ひよっこ (第80回・7/4) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『ひよっこ』(公式)
第14週『俺は笑って生きてっとう!』『第80回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
公演前夜、みね子(有村架純)らあかね坂商店街総出の赤飯作りが始まる。警備員600人分の弁当を用意するため、柏木堂の親子と福翠楼の夫婦、あかね荘の住人たち、さらには宗男(峯田和伸)がすずふり亭に集まる。米が蒸し上がるのを待つ間、省吾(佐々木蔵之介)が宗男に「戦争中はどこにいたのか」と尋ねる。宗男はそこでみね子も知らなかった戦争体験を語ることに。それはビートルズへの思いにつながるものだった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
不覚にも宗男の話が終わったら、涙が流れてた…
こう言う書き出しは当blogでは珍しいが、今回の冒頭を前回の振り返りでなく主題歌にしたのは大正解だ。主題歌明けから宗男(峯田和伸)の戦争体験談を通してビートルズに繋げた流れの “一塊感” が良かったから。そして、不覚にも宗男の話が終わったら涙が流れていた…
あかね荘の面々は、割烹着に頭巾やコック帽姿の方が…
さて、主題歌明け。今回は感動したと書いた直後で、水を差すようで恐縮だが、今回は感動の裏に幾つか “もの申したいこと” があることを事前報告しておく。
さて、そんな “もの申したいこと” の1つが、今回の衛生面。坐骨神経痛持ちのオジサンの私でも、昭和41年にはまだトイレトレーニングをやってるピュアなお年頃だから、当時の様子は良く分からないが、あかね荘の住人たちが割烹着や頭巾を着用せずに、弁当作りの手伝いをしているのが大変気になる。
喋りながら…は、テレビドラマだから目をつぶるにしても、やはり衛生面が気になる。ここでまた前回書いた本作初担当の演出家・川上剛氏の手腕に黄色い信号が灯る。どうだろう?あかね荘の面々が割烹着を着て頭巾を被るなり、コック帽を借りるなどして仮装した方が、映像的に面白いと言う判断すらなかったのだろうか?
それでなくても、世間ではホール担当のみね子(有村架純)の前髪や、宗男の不潔さが話題になっているのだから、この弁当作りのシーンだけでも衛生面に配慮した画作りをしたら良かったのになぁ。
夜の広場の照明が、明る過ぎる
場面は休憩時間の店の裏の広場。ここでまた “もの申したいこと” で恐縮だが、前回は昼間の設定で照明が明る過ぎて白飛びしている箇所があった。で、今回は夜。広場の行き止まり方向に差してる(恐らく)月明りが妙に白くて明る過ぎ。画面真ん中の白い柱の電球は切れてるから月光だ。
月明かりだとしたら、あんな昼光色のような青白い色は不自然に感じないか?同じ白なら昼白色系、いや映像的には電灯があって電灯の光りに皆が照らし出されている方が、この場面には合うような。とにかく月光にしても街灯にしても、蛍光灯みたい色温度の高い照明は、折角のいいシーンに合わない。
資料映像の最後に、宗男の言葉を先行させた演出は正解
真夜中の工事現場みたいな照明が真横から煌々と当たる不自然な広場だが、省吾(佐々木蔵之介)の突然な「宗男、お前、戦争中どこにいた?」の一言から、物語が大きく動き出す。
省吾「インパール作戦ってことか?
