[読書] 生殖医療の衝撃 (石原 理/著・講談社) 感想

人類初の体外受精から約30年 今や第二次生殖革命前夜
著者の石原理氏は、学生・医師の教育と生殖医療の現場に携わる埼玉医科大学医学部産科婦人科教授。
内容は、試験管ベビー誕生から、最新の生殖医療までを大局的に見ながら、精子バンクや卵子の売買等の生殖医療ビジネスの問題を取り上げ、更に生殖と深く関わる男女の性の問題へと斬り込んでいく。そして、禁断の「ゲノム編集」や生命倫理にまで話は及ぶ。
1978年7月25日体外受精による子ども、ルイーズ・ブラウンさんが英国で誕生してから30余年。第二次生殖革命前夜とも言える生殖医療の最新事情を紹介しつつ、生殖医療ビジネスや生命倫理との相克などを鋭くレポートした本。
SF映画の凍結保存? 今や日本のこどもの約32人に1人
最近の日本では、既に体外受精などの生殖医療で生まれたこどもは24人に1人だそう。また、今や日本で生まれるこども(余剰胚=体外受精で得られた胚のうち移植されなかった)の約32人に1人は、未来で病気が治せる医療技術が進歩するまで、出生前に-196℃液体窒素タンクで凍結保存されていると言う事実。
本書でも「液体窒素と言うタイムマシン」と紹介されているこの「凍結保存」。SF映画ではお馴染だが、現代医療ではまだ解凍技術が完全に確立されていないそうだ。しかし、魚や動物では既に一部実用化されているとのこと。あとは人間に応用できるかのレベルらしい。
性同一性障害の人たちが家族を持ちたい=代理母が不可欠
第4章『男でもなく、女でもなく』と第5章『ある性同一性障害者の告白』は、最近当blogでも度々取り上げる『人間としてのQOL(人生の質)と LGBT関連』の問題に触れている。
本書では、「遺伝的性別」「性腺の性別」「みかけの性別」と言った様々な段階で、少数派の性を持つ人が意外に多いこと、そして、生物学的・医学的には男性と女性の境界がかなり曖昧であることが具体的に書かれている。
なぜ、生殖医療の本に40ページ近くも性同一性のことが書かれているかと言うと、性同一性障害者の人たちが家族を持ちたいと考えた時に一番に関係するのが代理母・代理出産と言う生殖医療の分野だから。
あとがき
生殖医療の現場に携わるのが著者の立場ですから、生殖医療に対する規制と言うよりも、積極的なガイドラインや法整備を望んでいるようです。確かに、宗教観の薄い多くの日本人に受け入れられやすい生命倫理観の知識の普及と意識の啓蒙が必要です。本書を、想像以上に進化し続ける「生命医療」の現状を知る一歩にして欲しいです。
また、第1章『「世界」を変えた3つの技術革新』中の男性の不妊症のくだりで、ダイヤモンド☆ユカイさんが自ら体験した精巣内精子採取術のことを、ユーモア交えて紹介してある本として、『タネナシ。』のことに触れていました。こう言う広い見分で生殖医療を考えなければいけないのですね。さっきポチッとしたので、読んでみます。
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ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー
いのちを“つくって"もいいですか?―生命科学のジレンマを考える哲学講義
マンガで学ぶ生命倫理: わたしたちに課せられた「いのち」の宿題
タネナシ。 ダイアモンド☆ユカイ (著)
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