「べっぴんさん」2か月過ぎても、まだ本当の意味で "ドラマ" になってない!? 3か月目からに期待!
"ドラマ" とは "葛藤" を描くこと
映画学校時代の演出の授業で、「ドラマとは葛藤を描くこと」と、よく教わった。では、葛藤とは何か?「葛藤」とは、いくつかの選択肢の中から自分(登場人物)はどれを選ぶか悩むこと。そして、悩むことは「対立」を創り出す。例えば、登場人物Aは前進することを選択し、登場人物Bは後退することを選ぶみたいな対立。
"対立" は、物語を動かす強力なエネルギーになる
その「対立」は、物語を動かす強力なエネルギー源となる。なぜなら、「対立」が出来ると、観客はどちらかの「味方」になろうと思うから。「応援したい」とか「それ、わかる」みたいな感情だ。それが、登場人物への「共感」に繋がっていく。
人生の選択で "葛藤した登場人物だけ" に共感していく
当blogにも、多くの「本作にのめり込めない」とか、「ヒロインの言動が理解できない」とのコメントを頂くが、それは私が考えるに、本作の “ヒロイン・すみれに、そもそも葛藤が無いから” が原因だと思っている。では、具体的に「葛藤」とはどう描かれるのかと言うと…
「悩む姿」として映像化される。それが登場人物の「苦悩」「葛藤」として目に見えるのだ。もちろん、単純に頭を抱えるとか考えにふけるではダメ。ここで言う「葛藤」は、登場人物の将来や未来を変えるであろう「人生の帰路」「人生の選択」でなければならない。そんな大きな決断だけが、登場人物への「共感」を徐々に増していく。
すみれ以外で、人生の葛藤が描かれたのは…
では、本作のどの登場人物に「悩む姿」があっただろうか?私の記憶の中で「葛藤」と言えるのは…
すみれ( 芳根京子)の母・はな(菅野美穂)は、死期が迫る時に夫・五十八(生瀬勝久)に子供たちを託す「苦渋の姿」があった。また、潔(高良健吾)の父・正蔵(名倉潤)が息子を坂東家に婿に出す時も「苦衷を察する」ことが出来た。
すみれは、人生の岐路の選択で "悩んでる姿" がない
他にはどうだろう?戦前、戦中、戦後での出来事は、登場人物全員に平等に降り掛かった不幸や苦労や悲しみだから、これは一括りにまとめるとすると、肝心の本作のヒロイン・すみれに「葛藤」はあっただろうか。敢えて言うなら、幼少期での父の靴を分解して怒られた時に初めて自己主張をした時か。
それ以外は、例えば、母が亡くなった時も、結婚が決まった時も、生活のために仕事を始めると決意する時も、4つのクローバーが固まる時も、夫・紀夫(永山絢斗)が戦地から帰還した時も、店の売り上げが思わしくない時も、大した「悩む姿」は描かれていない。もちろん、栄輔(松下優也)に惚れられた時も…
悩みの無い人を羨むことはあっても、共感は難しい
悩まない登場人物に感情移入や共感が出来るだろうか?だって、悩みはドラマの中の登場人物だけの特別なものではない。観客は常に小さな悩みを抱え、思いもよらぬ場面で人生の岐路での大きな決断を迫られたり、結婚や出産、家を買う、車を買う、親の介護、自身や家族の健康問題など、意外と「人生の選択」の場面は多い。
それを、本作のすみれは「やっているように描かれていない=やっていない」ことになる。悩みの無い人を羨むことはあっても、一緒にご飯を食べたいと思うだろか?
あなたは、すみれと一緒にご飯を食べ酒を飲みたいか?
突然に話が逸れたようになったが、視点を変えて考えてみる。私は良く、友人と映画やテレビドラマはの登場人物の話をする時に、「その登場人物と一緒にご飯を食べたいか?」「お酒を飲みたいか?」と訪ねることがある。
すると、多くの返答が「あの主人公と、一度朝まで酒を酌み交わして話してみたい」とか、「面白そうだから、○○ちゃんと□くんと一緒にご飯を食べてみたい」なんて声を聞く。
そう、これが「共感」の証だ。決して相手の悩みを解決してやろうと言うのではなく、悩みを「共有」することで、親近感が涌き、「共感」することで応援したいと言う気持ちになる。
すみれたちお嬢様が葛藤し苦悩し成長していくしかない
長々と書いたから、ぼちぼち結論へ進もう。
すみれの設定はご存知の通り超が付く程のお嬢様。また、女学校時代の友人の良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)もお嬢様。それ故に、まず基本設定の部分で、3人の「やや世間知らずな言動」がちょっとイライラする。
更に、『べっぴんさん』視聴者の中で超セレブな人は限られるから、すみれ周辺の境遇を見ても「私も同じ」なんて思う人は少ないはず。
そんな住む世界が違うようなお嬢様なヒロイン・すみれが、前述の「葛藤」もなく、家族や周囲の人の支えで、何となく成功への道をたまに2段、3段飛ばしで駆け上がって行くサクセスストーリーに興味を抱けと言うのが無理なこと。
もっと、すみれたちお嬢様が葛藤し苦悩しながら成長していくストーリーに仕立て直さないと、益々「坂東営業部」の話に「キアリス」も「すみれ」も飲み込まれ、20周年を迎える後半までもたないのでは?と心配だ。
あとがき
「キアリス」では、明美(谷村美月)だけが “庶民の出 ” と言う設定になっています。実は、史実での『ファミリア』の4人の創業者は全員お嬢様育ちの方々。明美のモデルであろう大ヶ瀬久子さんは、神戸市で活躍した外国人専門のベビーナースで、坂野惇子に欧米の育児法を教えた人。
ファミリアの誕生は大ヶ瀬先生なしでは語ることができませんが、創業者4人には含まれません。と言うことは、脚本家がすみれたちを成長させるために、敢えて史実と変えたと信じたいし、願いたいです。
是非ともこれからの明美や栄輔の活躍で、今後の展開に大きな影響を与えて、お嬢様ヒロインと「キアリス」が成長・成功していく物語にならなければ意味がありません。そして、その時こそが、本作が本当の “ドラマ” になった時だと思います。従って、明美と栄輔に期待をしてみようと思います。
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【これまでの感想】
第1週『想(おも)いをこめた特別な品』
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第2週『しあわせの形』
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“視聴率=作品の質”か? 「べっぴんさん」視聴率18%台と7日から大台割れ
9
「べっぴんさん」初回“総合視聴率”は27% 新視聴率調査でテレビのおばさん化に影響を与えるか?
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第3週『とにかく前に』
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第4週『四つ葉のクローバー』
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第5週『お父さまの背中』
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第6週『笑顔をもう一度』
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べっぴんさん "お嬢様"を言い訳にし過ぎたり、各エピソードの"配分"の悪さが、ドラマに今一つのめり込めない原因か?
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第7週『未来』
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第8週『止まったままの時計』
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「べっぴんさん(第43回・11/21)」を"紀夫の立場"で改めて考えてみた
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