逃げるは恥だが役に立つ (第9話・2016/12/6) 感想

逃げるは恥だが役に立つ

TBS系・火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』公式
第9話『あの人に好きだよと言われる3日前』の感想。
なお、原作:海野つなみ氏の漫画『逃げるは恥だが役に立つ』は未読。


みくり(新垣結衣)を迎えに行ったものの擦れ違いになり、そのまま仕事に忙殺されていた津崎(星野源)。数日後にようやく再会し、どちらからともなくハグをする。早速、契約内容の見直しを言い出した津崎に対し、みくりは彼が自分のことを好きなのかどうか分からず困惑。津崎もまた、みくりの本意がつかみきれずにいた。一方、会社の危機を知った沼田(古田新太)は、リストラ候補を探るため、社員の調査をしていて…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---

まえがき

第6話の感想に「164」、第7話の感想に「133」、そして、前回の第8話の感想には「153」、『「逃げ恥」第8話の感想で書いた "秀逸な演出" をわかりやすく図解しました』にも「96」ものWeb拍手を頂き(執筆時)、本当にありがとうございます。

今回は、前回の東京と館山でのすれ違いで「ハグ」が出来なった2人のその後の物語であり、全11話のドラマとしては、最も大切な最終章に向けての「起承転結」の「転」のお話。本作の感想としては、ちょっと辛口な部分もありますが、それも贅沢な要望です。今回も長文になりますが、最後まで読んで頂ければ幸いです。

前回の演出は、みくりと平匡の心の変化を魅せた

冒頭の前回の振り返りから、みくり(新垣結衣)が1人で朝食を食べながらモノローグで語るシーンの音楽の選択と使い方の違いから、第9話の演出担当が、第5話で公園でのハグと第8話でのすれ違いを絶妙なカット割りで心情描写を魅せた石井康晴氏から変わったことがわかる。(まあ、どうでも良いことだが)、

因みに、前回の石井氏の演出意図は、1時間の中でみくりと平匡が、どのような心理的な変化をしていくのかを魅せるドラマとして、2人の個性や特徴をこれでもかと言わんばかりに描いた。そんな心理描写のための絶妙なカット割りや編集だったのは、前回の記事で書いた通り。

今回の演出は、人間(特に女性)の大切な課題を軸にした

しかし、今回の演出意図は違う。2人の心理の変化よりも、「恋愛」「SEX」「結婚」「家事」「出産」と言った人間(特に女性)の大切な課題を軸にして、まずみくりと平匡(星野源)を描きつつ、百合(石田ゆり子)と風見(大谷亮平)の物語も描こうとした。実はテレビドラマとしては、こちらがオーソドックスな手法。

回りくどい言い方になったが、第9話の演出は第1,2,6,7話担当の本作のチーフディレクター金子文紀氏だ。すべての登場人物を上手に絡めつつ並行して描くオーソドックスな回があるから、2人に絞り込んだ回(演出)が光るってわけだ。(当然、普通にドラマを見る上では全く意識する必要のないことだが)

だから、今回はカット割りや編集と言うよりも、登場人物たちのちょっとした仕草や態度そのもので心理描写をやっている。映像的には面白味は若干少ないが、あの仕草、あの態度が1つ1つ視聴者の心に突き刺さり、共感を与え、感動を創り出す。そんな目線で第9話を観ると、また面白いはずだ。

会話が無くても、平匡のみくりへを大切に思う気持ちが…

例えば、「あの仕草」で言えば、序盤でソファーで先に眠ってしまったみくりの頭を、平匡が2度続けて撫でるシーンがある。1度目はぎこちなく、2度目は少し慣れた手つきで。平匡の表情も1度目は緊張しているが、2度目は穏やか。

会話が無くても、平匡のみくりへを大切に思う気持ちが確実に育っている。そんなことを手のひらと表情で見事に感じさせた。

職業欄に「主婦」と書くみくりの表情が切なすぎる

そして、今回が人間(特に女性)の大切な課題を軸にしていることが明瞭になるのが、7分頃のイベント会場でのみくりと百合の会話。

「傍から見れば私は無職なんだろうか?」

とアンケート調査の職業欄に「主婦」と書く時のみくりの何とも言えぬ表情が切なすぎる。いろんな思いが複雑に絡み合った大切なシーンだ。

言葉と表情で刻々と変化していく2人の感情が見えてくる

ここまで書いて、まだアバンタイトルなんだから、どれだけ面白さが詰め込まれているんだってことなのだが…。平匡は、お楽しみや大切なものは取っておいて好きな時にと言う意味で「ハグの貯金」を提案するが、みくりはそれを「私は常備薬ですか?」と聞き返すシーンがある。

