わろてんか (第19回・10/23) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』(公式)
第4週『始末屋のごりょんさん』
『第19回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
藤吉(松坂桃李)はてん(葵わかな)を連れ、実家である大阪船場の米問屋・北村屋へ向かった。母の啄子(鈴木京香)は家出から戻った藤吉を喜んで出迎えるが、てんのことは認めようとしない。それどころか許嫁だと言って、無理やり楓(岡本玲)を藤吉と引き合わせる。てんは何とかして北村屋に置いてもらおうと啄子に頼み込むが、女中としてなら置いてやってもいいと言われてしまう。こうして、てんの女中修業が始まった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
いよいよ、「放送開始から1か月」の第4週目が始まった
いよいよ、「放送開始から1か月」の第4週目の1日目、第19回が始まった。それにしても、今回のアバンタイトルも見れば見るほど出演者は気の毒だし、内容も…
難は数々あれど、一番の難は「藤岡家の家族同士の愛情を感じさせないこと」ではないだろうか。劇中でも当時の跡取りがどれほど重要なのかは、幾度も台詞で語られている。だとしたら、親は娘の縁談相手を目隠ししてトランプのカードを選ぶようなことはせず、最善・最良の相手を必死に探すのが普通では?
それを描かず、例の「ロミオとジュリエット」で “娘を笑わせた” のを理由にどこの馬の骨とも分からぬ芸人もどきが芸を捨てて娘を一生笑わせると聞いただけで、勘当はするものの実質的な駆け落ちを認めるのはおかし過ぎる。
「おバカさん」に「無責任」と言うレッテルが増えただけ
また、てんもてんだ。兄の新一の死後、幾度も藤岡屋を継ぐと言っておきながら、いざとなるとそれは口先だけのことをしてしまったから、「てんもいろいろ悩んだ」と言う超好意的な脳内補完もあっけなく撃沈。結局、「おバカさん」に「無責任」と言うレッテルが増えただけ。
もちろん、てんと藤吉が互いに惹かれ合う理由も、「高橋一生さんの方が良いだろう」と思わせるだけで、何も伝わって来ない。だから、2人が駆け落ちして大阪にある藤吉の実家に転がり込むのも良く分からないのだが…
語りでは、京都から大阪にやって来たのを強調するが…
そもそも、てんのモデルとされる「吉本せい」さんは、兵庫県明石市で米穀商の三女(第4子)として生まれたのが史実。しかし、NHKのスタッフが今でも毎年京都で開催される「くすり祭り」を知り、それの絡めるためにヒロインを京都の薬問屋の娘にしたらしい。
しかし、本作のメインの舞台が「大阪」であることは間違いない。だから、ナレーションもこうして↓「大阪に向かうこと」や「大阪にやって来たこと」を過度に装飾している。
N「そうして 二人は 京都から
商人の町 大阪の船場へと向かいました」
しかし、思い出して欲しい。本作にとって「京都と大阪」は、てんが単独行動できる「範囲」であることを。風太もあっと言う間に、てんを探し当てる「範囲」として描いたのは、作り手たち自身なのだ。また、以前のリリコの台詞からも藤吉は度々旅芸人一座を抜けて実家に帰っていたようにも受け取れたし。
2人にとって「大阪」は「日常的な行動範囲」でしょ?
従って、これまでの描写を素直に受け入れれば、「大阪」は2人にとって「日常的な行動範囲」となる。それを、さも、てんが実家を捨て遠い場所に藤吉を信じて付いて来たみたいな表現をするから、また矛盾が生まれる。結局、矛盾も不連続性もすべて自分たちで脚本を書き演出しているのだ。
更に、「大阪」が2人にとって「日常的な行動範囲」と分かってしまえば、なんとこの煽りのナレーションが無責任に煽るだけで不愉快な思いをさせているのかと思ってしまう。うーん、月曜日のアバンに先週のダイジェスト版を入れなければ、こんなことを思い出さずに観始められたかも知れないのに…
演出家が交代したが、大阪弁もどきが気になって…
主題歌中に、やっと(ついに、かな?)演出担当がこれまでの本木一博氏から東山充裕氏に交代したことが分かった。東山氏の名は連続テレビ小説『ふたりっ子』の演出家に名が連なっているが、私は未見のため詳細は不明だ。さて、本編。また、こんな↓煽りのナレーションが不快感を増やす。
N「まして 親の承諾を得ない駆け落ちが
許されるはずもありませんでした」
もう「悲恋」にしたい匂いがプンプン漂う。それに何なの?この(敢えて書くが)気持ちの悪い大阪弁もどきのイントネーション。50年以上関東に住んでいる私でも違和感を覚えるが、方言指導も雑と言うことか?その点『あさが来た』は良かったように記憶しているのだが。この辺りは関西在住の読者さんのご意見を伺いたいところだ。
