べっぴんさん (第68回・12/20) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第12週『やさしい贈りもの』『第68回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
すみれ(芳根京子)は、キアリスを辞めて家事や子育てに専念していた。その頃、キアリスでは君枝(土村芳)が百貨店での打ち合わせに出るようになっていたが、クリスマス商戦に向けて目玉商品を用意するように言われ頭をかかえるのだった。明美(谷村美月)もベビー相談室の内容を文章にまとめる作業を任されていたが、文章の表現が固すぎると指摘されて悩み、すみれに相談にいくのだった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
すみれは "悩んでる紀夫" に何かしたのか?
今朝のアバンタイトルも不可思議なことばかり。
すみれ「紀夫さん、これ良かったらお昼に食べて下さい」
普通なら、スーッと通り過ぎてしまうセリフだが、もう引っ掛かってしまう。結局、これまでは喜代(宮田圭子)が紀夫の弁当を作っていたことが明確になった。そして、すみれの口調。これは高級旅館に泊まった時に女中さんや女将さんが、出発するお客様に手作り弁当のサービスをしているような言い回し。
一見丁寧で気が利くように聞こえるが、夫に対しての言葉としては “超” が付く程に他人行儀。この台詞によって、以前に「語り」で言っていた “紀夫が悩んでいることを知った” と言う部分に、すみれが一切手を付けていないことまで見えてしまった。
紀夫「すみれ、まだ言うて無かったな。ありがとう」
この紀夫(永山絢斗)では、結局紀夫の悩みって妻が夫を、娘を、家を蔑ろにして仕事に熱中していたことに見えてしまった。そして、あのすみれの笑みとはしゃぎようからしても、紀夫の悩みはすみれの退社で解決したように映ってる。戦地から帰還した時の紀夫の苦悩が、完全に履き替えられている。ダメだこりゃ。
専業主婦になったすみれが、保育所に行く感覚が怖い
主題歌明けの、すみれの世間知らずと自己チューな言動に頭が痛くなる。さくらが通いたいからと平気な顔で保育所に連れていく感覚が、お嬢様だとしたらホント嫌な感じ。シスターに「年内まで」と言われて、お願いしちゃう意味がわからない。さくらは友だちとでなく、母と一緒に居たいのでは?そう思ってるのは私だけか。
キアリスを辞めたすみれに "役割" を与えてどうする?
明美(谷村美月)が書いたキアリスガイドを夫トリオの2人がけなすシーン。あれ、微笑ましくて笑うシーンなのだろうか。私には心無い男たちの愚弄行為で、これまた朝から感じの悪い描写にしか見えないのだが。
そして、このようなシーンで、これまで一切描かなかったすみれの “役割” を作り出そうと言う脚本家のセンスを疑わざるを得ない。これホントおかしいよ。
こう言う流れにしたのだったら、ここですみれがやるべきは、明美に代わって筆を執るのでなく、「教えて欲しいんや」と言った明美に対して、「何とか教えてあげよう」と言う友人への優しさや配慮ではないのか?
確か、「ベビーショップあさや」の開店準備の頃は、まだ4人が協働し、すみれも仲間たちにそれなりの “思いやり” を持って接していた。しかし、ある頃から毎度書いている “ヒロイン特権” の発動によって、4人もキアリスも “すみれの一声” で方向が決まってしまうようになった。これで、面白いはずがない。
このヒロインには "思いやり” や "優しさ" が見えない
個人的には、ゆり(蓮佛美沙子)のくだりなんてどうでも良いのだが、気になるのは、ゆりがすみれに相談せずに喜代(宮田圭子)の病床へ行ったことだ
。本作のヒロインは夫の心身がボロボロなことには気づいたと何度も「語り」が言っていた。しかし、「気付いた」ことも見えないし、気付いた結果すみれが紀夫に何かをしたかと考えれば何もしていないのが事実。そう、このヒロインには “思いやり” や “優しさ” が無いのだ。
だから、紀夫もゆりも悩みを自分自身で抱え込む。そして、それに気付いても何もしてもらえない。こんなヒロインに、興味がわいたり共感できるはずがない。
全て "語り" で物語を進め、感情も表現してしまう脚本
この脚本家は「語り」で「気付いた」とか「感じた」を多用する。今日は14分過ぎに紀夫に対しても使っていた。彼女は、内面を台詞やト書きで描かずに、「語り」で描いているのだ。そんないい加減で手抜きな方法で書かれた脚本を手にしたら、演出家も俳優もやる気をなくすの当然ではないだろうか?
一生懸命に脚本の行間をも読み、台詞に込められた登場人物の思いを演技や映像で見せようとしているのに、すべて「語り」で言われてしまってはやる気が出ない。ほら、子供の頃これから宿題をやろうと思った時に、親から「出来ないなら、手伝ってあげるから」と言われるようなもの。
ヒロインが友達になりたくない人間に映っているのが問題
そりゃあ、表情を作るのも嫌になるだろうし、面倒だから照明は逆光で良いやってなるのもわかる。どうして、すみれの “思いやり” や “優しさ” をここまで徹底して描かないのだろう?いや、脚本家は描いているつもりだ。だって「語り」がそれを物語ってる。書いているつもりなのだ。
でも、実際にテレビに映っているすみれは、自己チューで身勝手で相手の気持ちに寄り添わない、友だちにはなりたくない人間に映ってる。間違っても一緒に酒を酌み交わしたいなんて思わない。そのことを脚本家が見えていないうちは、見たい作品になるのは期待薄に違いない。
あとがき
まだ、『まれ』と『とと姉ちゃん』のヒロインの方が、強烈で好みが分かれる程度の悪さはあったものの一定の “人間味” がありましたよ。すみれは、見た目も言動も心を感じないお人形さんみたい。まずは、お人形さんに “思いやり” や “優しさ” を吹き込むところからやり直さないといけないですね。
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
★本家の記事のURL →
http://director.blog.shinobi.jp/Entry/9291/
★FC2ブログへトラックバックが送信できない方は、
http://dmesen.seesaa.net/article/445073512.html でも受付けております。
【これまでの感想】
●“視聴率=作品の質”か? 「べっぴんさん」視聴率18%台と7日から大台割れ
●「べっぴんさん」初回“総合視聴率”は27% 新視聴率調査でテレビのおばさん化に影響を与えるか?
●べっぴんさん "お嬢様"を言い訳にし過ぎたり、各エピソードの"配分"の悪さが、ドラマに今一つのめり込めない原因か?
●「べっぴんさん(第43回・11/21)」を"紀夫の立場"で改めて考えてみた
●「べっぴんさん」2か月過ぎても、まだ本当の意味で "ドラマ" になってない!?
●「べっぴんさん」第50回まで描かれずに残念だったこと。そして、本作の課題と今後に期待すること
第1週『想(おも)いをこめた特別な品』
1 2 3 4 5 6
第2週『しあわせの形』
7 8 9 10 11 12
第3週『とにかく前に』
13 14 15 16 17 18
第4週『四つ葉のクローバー』
19 20 21 22 23 24
第5週『お父さまの背中』
25 26 27 28 29 30
第6週『笑顔をもう一度』
31 32
33 34 35 36
第7週『未来』
37 38 39 40 41 42
第8週『止まったままの時計』
43
44 45 46 47 48
第9週『チャンス到来!』
49 50
51 52 53 54
第10週『商いの聖地へ』
55
56 57 58 59 60
第11週『やるべきこと』
61
62 63 64 65 66
第12週『やさしい贈りもの』
67
- 関連記事