ひよっこ (第15回・4/19) 感想 ※三男パートの追記あり
私の投稿ミスで、三男のリレーの部分がバッサリと掲載されぬまま投稿してしまいました。この部分を中盤に追記します。放送の時間軸通りに書いてありますので、上から読んで下されば大丈夫です(謝)

NHK総合・連続テレビ小説『ひよっこ』(公式)
第3週『明日(あす)に向かって走れ!』『第15回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
聖火リレーに向けて大忙しの日々が始まる。みね子(有村架純)はチラシを配り、時子(佐久間由衣)はゼッケンを作り、三男(泉澤祐希)は聖火台を作るなど、手分けして準備を進める。家族も学校の仲間も村の人々も、みんなが参加して盛り上がる奥茨城村。ついにやってきた当日、第1走者の三男がトーチに点火し、リレーが始まる。三男も時子も強い思いを胸に抱いて走り抜ける。そしてトーチはアンカーのみね子へと渡されて…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
僅か15分間だけで世界観を魅せ、感動させる朝ドラ
感想に入る前に、皆さんに伝えたいことがある。実は私の妻は本作を一度も観ていない。いや、正確に言うと夫婦揃っての桑田さんファンだから、一度だけオープニング映像だけ観たことがある。そんな妻に昨夜、私が簡単な状況説明だけして第15回を見て貰った。結果は号泣である。そして「観て良かった」と。
毎日連続して観なくても楽しめるように作られて当然なのが朝ドラだ。だから、多少の引き延ばしや行ったり来たりは許容範囲。しかし、たった1回、15分間だけでその作品の世界観を理解させ、感動までさせる朝ドラが近年あったろうか。1回15分間の完成度の高さ、それをこの第16回でも堪能したい…
1カット目は、まるで子供のような笑顔のみね子のアップ
さて、前回のジェットコースター風ストーリーを冒頭でどう振り返るのかと思いきや、今回も福岡利武氏らしいサクッとした編集で、頭はオープニング映像から。これが正しい。いくら素晴らしくても前回は前回。まだ第3週の本作は、物語を前へ前へ進めるべきなのだ。
で、今回も情景カット無しにファーストカットは、みね子(有村架純)の笑顔。それも、ブランコを漕いでまるで子供のような笑顔のみね子。これが朝ドラ。 「何か、何かなぁ」なんて苦虫を噛み潰したような顔は朝ドラの1カット目には似合わない。
腹黒く見えるやり口を「政治」とは上手く言ったものだ
さて、物語は想像以上の速さとテンポの良さで、「手作り聖火リレー」の実施までの過程が描かれる。前回以上にノリノリで準備を進める青年団の連中に、ちょっと面食らって置いてけぼり状態のみね子、時子(佐久間由衣)、三男(泉澤祐希)の3人に、またあの男、団長で三男の兄・太郎(尾上寛之)が上手いことを言う。
太郎「これが、政治ってもんだ。分がったが?」
語り「あまり分かりたくは…ないですね。はい」
どうにか成功させようとする青年団の、純な高校生たちにはちょっと腹黒く見えるやり口を「政治」とは上手く言ったものだ。だから、教育的に増田明美さんの「語り」がNHKらしくフォロー。こう言う小さな「語り」が、本作がドラマであることを再認識させてくれて、リフレッシュした気持ちで先を楽しめるって技だ。
視聴者に深呼吸をさせる演出的な "間" が情景カット
そして、次の学校のシーンの1カット目は学校の全景カット。と言う事は、演出的にここは一気に畳み掛けるってことだ。要は「これから学校での出来事を描きますからお見逃しなく」と言う意味で、視聴者に深呼吸をさせるような演出的な “間”と考えたら良い。 テンポが良過ぎるのは疲れる元だから。
予想通りに、化学教師の藤井先生(原扶貴子)のトーチ製作、体育教師の木脇先生(増田明美)の走者の指導を、3人の語り→回想の順番で、ここは敢えての箇条書き風に編集して、担任の田神先生(津田寛治)で落とす「三段オチ」で笑いを取る。この箇条書きを活かすための「情景カット」と「政治」だったのが終わると分かる。
また、昭和39年当時に「マイ鉢巻き」と言う言い方が存在したかは定かでないが、「映画会社」の台詞1つであの架空映画のポスターが思い出されるし、情景カットで始まった学校のくだりを締め括るシーンとしては悪くなかった。
描かれるべきは、聖火リレーが村人たちに何を齎すか
そして、放送開始5分後には、聖火リレー大会当日(昭和39年10月4日/日曜日)。コースや距離やルール、「政治」によってどれだけの資金調達が出来たのかとか、そう言う大会の詳細部分は描かれずに始まった聖火リレー大会。
これまでの連ドラだと、その過程を描いてヒロインや登場人物の苦労などを悲喜交々として描いて “感動の押し付け” をしてしまうのだが、前回の感想のあとがきに書いた通り、本作のスタッフたちはドラマの基本を心得ているのだ。従って、描くべきこととそうでないことの区別も心得ている。
ここで描かれるべきは、団長の許可が下りたあとのヒロインや村人たちの苦労でなく、開催された聖火リレー大会が村人たち各人に何を齎(もたら)すかなのだ。
↓↓↓ここから追記↓↓↓
息子を呼ぶ声の変化で、複雑な母の心情を丁寧に描写する
いよいよ始まる聖火リレー大会。余程「政治」が上手く行ったのか、青い空に天高く号砲花火が鳴り響く盛大さ。まずは、前回でアンカー候補だった三男(泉澤祐希)がトップランナーで走り出す。
きよ「三男、大丈夫か?腹減ってねえか?」
三男「うん」
きよ「頑張んだぞ!しっかりやれ!」
三男「ありがとう!」
きよ「三男、頑張れ~!」
征雄「三男~!」
きよ「三男~!三男… 三男~!」
三男の母・きよ(柴田理恵)と父・征雄(朝倉伸二)が三男に声援を送る。きよの「三男」の呼び方が、時に心強く、時にか細くなることで、愛する息子を東京に送り出す複雑な母親の心情を丁寧に描写していく…。
聖火リレー大会が三男に齎らしたものは…
沿道の声援の中、三男の二段階の台詞が脚本のスゴイところ。まずは、少しか弱い声のモノローグ、続いて力を込めた叫びで、聖火リレー大会が三男に齎らしたものを教えてくれる。
三男(M)「ありがとう、奥茨城村…。俺を忘れねえでくれ」
× × ×
三男「俺を忘れねえでくれ!奥茨城村!
