ひよっこ (第113回・8/11) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『ひよっこ』(公式)
第19週『ただいま。おかえり。』『第113回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
田植えの日。みね子(有村架純)や茂(古谷一行)らが準備をしていると、宗男(峯田和伸)がやってくる。実(沢村一樹)の姿を見て駆け寄ろうとする宗男に、ちよ子(宮原和)と進(高橋來)は「記憶がない」と念を押す。弟の自分を覚えていなくても再会を喜ぶ宗男。そこに、君子(羽田美智子)と正二(遠山俊也)、きよ(柴田理恵)、征雄(朝倉伸二)も手伝いにやって来る。そして、集まった全員でにぎやかに田植えが始まる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
"奥茨城の人たちの一体感" こそ本作らしい楽しさ
「山の日」の祝日の朝に、奥茨城の山に囲まれた “谷田部家の田植えだけで15分間の力作” と言ったところだろうか。それにしても、よくこんな大雨の中でロケ撮影を敢行したものだ。それだけ、奥茨城でのシーンの撮影スケジュールがタイトだった証拠だ。
それを考えると、この雨天の中で、俳優とスタッフたちは、さぞ見事なチームワークで撮影に臨んだのが分かる。だって、田植えが終わる情景が夕方でなく、昼過ぎの雰囲気だから。手際よく撮影が進んだから伝わる “奥茨城の人たちの一体感” こそ本作らしさ。今回は、そこに注目して感想を書いてみる。
宗男が帽子を脱いで、丁寧に自己紹介したのが良かった
この↓宗男(峯田和伸)の台詞1つで、みね子(有村架純)らが実(沢村一樹)が見つかったことは宗男に伝えたが、前夜に突然奥茨城に帰って来たことは伝える暇が無かったことが分かる。この方が、谷田部家に電話が無いことや宗男の小祝家との距離感も同時に伝わって、まさに谷田部家の日常を垣間見た感じ。
宗男「兄貴!どうしたんだよ。帰ってきたのが」
そして、良かったのが実と宗男の兄弟の再会の挨拶シーン。宗男は雨合羽の帽子を脱いで、丁寧に「弟の宗男だ」と自己紹介したのが良いね。弟が兄へ敬意を表しているのが。
たったの5分間で10人の個性的な登場人物全員に見せ場
続いて、君子(羽田美智子)と正二(遠山俊也)、きよ(柴田理恵)と征雄(朝倉伸二)の2組の夫婦も手伝いにやって来る。ごちゃごちゃした説明台詞は無く、実の存在に驚く第一印象だけ台詞で言わせて、あとは抱き合ったりのカットで小気味良く省略し、この↓きよらしい一言で場を盛り上げて、田植えのシーンに入るまで丁度5分。
きよ「私が初恋の相手だっつうのも覚えてねえのが?
以前、「丁寧に描くこと≠時間をかけて描くこと」と書いたのを覚えて下さっているだろうか?たったの5分間で10人の個性的な「ひよっこ劇団」の登場人物全員に見せ場を作って、笑いで田植えに繋いだ脚本はお見事。おっと、もちろん、俳優の演技と演出力の賜物であるのは間違いない。
「この際、『ひよっこ』を笑っちまってくれ!」って事か?
きよ「気ぃ遣わないで、みんな笑っちまえばいいんだよ」
今回の最大のヒット、いやホームランはこの↑きよの台詞ではないだろうか?表面的にには、きよの楽天家らしさと盛り上げ役らしい一言だが、前回での実が言ったこの↓台詞と合わせると、違った意味に聞こえてきやしないだろうか?
実「こごで取り戻してえ。もういっぺんやり直してえ」
そう、脚本家と演出家の心の叫びだ。「この際、細かいことは気にしないで『ひよっこ』を笑っちまってくれ!」と言う意味に違いない。そんな「ひよっこ再起動宣言」とも受け取れる台詞を二日続けて入れてくるのだから、益々期待して良いと言うことだ…ろう。
実が「手植えで前進する田植え」する演出が良かった
そして、いよいよ田植えの本番。ここで話を意図的に話をずらす。と言うのは、私は農家経験も田植え実習も受けたことはないが、手植えの田植えは “線に沿って後退するのが普通” だと思っていたから。でも、茂たちは全員前進して手植えをしていた。そこで、旧茨城県園芸試験場に務めていた身内に聞いてみた。
どうやら茨城がどうとか言うのでなく、全国の地方で前進後退はあるそうで。一般的に縄などを横列に張って手植えする場合は後退、線引き機で縦列に植える場合は、後退すると次に苗を植える所の水が濁るし、踏んだ土に植えると苗が不安定になるため、前進することが多いらしい。話を感想に戻そう。
私がディレクター目線で、この前進する手植えが良いと感じたのは、こんな理由だ。
以前の記事『[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~』に書いたように、実が、下手(画面左側)から上手(画面右側)に向かって進んで行く姿が、実自身の「不安や寂しさ」から「希望や勝利」に変えていきたい気持ちを表現しているから、ベストな選択だと考えた。
今の新しい日常が、過去の日常の引き出しを開ける
茂「体が覚えてんだっぺ。ほら!」
この茂の台詞も良い。実の奥茨城での何気ない経験や体験や人と人との触れ合いの中から、記憶がたくさん詰まっているのに何故か開かない引き出しが、日常の中で少しずつなのか一気なのかは分からないが、開いていく。今の新しい日常が、過去の日常の引き出しを開けるなんて、正に本作らしいではないか。
今のみね子の目の前にいるのは、誰なのか?