五郎「え…」
宗男「はい…。生き残(のご)りです。
仲間は、殆ど皆戦死しましました」
五郎「インパールって…」
省吾「だったらお前…」
宗男「はい」
省吾「酷い戦いを…した相手だろ…イギリスは」
宗男「はい」
宗男が何とか作り笑顔で「はい」と省吾の1つ1つの質問に答えたこの↑シーンが印象的だ。「語り」でインパール作戦を開設したのもいいタイミング。当時の資料映像に宗男の台詞を先行させて、↑の会話中の宗男の最後の「はい」のあとに、宗男の考える “間” があるように編集したのは褒めておこう。
語尾だけが少しだけ強めが、宗男の優しさを滲み出させる
宗男が、淡々と語る↓の台詞。語尾だけが少しだけ強めなのが、心を振り絞って落ち着いた口調で若者たちを怖がらせないようにしようと言う宗男の優しさを滲み出させる。
宗男「ただただ山ん中(なが)飲まず食わずで歩ぐだげでよ。
歩げなぐなったやづは置いでいがれで、
置いでがれんのが怖くてただただ歩いで…。
時々空の上がら偵察機に見っけられだのが、
雨みでえに爆弾降って来て逃げで隠(かぐ)れで、
それが行っちまったらまだ歩いで。
俺は、死ぬんだなって、毎日(にぢ)思ってた。
毎日仲間(ながま)が死んでいぐがらね。うん。
うん。何つうが…。
『死ぬまで生ぎてんだな、俺は』って思ってだ。
自分からネタフリをして省吾が「すまん」と言って、宗男の話を止める心境が分かり難い。これについては、あとで “もの申したいこと” として書いてみる。「悲しい話で終わんねえがらよ、心配するな」と気丈に話を続ける宗男。
イギリス兵が "いつも笑ってる理由" だったのは良かった
戦場の真っただ中で、敵国の兵隊とばったり出くわして、お互いに見なかったことにするなんてエピソードは、古今東西の映画で散々使い古されたものだ。戦地での友情そのものをテーマにしたを描いた名作も多い。しかし、本作のこれは、宗男が “いつも笑ってる理由” にきちんと帰着した点で良く出来てる。
宗男「ある晩によ、斥候っつってな、
まぁ偵察(ていさづ)みでえなもんだな。
斥候に行がされてよ。その夜は月が雲ってで、
おまけにジャングルの中だから真っ暗でよ、
何も見えねえんだ。
で、いぎなり出ぐわした。イギリス兵にね。
気が付いだら、すぐ目の前にいだ。
俺も驚いだげど、向ごうお驚いだ顔してだ。
お互い、銃を構えでさ、動げなくて。
俺も怖くて震えでだげど…。
うん、向ごうも同じだったんだと思う。
だんだん暗闇に目が慣れで来て相手の顔が見えだ。
靴墨で黒く塗ってやがったげどよ、
俺とおんなじような年頃の男(おどこ)だったよ。
今の、みね子ぐらい…?
遠くから声が聞こえたんだ。向ごうの仲間だ。
そしたらよ。目の前の奴が仲間に何か言ったんだ。
何つったのか分がんねえ。
何つったのか分がんねえがら余計(よげい)怖くてよ。
ほしたら、ほしたらな、
そいづ、俺見でにっこり笑ったんだよ。笑ったんだ。
で、そのまま仲間のいる方さ、走ってった。
俺はそのまあぼ~っとしてで。
いつまでもぼ~っとしてでよ。
何で笑ったんだろうって分がんなくてよ。
分がんなくてさぁ。
でも、俺はあいづのおかげで死なずに済んだんだ…」
オリジナリティーに欠けるし、今、本作で入れる必要があるかは “もの申したいこと” の1つだが、笑顔の理由付けとしては大きく納得できる。
戦争体験とビートルズが上手く繋がっていく
そして、見た目の年齢的には戦争経験者である一郎(三宅裕司)や五郎(光石研)たちは口を出せない中で、早苗(シシド・カフカ)が、質問を投げかける↓のも、自分の環境を教えなかったみね子に「水臭い」と言って気にかけている早苗らしい。ちゃんと役割分担が出来てる。
早苗「だから、あれ?」
宗男「いや、俺な、悔しかったんだよ。
俺は笑うこどでぎながったからな。
んだがらよ。何かあっても、拾った命だがら、
笑って生ぎようって決めたんだ。悔しかったがらね
そして、ついに戦争体験とビートルズがどう繋がるかの話に進んで行く。
宗男「…で、ビートルズだよ。
ちきしょう…。
ちきしょう。まだイギリスかよって思ったけどよ、
何か、俺は、嬉しかったんだ。
もぢろんよ、ビートルズとそんどぎのあいづは、
関係ないとは思うけどよ。
確かに俺はあいづのおがげで生きてんのがもしんねけど
あいつだって
俺のおがげで生きてるって考え方もあっぺ?」
省吾「そうだな」
宗男「だろ?んだからよ。
俺ん中で、ビートルズとあいづとが
ごっちゃになっちまった。
んだからよ。何か言いてえんだ、ビートルズによ。
『俺は生きてっとう!』ってな。
『俺は笑って生きてっとう!
