出来ていた」と言う描写がこれまで全く無いのに、いや主人公がどんな人物なのかさえ、3週間半も放送しているのにまだ描かれていない状態で、突然に「勝負」の意味が分からない。
だって「勝負」と言うのはその人物がどのような能力を持っているのか知っているからこそ、その人を応援できるのであって、その意味では、てんと同様に楓の能力も一切分からないのだから、まずどっちが勝つか負けるかに興味もわかないし、応援すらできない。
トキに「てんにも、才能や能力がある」と言わせて後出し?
例えば、てんは儀兵衛の下で「商売人の心得」でも叩き込まれていれば、ふと思いついて行動に移して大成功を収めても不自然でないが、そんなのは全く無くて、唐突にトキがこんな↓ことを言うから不自然を通り越して、意味不明な展開になる。
トキ「さすが おてん様や」
同じことを書くのは面倒だが、このトキの台詞も前述の又吉と全く同じ。トキが藤岡屋で何度も「さすが おてん様や」と言うような場面に遭遇したと言う描写があれば頷ける。しかし、てんは「何かを成し遂げていない」し「何かが出来てもいない」のだ。
結局は、てんと楓を勝負のスタートラインに並べるために、トキに「てんにも、それなりの才能や能力がある」と後出しジャンケンで付け加えただけ。だから、その直後すぐに楓が安売りして一歩リードしちゃう。あまりに稚拙な脚本に頭が痛くなる。そして、もっと台詞を大切に書け!と言いたい。
1ミリも、てんの優位性が伝わって来ない4つの理由
そして中盤。これまた呆れる展開へ。だって、この↓4つが描かれていないんだもん…
●なぜか、トキの一言で簡単に思いついて
●なぜか、思いついたことがすぐに現実化できて
●なぜか、すぐに客を集まって来て
●簡単に、登場人物の称賛の嵐を浴びる主人公!
1ミリも、てんの優位性が伝わって来ない。1グラムも、楓の劣位性が感じ取れない。だって、「醤油炙り団子」から楓が勝負に参戦している描写がないのだから。もはや、これは「勝負」を描いているとは言えない異常事態。そんな異常事態に脚本家も演出家も気付かずに、もっと異常なことを継ぎ足した。
みんなから絶賛されて、笑うてんを見てどう思ったか?
それは、古米や外米が大売れしている時の、てんの振る舞いだ。葵わかなさんは単純な笑顔なら出来るらしい…その満面の笑みでカレーを売り捌いている時に、やや意気消沈した藤吉が通り掛かり、てんがこんな↓声を掛ける。
てん「あっ 藤吉… 藤吉さん。手伝うておくれやす」
まず、一瞬「藤吉」と呼び捨てにしたように聞こえる演技指導にも驚いたのだが、問題の本質はそこではない。どうやら、脚本家の目論見通りに、ヒロインを立てて勝負に勝たせたつもりだろうが、買い付け過ぎた米を楽しそうに売り捌いて、客だけでなく女中らからも絶賛されて、笑うてんを見てどう思っただろうか?
楓の分の米も、全部売り切るべきだったのでは?
良かったね。おいおい、違うぞ。そもそも、この度の勝負のきっかけは、駆け落ち?した大好きな? “藤吉のミス” と “北村屋の一大事” を救済すること。そう、アバンタイトルの冒頭でのこの↓啄子の鶴の一声がきっかけだ。
啄子「内助の功で 店と藤吉郎を助けられるか ええ試験や」
ならば、ここで脚本家が描くべきは、てんが勝負に勝つことで終わらせずに、楓の分の米も全部売り切ることではないだろうか?それこそが “内助の功で、店と藤吉郎を助ける” ことでは?
原価や手間賃の計算もせず、トキのお蔭で売り切っただけ
わざわざ脚本家自身が啄子に言わせておいて、その本質を自分が理解せずに書いているから、「てんが勝負に勝って、北村屋の “始末の極意” を伝授される」と言う結果だけを書いて満足してしまっているのだ。
私の最大の疑問は、北村屋の “始末の極意” を伝授するのに、今回の勝負のエピソードが最適だったか?と言うこと。どこをどう見れば、てんの言動が「損して得取れ」「始末とケチは違う」になるのか理解できない。私には、原価や手間賃の計算もせずに、トキのアイデアをヒントに2つの閃きで売り切っただけにしか見えなかったが。
4週目なのに、まだ何も物語は始まっていないと同じ!?
これね。いろいろなものが描かれなさ過ぎなの。特に、てんの以下の3つが描かれていない。
●啄子に認めて貰いたいと言う気持ち
●藤吉を愛する気持ち
●そこからわいてくる、藤吉を助けたい気持ち
そして、最悪なのは、てんと言う女性が “何のために生きているのか?” が全く描かれず分からないこと。これは、まだ何も物語は始まっていないと同じ。あの『ひよっこ』のヒロインだって、4週目には「仕事と家族が好きで家族のために集団就職して働く」ところまで描かれたのに、本作はまだまだと言う訳だ。
あとがき
4週目になって、唐突に「てん推し」を始めたので、違和感だらけですね。
最後に。前回の深まった闇への疑問だらけの感想に、88回ものWeb拍手と、たくさんの応援コメントを頂き、ありがとうございます。せめて、楓の分のお米も売って、「お店も藤吉郎さんも助けられて良かった」と言う場面があれば良かったですね。そうすれば、最後の楓の負け惜しみもいい感じになったでしょうに。残念…と言うのが最大の応援です。
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