映画「ドリーム(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし


ディレクター目線のざっくりストーリー
1960年代始め、アメリカは国際的には東西冷戦、国内では1943年の人種隔離政策により、人種問題で大揺れだった。
ヴァージニア州ハンプトンのNASAレングレー研究所では、ソ連とのガチンコ勝負で宇宙開発競争が繰り広げられる中、優秀な黒人女性たちが、理不尽な差別や格差などの障害に耐えながら、計算手として働いていた。
その1人、天才的な数学者キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めて宇宙特別研究本部に配属されるが、白人だけのオフィス環境は劣悪そのもの。働くビルには、有色人種用のトイレも無い状態だった。
一方、同僚で管理職を目指すドロシー(オクタヴィア・スペンサー)とエンジニアを目指すメアリー(ジャネール・モネイ)も、理不尽な障害で、昇進の道を阻まれてしまう。しかし、彼女たちは仕事と家庭を両立させながら、ひたむきに夢を追い続けた…
マーキュリー計画の成功を影で支えたのは黒人女性だった
1960年代、まだコンピューターが無かった時代、NASAで「計算手(“コンピューター” と呼ばれた)」として宇宙開発に貢献した黒人女性たちの功績を、実話をもとに描いた本作。
映画『ライトスタッフ』で描かれた、アメリカ初の宇宙飛行士に選ばれた男たちの夢と友情と命を懸けた挑戦だった「マーキュリー有人飛行計画」の裏側を、本作では、その計画を陰で支えたのが、実は 卓越した才能を持った黒人女性たちだった、と言う知られざる事実から掘り下げていく。
人種差別を、品位をもって明るくポジティブに描く
アメリカが、いや人類が最も恥じるべき人種差別と言う大問題を、人類の夢である宇宙開発と言う人類の壮大な夢と上手く重ね合わせながら、シリアスな社会派作品でなく、描写は丁寧でストレートだが、全体的にはあくまでも明るくポジティブで、且つ品位を持って描かれるのが素晴らしい。
人種差別と言う愚行に、知的なウイットで対抗する黒人女性
とにかく、いろいろな部分のバランスが巧みだ。トイレやコーヒーポットまで有色人種を区別する愚行はコミカルに描き、上司や同僚らの嫌がらせには知的でしゃれっ気のある言動で対抗する姿も明るく描く。
黒人女性に頼る他ない白人が態度を変えていくのが痛快
もちろん、時には愚痴るし失望もするが、家族の支えや友情や、新たな恋の胸キュンが彼女たちを、優しく助けてくれる。また、稀な才能を持つ黒人女性の存在なくして、NASAの宇宙開発が成立しないことが分かり、白人たちが態度を変えていく様は痛快だ。
しかし、本当に時代を動かしたのは、彼女たち本来の明るさであり、人を思う温かさだ。
日本公開が遅すぎるたのと、ダサい邦題がダメ
星5つにしなかったのは、本作と言うより日本の配給会社に苦言を呈したいから。まず、アメリカではとっくに上映され評判も高い作品なのに日本公開が遅すぎたこと。また、邦題がダメなこと。『Hidden Figures』を『ドリーム』と名付けるダサいセンスは、何とかならなかったのか?
あとがき
アフリカ系アメリカ人の女性たちが、幾つもの “人種の壁” を、知的な勇気でポジティブにチャレンジし、次々と “最初の扉” を開けていく過程がテンポ良く描かれ、見終えた後の痛快さは格別です。
そして、未だ、人種差別や性差別も無くならず、戦争の足音さえ聞こえて来そうな今のアメリカで、このような作品が製作上映された事に大きな意義があると思います。
もちろん、日本で様々な差別や偏見に悩み苦しんでいる人は、本作の中に混沌とした中から抜け出せるヒントが見つかるかも知れません。知的に明るくポジティブに生きよう!と思える作品です。
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