べっぴんさん (第111回・2/14) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第20週『旅立ちのとき』『第111回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
すみれ(芳根京子)とさくら(井頭愛海)は、すみれの父・五十八(生瀬勝久)に長年仕えてきた忠一郎(曽我廼家文童)と女中の喜代(宮田圭子)が、「二人で旅に出よう」と話しこむのを耳にする。一方、良子(百田夏菜子)の息子・龍一(森永悠希)は「世界中を旅したい」という夢をあきらめきれず、一度は父親の勝二(田中要次)に激怒されたものの、再度自分の思いを訴える。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
時間軸を巻き戻すと、"今さら感" が半端無い
ついに、時間軸を巻き戻したか!? 確かに時計を戻して描く演出技法はあるが、基本的にやるべきでない。なぜなら、せっかく話が前に進んでいるのに、逆行するのは描き忘れの印象を与えて、面白みが無くなるからだ。しかし、本作は今回のアバンタイトルでそれをやった。だから、“今さら感” が半端無いのだ。
これは、五十八(生瀬勝久)の死を軽視した脚本がいけない。五十八の病状を聞きつけて親族が集まった辺り、喜代(宮田圭子)との初恋の後に、今日の “巻き戻し” 部分を入れておけば、今回ではさらりと回想で済ませられ、違和感だけは拭えたはず。あー、もったいない。
喜代と忠一郎が「世界一周旅行」で合意する過程が不自然
さて、本編。忠一郎(曽我廼家文童)が若者の「日本人初の一人ヨットで太平洋横断」の記事を読んで、蓄えを注ぎ込んで「世界一周旅行」と言う発想に至るのも違和感があるし、喜代がはな(菅野美穂)に会いたいと願うのは「死にたい」と言っているようにも聞こえ、その2人が合意して…うーん、意味が分からない。
喜代は、戦後に入った時点で退場させるべきだった
以前に “喜代は本作の唯一の良心” だと書いた。しかし、物語上はどうだろう。いつもの言い方をすれば、忠一郎はともかく喜代は脇役の脇役だ。しかし、主人公直属、直下の脇役。物語の上では、すみれの “母親はなの代わり” と言うよりも、本来はすみれ(芳根京子)がやるべき家事や子育てをやってしまった脇役だ。
喜代がいたせいで、すみれに家事や子育てのシーンが無いとも言えるのだ。だから、本当は物語が戦後に入った時点、「キアリス」が動き出した時点で、喜代は退場させるべきだったのだ。
喜代がいなければ、すみれを母親らしく描けたはず
喜代が早めに退場すれば、すみれが忙しい仕事と家事や育児を両立させる “働く母” を映像化できたに違いない。しかし、こう言う主人公から見て直接的な脇役の退場劇はきちんと描くべき。描けば、物語に深みも出るし、メリハリも付くし、何より物語が前進していることを印象付けられる。
だからこそ思うのだ。特に忠一郎との関係(初恋)をもとに、死別でなく2人一緒での退場劇を描くなら、猶更、戦後に入った時点で挿入するべきだった。そうすれば、何度も書くが、すみれが家事と子育てをせざるを得なかったし、すみれが母親らしく描かれたのだ。
明らかに「男会」と「さくらの乱」は不要だった
喜代の一件で、さらっと一か月の時間経過をしたのだから、その間に龍一(森永悠希)の一件を先に始末しておけば良いものを、これまたダラダラと。龍一こそ主人公にとって脇役の脇役の、それも視聴者にとっては大した思い入れも無い登場人物の退場劇を、「型紙切ってる時のお母ちゃんが 一番好きや」って…
アルバイトが功を奏したと言うことだろうが、型紙を切ってる姿を見て「世界中を旅したい」という夢が諦められない、と言うのも腑に落ちない。更に、龍一の演説に拍手喝采する忠一郎と言う流れも、もう見ていられない程の強引さ。喜代らの発言に口を挟むさくらも全く必要なし。結局、全員が自分勝手にしているだけ。
やはり、このように「夢」「人生」「責任」「常識」を登場人物に語らせる退場劇を最初から想定していたのなら、明らかに「男会」と「さくらの乱」は不要だった。そして、その空いた尺を、戦後に入った時点で忠一郎と喜代の退場劇と、すみれとさくらの親子関係、そして「キアリス」の物語に割り当てるべきだった…
そうすれば、ここまで物語が崩壊することは無かった。
既に「さくらの乱」から本作のエピローグは始まっていた
今回のラスト2分間を見て分かったことがある。それは、「さくらの乱」が本作全体のエピローグの始まりだったってこと。五月(久保田紗友)、二郎(林遣都)、すず(江波杏子)の、そしてさくら(井頭愛海)自身の退場劇の始まりでもあったのだ。
