わろてんか (第5回・10/6) 感想 ※修正・加筆あり

NHK総合・連続テレビ小説『わろてんか』(公式)
第1週『わろたらアカン』
『第5回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
下戸の父・儀兵衛(遠藤憲一)が人目を盗んで酒を飲むようになったのは、自分が外国との商談を台無しにしたせいだとてん(新井美羽)は考えた。そこで風太(鈴木福)に頼んで外国商を訪ねるが、けんもほろろに追い返されてしまう。てんが心を痛めていることを知った儀兵衛は、台所の酒瓶の中身をすべて捨て、てんへの笑い禁止を解く。晴れて笑えることになったてんは、藤吉(松坂桃李)が出ているという寄席小屋へ行くことにした。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
アバンの最初の3カットで、てんと儀兵衛の距離感を描いたぞ!
既に第5回となっているのに、一向に良い所が見え辛い本作。だが、今回のアバンタイトルのファーストカットは、クレーンカメラを使って珍しく奥行き感と表現して狭苦しい画面から一応脱却した。
また、そのカットに続いて儀兵衛の1ショット、儀兵衛ナメ(画面の手前に映り込ませる撮影技法)のてん、と…3カットをテンポよく繋げたことで、奥行き感が際立ち、父・儀兵衛の家長としての威厳とてんと儀兵衛の心の距離感を表現した。
こう言うのが映像による演出だ。もちろん、1回上手く行けば良いと言うものではない。連ドラでは特に積み重ねることで意味を持つのだから。さて、ついに第5回で演出の技で脚本の粗を隠すことが出来るか見てみよう…
今回のアバンは悪くない。このことだけは間違いない!
その後も、女性たちと子供たちが食事をするカットも狭苦しさが無くなった。手前の畳の明るさと風太の後ろの障子の光の透け方、奥の簾と草木が白色に飛び過ぎた感じに明るくしたことで、ここも広さと奥行きを出した。草木の揺れ方も不自然で無くたったし、奥の奥で食事をする奉公人にもきちんと演技が付けられていたし。
てん「これからは お父はんの言いつけをちゃんと守る」
また、前回までなら縁側で済ませてしまいそうな、てんのこの↑台詞も、手持ちカメラで誤魔化さず、カメラドリー車で撮影(被写体と共にカメラそのものが移動する撮影手法)したから、歩いているてんの大きさが変わらないと言う効果で、てんの「守る」気持ちがしっかりと映像で表現された。これも悪くない。
また、てんを風太の頭上から俯瞰で見せたカットのあとに、くるりと振り返ってカメラ目線のてんと続いた。これによって、てんが風太の言いなりに動くのでなく、自己主張が出来る女の子であること、そして物語が新たに動き出そうな予感を漂わせた。僅か2分間に満たないが今回のアバンは悪くない。このことだけは間違いない。
ヒロインが自発的に動き出す大切な最初のエピソードのツカミが失敗
さて、主題歌明けの本編。アバンは褒めたのだが。私が見逃していたら私が悪いのだが、儀兵衛が本来は下戸(酒が飲めない人)であるとの人物設定の説明がこれまであっただろうか?あれば問題ないのだが、もしも無ければ、父を、夫を心配するてんもしずも視聴者置いてきぼりで話が進んでいることになる。
ここは、しっかりと儀兵衛が下戸であることを示した上での「バケ猫(字幕では「化け猫」でない)」のエピソードにして置くべきだった。だって、「自分のせいで」が理由で、いよいよヒロインが自発的に動き出す大切な最初のエピソードだからだ。まだ、始まったばかりで言いたくないが、これについては失敗と言わざるを得ない。
【修正・加筆 2017/10/06 10:35】
読者のかえるさんや下戸さんからコメントを頂き、録画を見直して見たところ、昨日放送の第4回での5分過ぎ頃、台所で酒が無くなっていると、しずと番頭の平助と女中頭のサエ?たちが話している会話の中に下記↓のような台詞のやりとりがありました。私の集中力の無さで、一部誤解を招くような感想になったのをお詫びします。
平助「旦那さんは 一滴も飲まらへん」
サエ「奥さんも お酒は飲まはらしません」
新一が後継ぎだけでなく、日本の薬業界の先駆者に!?
