べっぴんさん (第101回・2/2) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第18週『守るべきもの』『第101回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
すみれ(芳根京子)の夫・紀夫(永山絢斗)は、家出中の娘・さくら(井頭愛海)がジャズ喫茶「ヨーソロー」で働いていると知り、慌てて店に向かう。紀夫の姿を見て物陰に隠れるさくらだったが…。一方、オライオンを率いる潔(高良健吾)は、かつての盟友・栄輔(松下優也)から、業務提携の話を持ちかけられる。若者に大人気の「エイス」の集客力に魅力を感じる潔は…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
アバンの冒頭の「語り」に引っ掛かってしまった…
はな(N)「人には役目があります。
子どもとして、親として、夫として、妻として、
役目を全うするために人は生きているのです」
敢えて、アバンタイトルでの「語り」を書き起こしてみた。劇中では、この「語り」に続いて、栄輔(松下優也)にメリヤスを分けて貰えるように頼んだ五十八(生瀬勝久)への感謝の気持ちとして紀夫(永山絢斗)が「親言うのはありがたいものやな」と良い、すみれ(芳根京子)は「うん」とだけ答える。
この「語り」に違和感を覚えてしまった。本当に人間は役目を全うするために生きるのだろうか?これは人生観や宗教観に踏み込む次元だが、私は与えられた生(命)を全うするためにどう考え行動すれば良いのかを、生涯をかけて追求しもがき苦しみながら寿命を全うすると考えている。
すみれに「ありがとう」を言わせなくては意味が無い…
職場で自分の役目を全うするのは理解できる。しかし、職場で役目を全うするために生きると言うだろうか。家族の中で子育てとしての親や親の介護をする子としての役目を全うするのも理解はできるが、そのために生きると言う表現が合ってい無いような。
こう言う大袈裟な「語り」を入れても、中身を精査すれば、何を言わんとしているのか理解に苦しむだけ。それにこの「語り」に対しての映像が、結果的に父親は親としての役目を果たしたことに対して、実の娘が子どもとして心から「ありがとう」と言わせない脚本が、「人間には…」なんて偉そうなことを書いて欲しくない…
いつまで経っても栄輔の人物の "内面" が見えてこない
五月「前にママが言うてたんです。
人を蹴落とすだけやと、ここまでやって来られへん。
きっと、助けても来たはずやって」
神戸を出て大阪の栄輔(松下優也)に助けを乞うシーンで、五月(久保田紗友)が言う台詞だ。単なるすず(江波杏子)の想像なのだが、まあ成功の裏に努力ありってことだから大したことではないのだが、この台詞に玉井(土平ドンペイ)が大きく頷くカットが入った。と言うことは、そう言うことだってこと。
ここでまた視聴者に強引に栄輔の人生を想像して保管しろと言う訳だ。本来なら、栄輔が再登場する前に、いや再登場後でも良いから、栄輔が「エイス」を人気店にするまでの過程を描いて欲しかった。すずの想像と玉井の頷きだけで処理するから、いつまで経っても栄輔の人物の内面が見えてこない。
紀夫もすみれも、親の役目を全うしようとしてる?
紀夫が娘のさくら(井頭愛海)のアルバイト先のジャズ喫茶に乗り込んでいくシーンも違和感だらけ。16歳のさくらが午後6時過ぎまで働くのは法律的にどうこうと言うのでなく、さくらが通うお嬢様学校は相当厳しいと言う設定で無かったのか?なのに、ママに娘への伝言だけ頼んで帰っちゃうって?
帰宅した紀夫とすみれの会話にも落胆しかない。あんな下世話で治安の悪そうな酒を出す店でバイトをするのを容認しちゃったし、それ以前にゆり(蓮佛美沙子)家で三食寝床も世話になってる状態を積極的に解消しようともしない。
すみれの関心事は、栄輔、メリヤス、三番目がさくら?
先日のすみれの夜なべ作業で思い出したのは栄輔。もはや、すみれの関心事は、栄輔のあの「やっぱり、あなたは人の心がわからん人や」の言葉とメリヤスの肌触りであって、我が娘は三番目。そう言う親に育てられたから、さくらのような善悪や常識や礼儀のわからぬ子どもが生まれたのは納得できるが、それで良いのだろうか?
ここでこそ、脚本家は冒頭での「語り」が意味を持つような言動を紀夫とすみれにさせるべきでは?「思う通りにはいかないものやな」なんて、紀夫が父親と言う役目を全うしようとしているようには全く見えないし、頷くだけのすみれは、もっと見えないのも…
栄輔のメリヤス工場買収は、すみれたちへの嫌がらせ?