その後の平匡の「システムの再構築が必要です」に対して怪訝な顔で応えるみくりのシーンも同様なのだが、言葉と表情で刻々と変化していく2人の感情が見えてくるのが素晴らしい。

安恵の存在感が、みくりの心を大きく動かした

今回の脚本にも良いところはたくさんあるが、1時間の構成として上手だなと思ったのが、丁度1/4が過ぎた頃の「八百安」でのみくりと安恵(真野恵里菜)の会話の位置。実は、親世代の登場人物以外で、「結婚」「家事」「出産」を経験しているのは安恵だけ。

その安恵が「彼氏、面倒くさ」と言って、みくりは「なし崩しでここまで来ちゃった」と愚痴をこぼす。ここが良い。

前述した通りにこの第9話は「転」だ。だから、これまで視聴者の誰もが心のどこかで感じていた、平匡が恋愛をこじらせたただの面倒くさい男であるのでは?ってことと、みくりと平匡の関係が実はただのなし崩し的な関係では?と言う部分を、本人が理解していることをちゃんと描いてケジメをつけたのが良かった。

百合と風見の物語に入る前に、みくりと平匡の現状に一区切りをつけ、更に安恵の言葉でみくりに「主婦」の価値を改めさせて、『開運!なんでも鑑定団』のパロディー形式で自問自答させたのもグッドタイミング。平匡のリストラ話で少し暗くなってる雰囲気としっかりメリハリがついた

脚本上での『BAR 山』の使い方も巧み

脚本上での『BAR 山』の使い方も巧みだ。まず、23分頃の『BAR 山』は、いつもの百合が気を紛らわす格好の場所として登場。しかし、今回は少し違う。風見の「深い喜びを知りたかったですか?」と言う残酷な質問で、アラフォー処女・百合の核心を突いたり…

「誰かが知っていることを誰かは知らなくて、そうやって世界は回ってる」
「時に知らない世界を教え合ってる」

この百合と風見の台詞のやり取りもすごく良い。劇中のみくりと平匡のことを言ってるのは当然だが、みくり&平匡と視聴者の関係も、こうしてドラマを見ては当blogを読んでいる視聴者同士のことも言い当てているではないか。本当に上手く出来てる。

『開運!なんでも鑑定団』も水墨画のセンスも良すぎる

お約束の番組のパロディーは、本作と同じ毎週火曜日に放送している『開運!なんでも鑑定団』を大胆にチョイス。更に、今回は平匡の妄想も、丁寧に楽しく盛り込まれ、平匡の価値を「0円」にするオチ。上手いよなあ。水墨画のセンスも良すぎるし。

自由に生きる。美しくなる。

ドラマが始まって丁度30分。田島(岡田浩暉)のナイスアシストから、百合の物語が本格始動。百合の仕事への拘りと、ゴダールの商品テーマである「自由に生きる。美しくなる。」を自ら体現している百合の生き様もカッコいい。

ロボットに嫉妬、そして今度は見知らぬ女に嫉妬…

第2話で、平匡の職場で同僚たちが、実は平匡の嫁は実在しないと言う結論にたどり着いたのに、平匡が「三次元です。言葉も喋ります」と反論する際に、沼田(古田新太)が「ペッパー君?」と問い質すと、平匡が「ペッパー君じゃないです。生身の人間です」と切り返した、あのシーンでの台詞以来の登場がペッパー君。

自分の居場所や価値を知っている百合とは対照的な今のみくりを表現するのに、ペッパー君を第2話ぶりに持ち出してきたは、グッドアイデア。ペッパー君相手に本気で張り合ってるのもおかしいし、みくりのハグに目を赤くして反応したペッパー君の方が無表情の平匡より表現力豊かって感じも面白い。

