[読書] 「朝ドラ」一人勝ちの法則 (指南役/著・光文社) 感想

「朝ドラ」のヒットの法則と、低迷する連ドラの原因と打開策
著者の「指南役」とは、メディアプランナーで放送作家の草場滋氏(1967年生まれ)を中心として3人組のエンタテインメント企画集団。そんな著者が、「朝ドラ」の歴史を振り返りながら「朝ドラ」のヒットの法則と、低迷する連ドラの原因と打開策について書いたのが本書。
著者とほぼ同い年の私は、「朝ドラ」は小学生当時に見て以来、『あまちゃん』から再び「朝ドラ」を観始めた、“朝ドラ低迷期” を知らない世代である。そんな私でも、ここ数年の朝ドラや民放を含めた連ドラの質の低さには呆れかえっている。そんな気持ちの答えがあると良いなと手にした訳だ。
読む必要がない人と、読む価値のある人の見分け方
読む必要がない人と、読む価値のある人の見分け方だが、結論から言うと…
●1970年年代に10歳代で、
当時からの今までの国内外の映画やテレビドラマを良く知っている人
●自分なりに最近の「朝ドラ」が視聴率的に当たっている理由の
持論を持っている人
この↑2つのいずれかに該当する人は、あまり読む必要がない本だと思う。その理由は、恐らく自身の考えや知識を超えることは本書には書かれていないだろうから。では、どんな人にお勧めか?
●往年の名作映画をあまり知らない人
●『ゲゲゲの女房』以前の「朝ドラ」をあまり知らない人
●『ゲゲゲの女房』以降の「朝ドラ」がウケる理由を知りたい人
●最近の「連ドラ」をつまらないと思っている人
●最近の「連ドラ」が面白くなる理由を知りたい人
この↑5つのタイプの、何れかに該当するなら読む価値はあると思う。
全10ページの「少し長めの、はじめに」一番面白い
本書で、多くの人が面白く感じるのが、奇しくも僅か10ページからなる「少し長めの、はじめに」、所謂「序章」だ。実はこの10ページに全てが凝縮されていると言っても過言でない。
優れた作り手とは、「過去のヒット作品をどれだけ知っているか」と同義語
クリエイティブとは、0から1を創る作業ではなく、1を2や3や5にブラッシュアップする作業なのだ
「少し長めの、はじめに」の中には、新旧の日本の映画やテレビドラマの “モチーフ” や “エッセンス” の素となった名作のタイトルが列記されている。多くの人は「ネタ元」を知らないと思うが、知っている人なら「なるほど」と頷けるものばかりだ。
一部こじつけ的な作品もあるが、大体は私の感覚と同じ。この序章だけ読んでも面白いと思う。
「朝ドラが1人勝ちする理由」は、新鮮味が薄い
さて、本書の核となる「朝ドラが1人勝ちする理由」だが、まあこんものか?と言う感じ。因みにネタバレになるから、本書にある『朝ドラの黄金法則「7つの大罪』の内、4つだけ挙げてみる。要は、黄金期に作られた大ヒットの7つの法則を守らなければ、今現在も大ヒット作は生まれないと言う説だ。
●ヒロインが無駄に前向き
●ノスタルジー狂
●夫殺し
●ヒロインが故郷を捨てる
毎日朝ドラを見ていれば、ただ体系的に述べられているだけで新鮮味は薄くはないか?因みに『ひよっこ』で置き換えれば一目瞭然だ。
●みね子が無駄に前向き
●ビートルズや昭和歌謡、ツィッギーなどのノスタルジー狂
●みね子の父・実が記憶喪失になり、且つ行方不明になった夫殺し
●みね子が奥茨城を捨てて、東京に根を張っていった
上記の4つを含めた「7つの大罪」に縛られてヒット作を作り続ける限り、今以上の朝ドラが誕生しないと言う論には、私も賛成する。従って、毎朝時計代わりに見ているような視聴者には「なるほど!」と思えるし、この4つを読んで「他も知りたい」人は読んだら楽しめると思う。
連ドラを活気づけるアイデアには共感できる
連ドラの低迷の理由を、所謂「月9」の『ビーチボーイズ(1997年)』と『HERO(2001年)』をターニングポイントに挙げている。王道のラブストーリーから「月9」が路線を外れたことが、現在の「月9」の低迷の原因だと。まあ、そう言う理論もあるだろうが、少々強引な気もした。
ただ、有名脚本家も “旬は10年間” と言う説には共感するし、もっと新進気鋭の脚本家をメジャーな放送枠の連ドラに起用するべきや、丸々の新作に拘らず優れた過去の作品を今風にアレンジすることも十分にクリエイティブな作業であると言う点にも賛成だ。
あとがき
意外と「朝ドラ」に関する部分に新鮮味がないのが残念。でも、今の「朝ドラ」がつまらない理由は本書では見つかりませんが、ヒットする理由は(少々強引ですが)一応分かります。むしろ、連ドラ全般に於ける問題点や打開策については面白く書かれているので、そちらを目当てに読みたい人に強くお勧めします。
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