ひよっこ (第9回・4/12) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『ひよっこ』(公式)
第2週『泣くのはいやだ、笑っちゃおう』『第9回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
みね子(有村架純)たちは聖火リレーの計画を立てるため、高校の先生たちに奥茨城村の歴史やトーチの作り方などを取材する。一方、美代子(木村佳乃)は、実(沢村一樹)への手紙が届かなかったことが気になって、東京の宿舎に電話をかけてみる。荷物も置いたまま突然いなくなったと言う管理人の言葉にショックを受ける美代子。そのころ、叔父の宗男(峯田和伸)と学校帰りに出会ったみね子は、どことなく違和感を感じていた。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
2色のフラフープで時代を表現した演出と撮影に拍手
上手いなぁ。何がって、前回書かなかったのだが、折角今回のアバンタイトルで描かれたから書くが、美代子(木村佳乃)と茂(古谷一行)が2人で「どうしたんだっぺ、お父ちゃん…」と言ってる後ろに、黄色とピンク色のフラフープが柱に掛けてあるところ。フラフープが無かったら、普通の田舎の風景になっちゃう。
もちろん、冒頭の郵便局からの配達証明の書式を見れば、大凡の時代は分かるが、「まだ間に合います」の第9話だから、アバンタイトルだけを見て、時代を表現するのは、視聴者に優しいし、映像的にもあそこに色があることで、全体のバランスが良くなる。正に一石二鳥。細かいところだが、演出と撮影に拍手だ。
暫くは奥茨城でのみね子の青春を描くことが見えて来る
みね子「ほら、私はずっと奥茨城で生きていぐ訳なので」
こう言うのも視聴者に優しい。視聴者の多くが、既に本作がヒロインが東京に集団就職する物語であることは知っているから、一部の視聴者には「進行が遅い」との印象を与えていると聞く。しかし、このみね子(有村架純)の台詞1つで、暫くは「奥茨城編」として、奥茨城でのみね子の青春を描くことが見えて来る。
その台詞をより印象付けるために、その直後に田神(津田寛治)に「アジャバー」と「ガチョーン」を言わせた。更に、このカットでも昭和30~40年代であることを今度は台詞で表現。で、この台詞があるから、演出と撮影が学校の廊下でのミディアムショット(腰から上が映る)の狭い画角でも時代が分かるって判断した訳だ。
増田明美さん、体育教師・木脇先生役で丁寧に登場
そして、みね子→時子(佐久間由衣)→三男(泉澤祐希)と順に村の歴史や聖火リレーのことを調べるくだりで、ついに増田明美さんが木脇先生と言う体育教師役で登場。いや、軽快に走って登場した。そう言えば、予告編でチラッとあったっけ。昭和39年元旦生まれの53歳に見えない走りっぷりに同世代としては完全に脱帽。
それに、走りながら話すお芝居もとても上手くて驚いてしまった。その上、自身の出番が終わって姿が見切れたところで、今度は「語り」の声のトーンで「大変、失礼しました」と一言。増田さん、丁寧過ぎる。それに、脚本も楽し過ぎる。こう言う遊び心を、第2週でさらりと入れてくるのは大したものだ。
"帰路のコスモス畑のシーン" の仕掛けを勝手に解説
画面下半分を鮮やかなコスモス畑で占めた、みね子と時子の帰路途中の明るく楽しい風景に、朝から心が洗われた気分。2人は上手(かみて:画面右)向きで “前向き” な心情を描きつつ、次第に画面下半分のコスモスの面積が小さくなって行くに連れて、会話も悩みになって行くと言う演出の仕掛け。
で、このままカメラが上手に行きっ放しだと、映像の印象が暗くなるから、カットを変えて歩く2人を真正面から捉える。2人は両手に荷物を持ち、敢えて手をつなぐみたいな行動はしない。こうすることで、単純に2人の友情だけでなく、画面には映らない三男との関係も見える。こう言う脚本と演出のマッチが本作の見所だ。
物語が全部繋がってるし、画面にいない人も物語に参加
妹・ちよ子(宮原和)が姉に口止め料をせしめるくだりも実にいい。前回でのちよ子の「順番で大人になんの。次は私が大人の話に入る番」と言う台詞が、ここで効いてくる。
こう言うのがまともなドラマ、脚本なのだ。これまでの物語が全部繋がってる。画面に映る人物だけでなく、映らない人物もしっかりと物語に参加している。最後に、見事口止め料(品か)を獲得したちよ子を茂が「いいなぁ」と軽く褒め称えてるのが、ほんわかさせてくれた…
ピアノの音色と足踏み脱穀機の稲こき作業の音の融合
そして11分過ぎ。いよいよ視聴者も心配になってる父・実(沢村一樹)の失踪事件のくだりだ。場面は、気が重たい夜から何となく気分も天気も晴れない朝になるが、背後の静かなピアノ曲の劇番はずっと同じ。ピアノの音色と足踏み脱穀機の稲こき作業の音が見事に混ざり合って1つの音楽のように聞こえてくる。
茂の心配げな表情と積み重なっていく麦のカットバックも緊張感をそそる。そして、音楽が止まるタイミングで、「荷物も置いたまま突然いなくなった」と言う管理人の言葉。いい感じだ…
"みね子と宗男が出会うシーン" の仕掛けを勝手に解説
その直後から、今度は不穏な音楽。ここのカット割りも上手い。最初の自転車で走るみね子は軽快に上手方向に走る。ってことは、まだ明るく前向きってこと。次に登場する叔父の宗男(峯田和伸)は下手(画面左)方向だから、内心に何かを抱えてるってこと。だから、ちゃんとみね子は宗男にどことなく違和感を感じてる。
次がポイント。バイクで走り去る宗男を目で追うみね子のカットで、みね子の顔の向きだけ下手になる。そして目線が上手からゆっくり下手向きになる。ここが、みね子の違和感のピーク。その瞬間にカラスが飛んできて、みね子の表情が後ろに隠れ、ラストカットでもみね子の顔は映らぬまま終わる…
これで、十分に次回への期待感が高まるって仕掛け。それも、失踪事件に宗男も絡んで、少しずつ話が大きくなる予感さえ与えてる。これって終盤の約4分間で、物語の中心人物を美代子に持って行かれないようにしているのでは?だって終盤の4分間の方がドラマチックだから、きっとヒロインに配慮したに違いない。見事だ。
あとがき
月曜日は父の実がメイン、今回は美代子がメイン、でも、火曜日がみね子メインの展開だったから、きちんとヒロイン中心に描かれている印象がありますね。この辺が、前々作や前作と違うところ。
それに中盤までの、みね子と時子と三男の聖火リレーと言うの上手に活用して、卒業や就職や友情を描きつつ、これが “青春のあかし” だと言わんばかりに丁寧に描かれていると思います。ヒロインとその他の登場人物のバランス、今のまま保って欲しいです…
また、前回の感想に、数々のコメントや94回ものWeb拍手を頂き、ありがとうございます。物語にメリハリがついてきましたね。私このまま見守ります…
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