映画「ハクソー・リッジ(字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし


ざっくりストーリー
田舎町で育ったデズモンド・ドスは、幼少期の苦い経験から、人を殺すことを禁じる宗教の教えを固く心に誓っていた。やがて、第二次世界大戦が激化し、デズモンドは、銃を持たない衛生兵ならば自分も国に尽せると考え、父親や恋人の反対を押し切って陸軍に志願する。
1945年5月、沖縄に到着するデズモンドの隊は、「ハクソー・リッジ(のこぎり崖)」と呼ばれる激戦地での過酷な闘いに挑んでいく…※PG12
これのどこが、監督が反戦の魂を貫き通した作品なのか?
本作は、銃を持たずに人命救助に徹した実在のアメリカ軍の衛生兵、デズモンド・ドスが信念を貫きながら困難な戦いの中で負傷兵を救う人間ドラマだ。最初に言っておくが、戦争の描写そのものがエスカレートし過ぎてるし、これのどこをどう見たら監督が反戦の魂を貫き通した作品なのか疑問のまま劇場をあとにした。
終盤での日本兵と米兵の描写の落差に寂しくなった
本作の舞台でありクライマックスは、沖縄のハクソー・リッジ(のこぎり崖=前田高地)の戦いだ。テロップで、「1945年5月」と出るから、日本軍の降伏3か月前だ。
もはや、日本軍に勝ち目が無いのは日米両軍が周知のこと。その頃の日本軍は、沖縄本島に上陸した米軍の本土侵攻を引き延ばすこと。そのためだけに、日本兵は捨て駒同然で戦地に出て、死ぬ時は米兵を1人でも道連れにする、そう言う作戦をしていた頃だ。しかし、そんなことは劇中で微塵も描かれない。
むしろ、終盤で描かれる日本軍や日本兵たちへの作り手側の解釈と、主人公デスのアメリカでの英雄っぷりの描写の落差に、これがメル・ギブソン監督の認識なのか?今のアメリカの理解なのかと、寂しくなった。
一応、採点の理由を…
結局、私は観ながら、中盤以降の沖縄戦で日本兵が米兵に殺されれば「クソッ!」と思い、日本兵が米兵を撃ち殺せば「やったぁ!」と考える時点で、私は本作を作り手(アメリカ)側に立って、本作を観ることは出来ない。
その意味で、第二次大戦の戦争映画ではつきものだが、アメリカ万歳方向に偏向され過ぎた映像表現には★、実話を基にしたアメリカ人のための戦争映画としては、グロさを巧みに利用して人間ドラマに見せかけた手法の新しさに★★★★。と言うことで、平均すると2.5個だが、端数は無いので★★の40点/100点としておく。
是非、日本側の視点の映画『沖縄決戦』も観て欲しい
さて、沖縄戦の残酷で無慈悲な顛末とその悲劇を、日本側の視点で描いた映画には、今井正監督の『ひめゆりの塔』(1953年)が有名だが、『ハクソー・リッジ』の対極的な作品としては、新藤兼人脚本・岡本喜八監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)を挙げたい。
低予算で製作されたため戦闘シーンは少ないが、被害状況や日米両軍兵の精神状況など実にリアル。是非、日本側からの視点で描かれた作品も見ることで、沖縄戦の本当の残酷さと無慈悲さ、正に地獄であったことが分かるはずだ。
あとがき
アメリカ人の気持ちで本作を観られる人は、世界一の臆病者が戦争で英雄になったヒーロー伝説映画として楽しめると思います。私は、本作のどこを見たら監督が反戦の魂を貫き通した作品なのか疑問まま終わりました。ただ、戦後72年目の夏を前に、今のアメリカが当時の日本をどう捉えているのかを知ることは出来ます。かなりグロいので要注意です。
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