そう考えると、今年に入ってから既にエピローグが始まっていたことになる。だとしたら、既に「キアリス」もエピローグ状態に入っていると考えるのが妥当。そうならば、主人公も「キアリス」もまともに描かぬまま、脇役たちの退場劇に入った、と言うことになる。
今更だが、再婚して出産した悦子(滝裕可里)の子どもはもちろんのこと、本当は4人のクローバーたちが子だくさんで、大切な子どもたちのために “お嬢様な肝っ玉母さん” たちの起業ドラマに仕立てた方が、朝ドラらしくて良かったかも?正に、時既に遅しだが…
あとがき
今回は、不可解なことが多過ぎました。私の解釈が偏ってるのもあるとは思いますが…
● 忠さんと龍一の接点は?
● 役員の息子の道楽旅行の資金を使用人の蓄えから出す?
● ってことは、喜代さんの給料で忠さんは暮らす?
● 会ったばかりの人の墓を建てる話?
● 勝二と昭一はいつもいるけどキアリスの従業員に?
● それに、忠さんと喜代さんはキアリスで意思表示する必要ある?
● 忠さん、転んでるような足腰で船旅は大丈夫?
そして、今回の15分間で最大の疑問は、
● 今回って感動の巻ってこと?
● 忠さんと喜代さんと龍ちゃんを応援したらいいの?
● このまま、最終回まで登場人物の退場劇を見せられるの?
今思えば、第1回から昨年の12月24日放送の第72回での靴職人の麻田茂男(市村正親)の退場劇までが、本編だったんですね。「麻田の存在=べっぴん」だから、当然と言えば当然ですが、問題は麻田の死後、すみれが「べっぴんさん」を口にしなくなったことでは無いかなと思います…
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坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
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【これまでの感想】
●“視聴率=作品の質”か? 「べっぴんさん」視聴率18%台と7日から大台割れ
●「べっぴんさん」初回“総合視聴率”は27% 新視聴率調査でテレビのおばさん化に影響を与えるか?
●べっぴんさん "お嬢様"を言い訳にし過ぎたり、各エピソードの"配分"の悪さが、ドラマに今一つのめり込めない原因か?
●「べっぴんさん(第43回・11/21)」を"紀夫の立場"で改めて考えてみた
●「べっぴんさん」2か月過ぎても、まだ本当の意味で "ドラマ" になってない!?
●「べっぴんさん」第50回まで描かれずに残念だったこと。そして、本作の課題と今後に期待すること
第1週『想(おも)いをこめた特別な品』
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第2週『しあわせの形』
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第3週『とにかく前に』
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第4週『四つ葉のクローバー』
19 20 21 22 23 24
第5週『お父さまの背中』
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第6週『笑顔をもう一度』
31 32
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第7週『未来』
37 38 39 40 41 42
第8週『止まったままの時計』
43
44 45 46 47 48
第9週『チャンス到来!』
49 50
51 52 53 54
第10週『商いの聖地へ』
55
56 57 58 59 60
第11週『やるべきこと』
61
62 63 64 65 66
第12週『やさしい贈りもの』
67
68 69 70 71 72
第13週『いつものように』
73 74 75
第14週『新春、想(おも)いあらたに』
76 77 78 79
第15週『さくら』
80 81 82 83 84 85
第16週『届かぬ心』
86
87 88 89 90 91
第17週『明日への旅』
92
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第18週『守るべきもの』
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第19週『希望』
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第20週『旅立ちのとき』
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