おめえも生きてっか!笑ってっか!』ってな。
言いてえんだ。叫びてえんだ。ハハハ」
暗闇のジャングルの中で出くわした敵国のイギリス兵の笑顔に救われ、その笑顔で救われた宗男もそのイギリス兵を救った。そして、インパール作戦から22年。かつての敵国イギリスからビートルズがやって来た。22年間を「22年しか」と捉えるか「22年も」と捉えるかは、視聴者の年齢や経験や体験によって違うだろう。
私は、宗男にとっては両方の感覚が宿っていると考える。22年しか経っていないからうなされる晩もあれば、“あいづ” の笑顔の印象も鮮明に違いない。
「赤飯の炊けた匂い」が、嗅げないのに効果的だった
しかし、第二次世界大戦当時の東南アジアでは、日本兵が日本を思い忍ぶために炊いたとされる「赤飯」が、22年経った昭和41年の平和な日本では、ビートルズを警備する人たちの弁当になると言うちょっぴり皮肉めいた物語。
啓補「いい匂いが…」
裕二「してきました~!」
赤飯が炊けた匂いを真っ先に嗅ぎつけた啓輔(岡山天音)と祐二(浅香航大)の言葉↑のあとに、宗男が天を仰ぐように赤飯の炊けた匂いを気持ち良さそうに嗅いでいるカットがある。日本を思い忍ぶ匂い、それが「赤飯」と言うことと、宗男のすべてを吐露した今の気持ちがシンクロしたと考えるのは、無理があるだろうか。
戦争ネタの時の"省吾の役割"と"聞き役みね子"が気になる
さて、最後に先延ばししていた “もの申したいこと” を書いておく。今回の宗男の話の内容のことではない。省吾の使い方にもの申したいのだ。それと、ヒロインのみね子が単なる聞き役で終わったことにも。
以前にも書いたが、「戦争」と言うキーワードが出る度に省吾の出番になる。しかし、当の本人の戦闘体験なりは未だ描かれていない。ここが問題。何度か話しても良い場面はあったのに、その度にはぐらかされた。こうなると、いつもは笑顔だが、実は戦争のことばかり考えてる人?と言う先入観が付いてしまう。
省吾と戦争の関係は、さっさと描いた方が良い。それをやらないと、戦後生まれのヒロインみね子は、いつになっても戦争体験談の聞き役と言う先入観が付いてしまう。実際、この15分間でみね子は何かをしただろうか?宗男がいつも笑顔を絶やさない理由を知っただけで、戦争について何か考えたようには見えなかった。
脚本家が戦争を描くのは勝手だが、きちんと高校三年生から10年間のみね子の成長物語に、必要なエピソードになるように書いて欲しい。お涙頂戴のエピソードの羅列では困る。父が出稼ぎしてそのまあ失踪、父失踪のため集団就職、いざなぎ景気直前の証券不況で就職先が倒産、戦闘体験を聞く…。
この4つ、1つに繋がってる感じもしないし、繋がるようにも今のところ見えない。やはり、例として挙げた↑の4つの出来事も、もっとヒロインのみね子にフィードバックさせて欲しい。でないと、昭和40年に就職したと言うヒロインの設定の意味が薄まってしまうのでは…
あとがき
宗男の話を聞いて、朝から泣いてしまいました。よいエピソードでした。ですから、この話がのちにきちんとみね子の人生に生きるようなストーリー展開を期待します。それにしても、峯田和伸さんの演技も存在感も素晴らしい。それに尽きる15分間でした。有村架純さんにも、こう言う放送回がもっと欲しいです。
最後に。前回の感想に、90回ものWeb拍手を頂き、ありがとうございました。皆さん、演出の話は興味が無いのでしょうか?私としては、普通の1時間枠の連ドラよりも、毎日見て貰うと言う意味で演出は重要だと思うのですが。という訳で、当blogは、まだまだ引き続き本作を応援します。
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【これまでの感想】
●[妄想] 「ひよっこ」の昭和40年と言う時代設定に、再び“名作の予感”(2017/05/04)
●[訂正] 「ひよっこ」第36回で、みね子がビーコロを食べたのは "初任給" でした(謝)(2017/05/14)
●「ひよっこ」を2か月間観終えて、今思うこと…(2017/05/28)
●「ひよっこ」の“青天目澄子”と演じる女優・松本穂香に注目してみた(2017/06/05)
●「ひよっこ」は視聴者の“好意的な解釈”に頼らないで欲しい(2017/06/12)
第1週『お父ちゃんが帰ってくる!』
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第2週『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』
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第3週『明日(あす)に向かって走れ!』
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第4週『旅立ちのとき』
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第5週『乙女たち、ご安全に!』
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第6週『響け若人のうた』
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第7週『椰子(やし)の実たちの夢』
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第8週『夏の思い出はメロン色』
43 44 45 46 47 48
第9週『小さな星の、小さな光』
49 50 51 52 53 54
第10週『谷田部みね子ワン、入ります』
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第11週『あかね荘にようこそ!』
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第12週『内緒話と、春の風』
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第13週『ビートルズがやって来る』
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第14週『俺は笑って生きてっとう!』
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