ひよっこ (第13回・4/17) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『ひよっこ』(公式)
第3週『明日(あす)に向かって走れ!』『第13回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
東京から戻った美代子(木村佳乃)は、みね子(有村架純)に実(沢村一樹)が行方不明であることを打ち明ける。不安が的中し、動揺するみね子。自分が大人だったら一緒に行ってあげられたとたまらない気持ちになるが、正月には帰ると言っていた実を信じて待つと約束する。翌日、いつもより明るく振る舞うみね子に気付いた時子(佐久間由衣)と三男(泉澤祐希)。事情を知って、聖火リレーをやめようかとみね子に聞くが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
美代子の「命の叫び」と温かな「語り」の化学反応で…
みんな、今日の感想文も長ぇよ(苦笑)
美代子「谷田部実と言う人間を探して下さいとお願いしてます!
ちゃんと…ちゃんと名前があります!」
いよいよ始まった第3週目。アバンタイトルは谷田部家や仲間たちの明るい場面をカットした、父・実(沢村一樹)が “蒸発人間” となってしまったあの悲しみ生きる希望のくだりのダイジェスト版だ。
美代子(木村佳乃)が警察官に放ったこの「命の叫び」と、増田明美さんの温かな「語り」が見事に化学反応を起こし、悲しい出来事なのに前向き気持ちになれる、そんな振り返りを創り出した。
演出が先週までの黒崎博氏から福岡利武氏へバトンタッチ
主題歌明け。先週までなら、1カット目は広い田園風景にトンビの鳴き声や風の音で始まるのに、今回は農作業をする祖父・茂(古谷一行)の引きのカット。うん、この僅かな違いが演出担当が先週までの黒崎博氏と、第3週の福岡利武氏の違いだ。
福岡氏は、風景のロングショットを挟まずに、茂が手を休めた瞬間に遠くの山から聞こえた狩猟の銃声で “深まる秋” を表現したのだ。『ごちそうさん』では演出を、『あさが来た』ではプロデューサーで、Eテレでは『バリバラ』の演出も担当している福岡氏らしいちょっとドキュメンタリー風な演出もあるかも。楽しみだ。
母子の悲しみを直接的に表現し、視聴者が唯一の目撃者に
美代子「東京の警察にもお願いした」
みね子「警察…」
美代子「手がかりは無がった。無がったんだ。
みね子「じゃ、お父ちゃんは…?」
美代子「分がんね。さっぱり分かんね。
どこさ行ってしまったのか、どうしていんのか、
全然分がんね。生きているのかどうかも分がんね。
あ…!ごめん、みね子。
お母ちゃん、ひどい言い方したね。ごめんね」
みね子「何で、お母ちゃんが謝んの?」
美代子「だって…」
みね子「お母ちゃん」
美代子「ん?」
みね子「1人で行ったの?東京」
美代子「んだよ」
みね子「怖かった?1人で怖かったんでしょ?
心細かったんじゃねえの?
私がもっと大人だったら一緒に行ってあげられたのに。
そしたら…」
美代子「みね子!大丈夫だよ、お母ちゃんは」
知らぬ間に夫への気持ちが高ぶって、自分の気持ちを言葉にぶつけていたことに気付いた瞬間に、みね子に対してもどうしようもない気持ちをぶつけたいた事に気付いた美代子が印象的なシーンだ。
本来なら、こんなに台詞を引用するのは邪道なのだが、この後、美代子がすすり泣きながら、「お父ちゃんのこと、信じて待ってみようと思う」と言い、みね子が美代子の両手を取り「話してくれてありがとう」と言った瞬間に、またみね子が成長した。そして、母と娘の絆が深まった。
超ストレートな悲しみの台詞を並べて、更に2人のアップの切り替えしだけで、朝ドラお約束の覗き見や立ち聞きを排除し、母子の、家族の悲しみを直接的に表現したことで、視聴者だけがこの場面の目撃者となった。こう言う演出が知らぬ間に登場人物たちへの共感、共鳴に繋がるのだ。
心の整理をするみね子の過程を、友情の会話劇で魅せた
そして、場面は変わって翌朝の屋外へ。ここも全景カットは入らず、1人佇む時子(佐久間由衣)の画に、まず、牛の鳴き声、みね子の声、自転車のベルの順番で音先行で、一皮剥けた明るいみね子の登場を飾る。
続いてバスの中。車掌の次郎(松尾諭)と楽しく「幸せなら手を叩こう」を歌うみね子に時子と三男(泉澤祐希)が話し掛ける。