ロボットに嫉妬、そして今度は見知らぬ女に嫉妬。いよいよ、みくりの心が動き出すって感じを上手く醸し出してる。

カッコよく生きようする気持ちと孤独さが、"涙"に

2度目の『BAR 山』は、なんと看板と表だけ。いつものように百合が気晴らしに入店しないって構成が新鮮。第8話の終盤で、車を運転しながら風見に「あなたが思っているより、ずーっと遠くに行けるのよ」と言ったカッコよく生きようする気持ちと孤独さが、第9話でついに “涙” と言う目に見えるものになった瞬間…

周囲の目から百合の涙を隠すように、風見が両手で壁ドン。うーん、今回はガツンと見せて余韻を引っ張らずに、次のシーンへ繋げるケースが多い。テンポが良いのは良いとして、もう少し余韻も欲しいような…。この件については「あとがき」で…

一切のモノローグを断って、両人の台詞と演技だけで…

これまでも、本作における「モノローグの秀逸さ」は何度も語ってきた。特に、第6話(演出は今回と同じ金子文紀氏)のモノローグは素晴らしいと書いた。

しかし、終盤でクッションを口に押し当て「平匡のバカヤロー」とみくりがついに本音をぶちまけ、スッキリしたことにして夕飯の支度を始めるカットから、この脚本と演出の素晴らしさが始まる。

ここまでは、本当のみくりを知らない平匡と、本当の平匡を知らないみくりの、両方の心の声をすべて知ってる視聴者を “秀逸なモノローグ” で妄想させてきた。でも、ここからは一切のモノローグを断って、両人の台詞と演技だけでお互いの気持ちが同じだってことを見事に描いた。

そして、これまでのすべての台詞とモノローグが繋がって、みくりと平匡と視聴者を一体化させた脚本と演出。もはや、テレビの中の恋愛はテレビの中だけの存在では無くなったのだ。やはりこれも、「モノローグの秀逸さ」と言って良いだろう。

本編から予告への演出もお見事

終盤の終盤では、ハグと “頭なでなで” が朝まで続くような余韻を引っ張りながら、会社のリストラ話まで1曲を引っ張って、もう一波乱する予感を与えるためにBGMをストップして、間髪を入れずに『恋』が流れるあたりの音楽演出もお見事。リストラ話から『恋』だと予告編で見せ過ぎな印象になるから。うまいなあ。

あとがき

今回、正に「転」になってましたね。これまでの「起承」の部分は、「お互いの “好き” を確認するまでの時間」だったってことですね。言い換えると、「好きです」と言うまでの時間が愛を育てる。郷ひろみさんの『よろしく哀愁』にこんな歌詞があります。

♪会えない時間が 愛育てるのさ♪

第8話と第9話のみくりと平匡は、この歌詞のように会えない時間があったから、自分の気持ちを確かめ、相手の気持ちも知りたくなり、結果的に愛が育まれました。もう恋愛なんてだいぶ昔のことで忘れかけていましたが、恋愛ってこう言うものなんだと思い出させてもらいました。まっ、幸せのお裾分けってことですね。

突然ですが、『逃げるは恥だが役に立つ』はハンガリーの諺で、「自分の戦う場所を選べ」という意味だそう。「自分に合った仕事をしろ」とか「自分に合った場所を探せ」ってことでしょうか。このタイトルを深読みすると、残りの2話と、みくりと平匡が今後どうなるか余計に気になりますね。

最後に一言。次回と最終回を15分延長にしたなら、この第9話も15分延長して欲しかったです。これだけ百合を描けば、どうしてもみくりの部分が減ってしまいますし、1シーンずつの余韻もたっぷり取れなくなります。15分拡大したら、もっと見応えのある「転」になったのでは?と言うことを言いたかったのです。

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【これまでの感想】
天晴! 『逃げ恥』のスタッフ!! 「恋ダンス」は「みくりの妄想ミュージカル」だったとは!!!
『逃げ恥』予告編の新垣結衣さんのセーラー服姿に2度ビックリ!! 9年前の『パパムス』再来か?
『逃げ恥』スタッフ再び天晴!! 「ハートのつり革」の粋な演出!!!
「逃げ恥」第8話の感想で書いた "秀逸な演出" をわかりやすく図解しました

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話

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