てんがドイツ人に謝罪に行った後の兄・新一のシーンも、はっきり言って視聴者置いてきぼりで話が進んでいないか?障子越しの夕日を背にした新一は、決意を表現するのに悪くないシチュエーションだが、流石にあまりにも唐突に家業を継ぐ話が始まって驚いてしまった。
それも、薬問屋の後継ぎの話だけでなく、日本の薬業界の先駆者になりたいと言う壮大なお話まで進展した。なぜ、こんなに唐突なのか? どうして、こんなに雑なのか? そして、何ゆえに視聴者を置きっぱなしで話を進めてしまうのか?物語を先に進めるのは悪いことではない。しかし、視聴者への情報提供無しでやるのは間違っている。
数晩酒を飲んだ程度で騒ぐ話でない…と見えてしまった
そして、ドイツ人に謝って来たことを儀兵衛に伝えるてんと風太。脚本がやりたいことも分かるし、演出がそれを補助しているのも理解する。しかし、最初にドイツ人一家に蝶々が飛んで来た不自然な偶然と、大袈裟な笑い、子ども相手に激高して帰ってしまうドイツ人たちがあって…
薬問屋だからと言うこれまた意味不明な理由での、父親の前でだけなのか禁止の範囲が中途半端な「笑い禁止令」が発令されたが、その実効性も中途半端なまま。そして「下戸」の父親が気を紛らわすために夜な夜な酒を飲むことが、健康被害ならともかく罪悪であるかの扱いなのも解せぬまま…てんが涙を流して父に謝罪しても。
ここは、下戸の父親が自分の「笑い」のせいで、仕事が上手く行かなくなり気分を紛らわす(または眠れなくて)ために夜な夜なお酒に手を出して、具合が悪くなったから「ごめんなさい」が正しかったのでは?一晩や二晩酒を飲んだからと騒ぐ話でない…と見えているのは、やはり失敗ではないかな?
近年で最強の "朝ドラ用特製 超好意的な脳内補完" 発動!
とは言え、みっきーの “朝ドラ用特製 超好意的な脳内補完” によって「バケ猫事件」と「笑い禁止令」の2つの騒動が一件落着したことにした。どうやら、本作は、ここ数年で最強の “朝ドラ用特製 超好意的な脳内補完” を有効活用すればならないようだ。
でも、そのお蔭で、儀兵衛がお参りに行こうと宣言シーンも、お参りのシーンも、奥行き感があり狭苦しくないカットも、アバンタイトルの時のようにいい感じに見えた。カット割りのテンポもカメラアングルも悪くない。
このまま終われば良かったのに、どうしてラストシーンを藤吉の出番にしたがるのか?これで全部がチャラになってしまった。あぁ今回も残念無念の15分間だったか…
なぜドラマに惹き込まれないのか? その理由はこれだ!
うん、分かった!何が?そう。なぜドラマに惹き込まれないのか?が。そしてその答えは、各エピソードのスタート地点の設定説明が曖昧なまま進むからだ。
文章構成で良く言う「起承転結」に例えれば、「起」が漠然とした状態だから「起」に「承」が続かず平坦になり、いくら「転」が「承」を受け取っても平坦過ぎて大きく転じることが出来ない。だから意外性がない。
そんな状態で何となくいい雰囲気の「結」で締めくくったところで、エピソードの成り立ちがしっかりしていないから、ここ数年で最強の “朝ドラ用特製 超好意的な脳内補完” でも利用して、視聴者が自分で強引に一件落着させ、次を見ようと言う気になるしかない…そんな現状ではないだろうか?
あとがき
今回は、幸いにも「先走って煽るだけの語り」が無かったのが救いですが、起承転結の “流れ” がない脚本では、いくら演出や俳優が頑張っても限界があるように思います。これは『ひよっこ』の終盤戦に匹敵しますね。
例えばこの度のエピソードを「笑い」をテーマにしたドラマに合わせるなら、女たちが「旦那さま、全部お酒を捨ててしまっては困ります」とツッコミを入れて、儀兵衛が「あっ、そうか!」とボケるべきだったのではないでしょうか。こんな雑な脚本で、日本の「笑い」を創り上げた女性の一代記は大丈夫なのか心配です…
最後に。前回の感想に 50回のWeb拍手と、たくさんのコメントを頂き、ありがとうございます。私、この50名の読者さんに救われています。だって、日に日に数が減っているのは、私の意見が的外れだからなのかなぁと少々落ち込んでいるので。
その上、『NHK朝ドラ「わろてんか」第3話は22・3% 過去最高で3回連続大台突破 : スポーツ報知』と言う記事が出る位に。視聴者が満足している訳ですから。本当でしょうか?とにかく明日の土曜日も様子見します。
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【これまでの感想】
第1週『わろたらアカン』
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