時 子「どうしたも、こうしたもない!」
みね子「何よ?」
時 子「何かあったんでしょ?言いなさい」
みね子「何で?」
時 子「何でってね」
みね子「明るくしてたでしょうよ、私」
三 男「明る過ぎだ。不自然だわ」
時 子「何があったの?」
みね子「だって…。明るくしてないとさ」
時 子「ん?」
みね子「してないとさ。おかしくなりそうだから」
ついに、みね子が父・実の真実を親友に話す。このシーンでは悲しみを直接表現する台詞はなくて、3人の友情を描きながら、みね子が時子と三男との会話を通して、自身の心を整理整頓していく様子が描かれた。感情の変化の過程を、一見ぶっきらぼうな友だちとの会話を通して丁寧に優しく描いた秀逸な場面だ。
直接、間接、反対の3種類の会話劇で、悲しみを描く
さて、物語は事情が事情のみね子を絡めてまで、聖火リレーは出来ないと言う話へ。
みね子「いづもと変わんなくしてなきゃいけねえんだよ。
“やめる” なんつったらお母ちゃん悲しい顔するよ」
しかし、計画続行を願い出るみね子。そんな気持ちを汲む時子と三男。この教室での会話も巧みに構成されている。冒頭では、母と娘の悲しい台詞だけで悲しみを表現し、次のバス車内では親友を心配する台詞で悲しみを描き、この場面では明るく前向きな台詞でみね子の悲しみを描く。
いずれも、ヒロインの悲しみを表現しているのだが、直接、間接、反対の言葉を用いた3種類の会話劇で、悲しみを魅せたのだ。
15分間のメリハリと緩急の付け方の完成度が高い
その上、寂しいだけでなく、明るさと楽しさと青春の希望と高校生の恋の味までもをきちんと添えて、視聴者にこの時のみね子の気持ちにそっと寄り添わせようとし、それがきちんと成功している。このメリハリと緩急の付け方の完成度は相当に高いと言わざるを得ない。
教室での最後、時子がみね子をハグするが、あの時子のハグこそが、視聴者がみね子にしてあげたいことになっていたのではではないだろうか。こう言うテレビの中と外の一体感は朝ドラでは久しぶりの感覚だ。そして、みね子の「羨ましかっぺ?」の一言で生まれたほんわか空気感。これはスゴイと言うしかない。
ここぞの場面で使った情景カットが、実に効果的だ
そして、今回初の情景カット。まだ高い夕日が林の木々に隠れていく…。流れる雲はゆっくりと下手(画面左)に流れて行くから、何となく寂しくて後ろ向きな映像表現になっているが、その直後の玄関から顔を覗かせるみね子は、上手(画面右)向きでやや顔を上げて大きく1つだけ深呼吸。
今日もいろいろあったけど、何とか前向きに過ごしたぞと言わんばかりの満面の笑みを受け止めるのが、夕日に照らされた茂と言う構成。農作業する茂で始まり収穫を終えた茂で締める。登場人物の無駄遣い無しの構成だ。
1週間単位で話は書かない岡田恵和氏の脚本が成功してる
夕景を見上げるみね子の背中は少しだけ丸まっているような。そんなみね子を見て、茂が優しく声を掛ける…
茂「大丈夫が?本当に」
みね子「任せとけって」
夜の谷田部家では、姉弟3人が人形劇『ひょっこりひょうたん島』のテレビに合わせて主題歌「ひょっこりひょうたん島」を仲良く歌うシーンだ。これまでの朝ドラなら『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』は先週のサブタイトルだから、歌も避けそうだが、これも1週間単位で話は書かないと言った岡田恵和氏の脚本の成功例だ。
あとがき
教室でガリ版印刷をする3人に、みね子の届くはずのない父・実に宛てた手紙の文面のようなモノローグが入りましたね。一種の決意表明みたいな感じでした。週の始めにきちんと物語が前進していくことをしっかりと提示したように思います。
今日で13回の放送が済みました。これまでの朝ドラでは、この位の好調さだと逆にこの先は大丈夫か心配になるところですが、どうやら本作のスタッフは大丈夫そうで一安心です。次回にも期待します。
最後になりますが、前回の感想に、数々のコメントや172回ものWeb拍手を頂き、ありがとうございます。3桁となると、流石に嬉しさだけでなく、期待感も感じてしまい、ちょっと緊張します。でも、これからも自分の目線で書いていきます。引き続きよろしくお願いします。
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