そして、一度汚したら撮り直しが大変な泥まみれのシーン。宗男、いや峯田和伸さん、狙ってやったね、でんぐり返し!そして、ここで、久し振りの「お父さん…」。これ↓を聞いてしまうと、今のみね子の目の前にいるのは、まだ「父の実」でなく、父親と思おうとしている「父親似の雨男」と言うことになる。
みね子(N)「お父さん…。何だかいろんなことが、
大丈夫な気がしてきました。
だって、お天道様見てくれてるはずだから。
頑張って入れば、きっと大丈夫」
だとすると、やはり美代子が強引にみね子に実との同居を押し付けたくだりは正解だったとは言いにくい。まあ、そう言うこともひっくるめて、今は「みんな笑っちまえばいいんだよ」と笑い飛ばすのが精神的に楽なのは確かだ。
あとがき
茂の「ゆっくりでいいんだ。ゆっくりで」とみね子たちの「お疲れさまでございました」で幕を閉じた第113回。残り43回、7週間分です。4月の「奥茨城編」が4週間で出来たのですから、この調子でじわじわと盛り上がると良いですね。
でも、厳しいことを言えば、現状は、向島電機やあかね荘などは一先ず忘れて、「奥茨城編」の好印象を利用して「面白いでしょう!」と宣伝しているようなもの。やはり、丁寧に描くべきは描き、無駄は極力排除して、メリハリのある作品を作って欲しいです。その意味で、今週の演出を見れば分かるように。今後の演出家の役割は大きいです。
最後に。前回の感想に、90回ものWeb拍手とたくさんのコメントを頂き、ありがとうございます。田んぼで暴れるのは現実的には、どうかと思いますが、これこそがフィクションの醍醐味。このような架空だからこその日常を大胆に採用しながら、とにかく丁寧に演出していけば、復活の兆しアリだと思います。、
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【これまでの感想】
●[妄想] 「ひよっこ」の昭和40年と言う時代設定に、再び“名作の予感”(2017/05/04)
●[訂正] 「ひよっこ」第36回で、みね子がビーコロを食べたのは "初任給" でした(謝)(2017/05/14)
●「ひよっこ」を2か月間観終えて、今思うこと…(2017/05/28)
●「ひよっこ」の“青天目澄子”と演じる女優・松本穂香に注目してみた(2017/06/05)
●「ひよっこ」は視聴者の“好意的な解釈”に頼らないで欲しい(2017/06/12)
●ひよっこ 総集編(前編) (2017/7/8) 感想
●奇跡のコラボ 「ひよっこ」の三男が「コード・ブルー2」に出演していた (2017/07/12)
●「ひよっこ」のオープニング映像が、後半戦から一部変わってます (2017/07/20)
第1週『お父ちゃんが帰ってくる!』
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第2週『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』
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第3週『明日(あす)に向かって走れ!』
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第4週『旅立ちのとき』
19 20 21 22 23 24
第5週『乙女たち、ご安全に!』
25 26 27 28 29 30
第6週『響け若人のうた』
31 32 33 34 35 36
第7週『椰子(やし)の実たちの夢』
37 38 39 40 41 42
第8週『夏の思い出はメロン色』
43 44 45 46 47 48
第9週『小さな星の、小さな光』
49 50 51 52 53 54
第10週『谷田部みね子ワン、入ります』
55 56 57 58 59 60
第11週『あかね荘にようこそ!』
61 62 63 64 65 66
第12週『内緒話と、春の風』
67 68 69 70 71 72
第13週『ビートルズがやって来る』
73 74 75 76 77 78
第14週『俺は笑って生きてっとう!』
79 80 81 82 83 84
第15週『恋、しちゃったのよ』
85 86 87 88 89 90
第16週アイアイ傘とノック』
91 92 93 94 95 96
第17週『運命のひと』
97 98 99 100 101 102
第18週『大丈夫、きっと』
103 104 105 106 107 108
第19週『ただいま。おかえり。』
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