「ひよっこ」を2か月間観終えて、今思うこと…
岡田氏は、「みね子」を "普通の田舎娘" として描く…
水着を買って海水浴に行くお金と時間があるなら、奥茨城の実家に帰った方が、「奥茨城編」の頃の “女子高校生のみね子” らしいのでは?と、以前に書いた。
私なら、主人公のそう言う不変的な人間性をベースにした上で、生きていく中で様々な葛藤を乗り越える過程で、更に人間性を磨きあげていく姿を、ダイナミックに描いて行くだろう。そう言う作品が好きだから。しかし、本作の岡田恵和氏は、主人公の「谷田部みね子」と言う女性を、“普通の田舎娘” として描いている。
真面目に毎日生きて、小さな幸せを少しずつ掴む…
これは、私が好きな岡田恵和脚本作品の中で、『ビーチボーイズ』と『最後から二番目の恋』の登場人物の描き方との共通点であり、物語の根幹である “終わってみると、登場人物たちみんなが、最終回に少しだけ成長していた” と言うのに似ている。
先の2つの作品の登場人物たちの人生は、私たちと同じように、決してダイナミックでもドラマチックでもなく、真面目に懸命に毎日を生きながら、小さな幸せを少しずつ掴んでいく人生だ。
そして、長所もあれば短所もある。期待を裏切らない安心感もあれば、思いもよらない大胆さや、ついやっちまうことも持ち合わせる。そんなのが普通の人。
みね子は、"今しか味わえない小さな幸せ" を選んだ
だから、「谷田部みね子」は、我々の期待に反して帰省せず、仲間たちとのひと夏の青春の1ページと言う “今しか味わうことの出来ない小さな幸せ” を選ぶ。電車賃や土産代を水着に変えて。そして、また谷田部家の真面目な長女の顔を覗かせて、家族に申し訳ないと詫びつつつも、海水浴に行くことは隠さないし、隠せない。
すずふり亭でもそうだ。毎月少しずつ値段の高いメニューを食べることで、社会人としての自覚を高める一面を見せながら、手持ちの金が少ない時でも来店し、身の丈にあった料理を恥ずかしそうに、心の中で泣きながら美味しそうに食らう。
クリソの鮮やかな緑色とまろやかな甘さに出会う度に…
綿引は、「谷田部みね子」にとって何だったのか?
同郷の恩人?
優しいお兄さん?
真面目な警察官?
それとも、恋の相手だったのか?
恐らくみね子に明確な答えは無いのだろう。
ただ、間違いないのは、ビーコロよりも値段の高いクリームソーダのあの鮮やかな緑色とまろやかな甘さに出会う度に、綿引と言う男性を思い出すのだろう。そして、あの午後3時過ぎに訪れた海岸と綿引の歌も…
大好きな家族と過ごさなかった昭和40年の夏の思い出…
きっと、みね子には、綿引と劇的に再会し、恋に堕ちるなんてドラマチックな運命は訪れないだろう。いや、「谷田部みね子」にはそんな運命は似合わない。
メロン色のクリームソーダを食べる度に、「恋は赤いバラ」を聞く度に、綿引を思い出し、大好きな家族と過ごさなかった昭和40年の夏を思い出すのだ。私たち普通の人、誰もがそうしているように。
優しさや温もり,強さや弱さ,小さな幸せや僅かな成長…
やはり、本作には “ドラマチック” を求めるのは野暮なのかもしれない。本来は誰よりもドラマチックな人生を歩むべき主人公を、視聴者らと同じ “普通の人” として、意図的に描いているのだから。
どこにでもあるような、でもつい見逃したり忘れてしまいがちな、人間のふとした優しさや温もり、強さや弱さ、小さな幸せや僅かな成長を、知らない人にも何故か懐かしい昭和の香りに乗せて、じっくりと丁寧に描いているのが『ひよっこ』と言う朝ドラだから。
だから、物足りない、つまらない、そう感じる視聴者は多いだろう。そして、こんな事を書いている私自身も、またそう感じるに違いない。ただ、今言えるのは、「奥茨城編」を1か月間、更に「向島電機編」を1か月間観てきた今の私は、本作を、みね子を応援したい。
あとがき
土曜日の感想記事の追記のつもりで書き始めたのですが、長くなったので、独立したエントリーにしました。また、いつ私の気が変わるかも知れませんが、今のところ当blogは『ひよっこ』を応援します。
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【これまでの感想】
●[妄想] 「ひよっこ」の昭和40年と言う時代設定に、再び“名作の予感”(2017/05/04)
●[訂正] 「ひよっこ」第36回で、みね子がビーコロを食べたのは "初任給" でした(謝)(2017/05/14)
第1週『お父ちゃんが帰ってくる!』
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第2週『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』
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第3週『明日(あす)に向かって走れ!』
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第4週『旅立ちのとき』
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第5週『乙女たち、ご安全に!』
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第6週『響け若人のうた』
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第7週『椰子(やし)の実たちの夢』
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第8週『夏の思い出はメロン色』
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第9週『小さな星の、小さな光』
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