9分過ぎにやっとキアリス劇場。と思ったら、想像以上のとんとん拍子話で呆気にとられつつ拍子抜け。
相変わらずポケットに手を突っ込んで「キアリス」の店内に入って来た栄輔だが、突然ポケットから手を出してホテルマンの接客待機姿勢になって、久し振りに以前のキャラに戻った明美(谷村美月)がとんとん拍子にメリヤス交渉成立。「キアリス」の危機を救ってくれた栄輔に、すみれはいつものだんまりで対応。
と思いきや、店を出た栄輔を呼び止めてやっと御礼のご挨拶。このまま専務と言う役目を全うするためにも、専務らしく今後の取引のことでも進めたら良いのに、また「やっぱり、あなたは人の心がわからん人や」を引っ張りだして、「あれは、さくらのことですか?」と聞く始末。栄輔も「そうです」と即答。
意図が不明瞭な脚本や演出や演技が、多過ぎる
これ、雑過ぎないか。そもそも栄輔がさくらのことをどれだけ知っているのかの描写が無いのに、さくらの悩みをすべて知っているような言いまわしなのが。それに、直前のシーンで潔(高良健吾)が栄輔が突然姿を消した理由を、紀夫が帰還したからか?と問うたのと、いろいろ掛け過ぎ。
戦後まもなくの頃の栄輔のすみれへの気持ちと、現在のさくらを理解していないすみれへの気持ちをごちゃ混ぜに描いてるから、こうなってしまう。これでは、先日のメリヤス工場買収も、すみれ(たち)への嫌がらせのように映っているがそれで良いのか?とにかく意図が不明瞭な脚本や演出や演技が多過ぎる。
脚本や演出の意図と、実際の映像がここまで解離すると…
はな(N)「五十八さんは、すみれを思い、
親のありがたみを噛み締めながらすみれは、
娘のさくらに思いをはせるのでした」
この「語り」もホントおかしい。まず、言い回しとして、「すみれは、親のありがたみを噛み締めながら、娘のさくさに思いをはせるのでした」ではないだろうか。演出的には、確かに電話台を持って、唇を噛み締め、さくらの定位置の椅子を見ているが、果たして「語り」のように視聴者に映っているだろうか?
「語り」が無ければ、何となく元気のない具合の悪そうな父親・五十八の声に心配している娘のすみれにしか見えない。ここまで、脚本家や演出家の意図と、実際の映像が解離してしまうと、伝えようとするものは、もう伝わらないかもしれない。せめて、演出が頑張ってくれれば…と期待するしか無いような…
あとがき
残り2か月を切りましたが、いよいよ脚本側からの立て直しは厳しくなってきましたね。ここへ来て強引な「語り」で言いたいことを伝えてはいますが、映像が足りないし合っていないので、伝わりません。演技指導やイメージカットなどを更に工夫して、“それらしく” 見せて欲しいです…
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坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
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【これまでの感想】
●“視聴率=作品の質”か? 「べっぴんさん」視聴率18%台と7日から大台割れ
●「べっぴんさん」初回“総合視聴率”は27% 新視聴率調査でテレビのおばさん化に影響を与えるか?
●べっぴんさん "お嬢様"を言い訳にし過ぎたり、各エピソードの"配分"の悪さが、ドラマに今一つのめり込めない原因か?
●「べっぴんさん(第43回・11/21)」を"紀夫の立場"で改めて考えてみた
●「べっぴんさん」2か月過ぎても、まだ本当の意味で "ドラマ" になってない!?
●「べっぴんさん」第50回まで描かれずに残念だったこと。そして、本作の課題と今後に期待すること
第1週『想(おも)いをこめた特別な品』
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第2週『しあわせの形』
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第3週『とにかく前に』
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第4週『四つ葉のクローバー』
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第5週『お父さまの背中』
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第6週『笑顔をもう一度』
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第7週『未来』
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第8週『止まったままの時計』
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第9週『チャンス到来!』
49 50
51 52 53 54
第10週『商いの聖地へ』
55
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第11週『やるべきこと』
61
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第12週『やさしい贈りもの』
67
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第13週『いつものように』
73 74 75
第14週『新春、想(おも)いあらたに』
76 77 78 79
第15週『さくら』
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第16週『届かぬ心』
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第17週『明日への旅』
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第18週『守るべきもの』
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