ありがとう!ありがとう!」
そして、「頼みます!」「おう、任せとけ!」と「興野弘」と言う村の青年に聖火がバトンタッチされる。言わずもがな、聖火と奥茨城村を村民たちに託した三男。実に、清々しい男の涙を見た…
↑↑↑ここまで追記↑↑↑
時子の "奥茨城村愛" がこの台詞と一緒にみね子へ
その意味で、東京で女優になる夢を持つ時子に、時子の兄・豊作(渋谷謙人)からトーチが手渡させた場面は印象的だ。そして、時子は走り出す…。東京へ、女優への夢へ踏み出す力強い第一歩を…
時子「大好きだ、奥茨城村!」
NHKの取材カメラにカメラ目線で笑顔を振り撒いたあとに、真剣な面持ちで言うこの台詞。そう、この聖火リレー大会が時子に齎したのは、より一層深まった “奥茨城村愛” なのだ。そして、時子がトーチをみね子に渡す時、時子の “奥茨城村愛” がこの台詞と一緒にみね子に渡されるのだ。
時 子「奥茨城村を…
うちの父ちゃんや母ちゃんをよろしくね!」
みね子「うん、分がった!」
みね子は、自分が奥茨城村に生きている証を手に入れた
アンカーのみね子が走り出すと、沿道の声援が一層大きくなる。しかし、ここまで流れていた音楽がまず止まる。その大歓声も約30秒でフェード・アウトする。ただただ走るみね子の横顔は無音。この無音は、ここからの聖火リレーが、みね子の葛藤を描くと言う印だ。その映像は、みね子が下手(画面左)に向かって走っている。
普通、登場人物が下手方向に進む(目線を向ける)時は、敗北や絶望を表す。しかし、その一方で上手(画面右)向きが表す「上昇志向」や「逆らう力」の逆で、「当たり前」や「自然な流れ」の意味を持たせることもある。今回のみね子は後者の意味合いだ。
だから、必然的にみね子の最大の関心事である父・実(沢村一樹)の回想に繋がっている。そして回想シーンを振り返り(ここで、振り返りが活用される)、このリレーがみね子に齎したものが、彼女のモノローグで語られる。
みね子(M)「お父さん…。みね子は走ってます。
お父さんのこと…
お父ちゃんのこと考えながら走ってます。
気持ちは届きますか?
お父ちゃん、みね子はここにいます」
みね子は、今、自分が奥茨城村に生きていると言う証を手に入れたのだ。そして、いつまでも父を案することを再確認したのだ。みね子の父親が行方不明なのを村民全員が知っている訳ではないのに、なぜゴールであれほどに盛り上がるのか少々解せない部分もあるのだが、そんなことを感じさせないのが本作の素晴らしさだ。
『昭和とりっぷ』の投稿写真が素晴らしかった
そして、本編が終わった後、毎回付録のように放送される『昭和とりっぷ』の投稿写真が、茨城県の荷見誠さんによる昭和39年の「村のみんなで開催!里美村聖火リレー」だと言い粋な計らい。最後の最後まで手抜き無しの15分間だった。
あとがき
まさか、聖火リレー大会が1日15分間で終わるとは思いませんでした。でも、しっかりと見応えある作品に仕上がってました。上に書いた “少々解せない部分もあるのだが、そんなことを感じさせないのが本作の素晴らしさ” ですが…
敢えて言うなら、「虚構の中の真実」の魅せ方がお見事だってことです。言い換えると、「嘘」と「誠」の紡ぎ方が絶妙だってこと。「嘘」があるのがドラマであって、感情移入できるドラマはその「嘘」が「誠」に見える作品なんです。
前回で書いた、「物語の先の展開は読めていても、登場人物一人一人を丁寧に描き、その登場人物ならではの台詞で物語を丁寧に紡いでいけば、いくらでもドラマは面白くなる」と同様に、「嘘」が「誠」に見える作品を作ることも、ドラマ制作の基本。やはり、このスタッフに任せておけば良さそうです。
最後になりますが、前回の感想に、数々のコメントや189回ものWeb拍手を頂き、ありがとうございます。そして、昭和39年に大都市東京が東京オリンピック開催で大盛り上がりの中で、茨城の小さな村でこんな素敵なイベントが開催された「誠」を教えてくれた本作に感謝です。引き続き、本作を応援していきましょう。
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【これまでの感想】
第1週『お父ちゃんが帰ってくる!』
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6
第2週『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』
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第3週『明日(あす)に向かって走れ!』
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