てんが、愛嬌を振り撒いているようにも見えないが…
中盤に、てんと藤吉の許婚・楓のこんな↓やり取りがある。てんと楓のキャラを差別化するために、もはや楓サイドの台詞で、てんのキャラクターを再構築しようとでもしているのだろう。
楓「うち 嫌いなんです。彼構わず愛きょう振りまく女子」
てん「愛きょう振りまいてる訳や…」
こう言う部分も、てんが「笑い上戸」であることを3週間で徹底的に描いていれば「てんも気の毒 てんが可哀想」と見えるのだが、全く描いて来なかったから、「愛きょう振りまいてる」ようにも見えないし、ただの差別化するだけの台詞で終わってしまうのだ。
てんよりも脇役の女性3人の方が作品に溶け込んでいる
なんでこう言う “てん” にとっても “葵わかな” さんにとっても、意地悪で逆効果な脚本(構成)や演出(編集)をするのだろう?おっと、今後は私が説明不足になってしまった、失礼。北村家での楓のシーンの後に藤岡家のてんの妹・りんのシーンを直結された。楓を演じるのは岡本玲さん、りんを演じるのは堀田真由さん。
楓は見事に既にキャラが立っているが、りんは未だに不明瞭。しかし、同じようにキャラが不明瞭なリリコを加えても、岡本玲さん、堀田真由さん、そして広瀬アリスさんが演じる3人の女性の脇役の方が葵わかなさん演じるヒロインよりも明らかにドラマの中へ溶け込んでいる。
なぜ未だに脚本家が “てん” のキャラクターをハッキリせないのか?
もちろん女優としての経験値の差はあるが、やはり「劇中での3人の役割」が明確だから良く見えるのだ。また、演技指導の面からもヒロインと3人への演出が顕著に違うように思う。ヒロインの出番が多いから低い基準でOKテイクを量産しているような雰囲気が伝わってやしないか?
結局、4週目に突入しても、脚本家が “てん” のキャラクターをハッキリさせないのが、すべての元凶。主人公が動き出して物語が回り始めるには、その前にしっかりと主人公の設定を作り魅せなくてはいけないのに、そんな脚本の最低限のことが出来ていない。だから、面白くないのだ。これは、困ったぞ。
てんのキャラクターが薄味に仕上がった理由はこれ?
そう言えば、今回の台詞の中に「藤吉」と「藤吉郎」の2つの名前が幾度も登場する。「藤吉」は芸名と言うが、ほぼ本名と同じなのがどうしても解せなくて、「吉本せい」さんと関連のある人物を探してみた。すると、「吉本せい」さんが創業した吉本興業所属の芸人さんに「桂春団治」と言う人がいるのを思い出した。
中でも「初代 桂春団治」は戦前の上方落語の大スターで、本名が「皮田 藤吉」だった。更に調べると先妻の東松トミさんが京都生まれ、後妻の岩井志うさんは、花嫁修業で大阪の薬問屋の女中として奉公していたことも分かった。
どうやら、てんのモデルは「吉本せい」さんだけでなく、関連した人たちを組合せて構築しているようだ。もしかしたら、その構築過程でどんどんキャラクターが膨らんで、結果的に薄味のキャラに仕上がった可能性もある。こりゃ、益々困ったぞ。
あとがき
最後のシーンで、てんの駆け落ちに対する覚悟を藤吉の母・啄子に宣言する時も、女中として置かせてもらえると喜ぶくだりも、本来なら物語の新たな歯車が回り出し「大阪編」のスタートを感じさせる勢いのあるシーンになれなければいけにないのに…
てんが啄子のメモ書きにあった「ぜいたく アホ」を強調させるだけに終わってしまいました。それに、女中のくだりは『あさが来た』、嫁いびりは『ごちそうさん』からパクって、いやオマージュしたような。それに、主演女優さん、本当は辛いけど笑うと言う芝居は、まだできないのかなぁ。そう見えないのは致命的かも…
最後に。前回も愚痴と怒りの感想なのに、112回ものWeb拍手と、たくさんの応援コメントを頂き、ありがとうございます。これを読んで下さっているのは、朝ドラが好きだからですよね。そんな読者さんに私が書いたこの↓記事と本をお勧めします。最近の朝ドラがつまらないのに大ヒットする理由が見えてくると思います。
[読書] 「朝ドラ」一人勝ちの法則 (指南役/著・光文社) 感想
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
笑いを愛した吉本せい (洋泉社MOOK)
吉本せい お笑い帝国を築いた女 (中経の文庫)
吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉
連続テレビ小説 わろてんか Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 わろてんか 上
NHK連続テレビ小説「わろてんか」オリジナル・サウンドトラック
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/10598/