逃げるは恥だが役に立つ (第5話・2016/11/8) 感想

TBS系・火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(公式)
第5話『ハグの日始めました!』の感想。
なお、原作:海野つなみ氏の漫画『逃げるは恥だが役に立つ』は未読。
みくり(新垣結衣)は津崎(星野源)に「恋人になってほしい」と申し出る。心の壁を取り払おうと考えた末の提案だったが、恋愛方面に自信のない津崎は困惑するばかり。そんなある朝、出勤中の百合(石田ゆり子)は、風見(大谷亮平)に忘れ物を届けるみくりを目撃。2人が不倫関係にあると誤解し、風見に詰め寄る。風見からそのことを聞いた津崎は、百合の疑いを晴らすため、みくりの‘恋人’の提案を受け入れることにする。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
何と言う偶然! 同時刻にNHKで政見放送が放送中だった
昨夜は仕事で、25分ほど過ぎてからタイムシフト視聴をしなければいけなかったのだが…。22:25にテレビを点けたら、NHKで『栃木県知事候補者 経歴・政見放送』が放送中だった。千葉都民の私は「へえ」なんて思って、本作の追いかけ再生をしたら…
なんと、みくり(新垣結衣)が「家事労働党」の「恋人候補」なんて洒落た設定で、NHKと同じ画面構成で映っており、一緒に観ていた妻と爆笑してしまった。当然スタッフが狙ったわけではないのだが、こう言う偶然の面白ささえ創り出してしまうのは、やはり本作が “テレビの神様” に好かれている証拠に違いない。
私が、本作のどの辺に感激と感服するのか?
さて、今回も、最後の1秒まで楽しませる意気込みと丁寧さに感激と感服の1時間だった。そこで今回は、どの辺を見て私が感激と感服するのか書いてみる。本作のテレビドラマとして優れている部分はたくさんあるのだが、その1つに「個性的なカット割り」と、それに対応する「俳優さんの演技力」がある。
僅か24秒に11カットの"個性的なカット割り"
例えば、序盤の6分頃、津崎(星野源)が会社で沼田(古田新太)と日野(藤井隆)にからかわれるシーン。細かいカット割りで3人の会話劇が暫く続いた後に、まんざらでもない津崎を斜め横からのアップで見せた後、突然みくりの「平匡さんが一番好きですけど」のインサートが1カット入る。
するとニヤけた津崎が真正面のアップになっていて、ふと我に返った瞬間に、、一瞬津崎の丸まった背中のカットが入る。そして津崎は机の下に顔を隠す。カメラも机の下から津崎を狙う。そこにモノローグは続きながら、また一瞬だけ津崎の丸まった背中のカットから机の下へ続く。
そして、冷静さを取り戻して津崎が顔を上げるカットは、最初と同じ真正面受けだがやや引いたサイズになっていて、更に津崎を左右からそれぞれ沼田と日野の反応を入れ込んだカット割りで正面で終了。この間、僅か24秒に、11カット。この細かなカット割りが、実に津崎の「思い込みの強さと慌てっぷり」を描いているのだ。
細かいカット割りでも、自然な流れを魅せる俳優の演技力
それを支えているのが、津崎を演じる星野源さんの演技に安定感。このシーンでは、星野さんは津崎が “とてもあたふたしている面白さ” を表現する訳だが、当然ながら撮影現場ではカメラの位置が変わる度にストップがかかり、時間が空いてまた次を撮影する。
こんな時に俳優さんに要求されるのが、そのシーン中の津崎の呼吸の乱れや表情の硬さや身体の震え具合をずっと一定に保つ芝居だ。激怒したり号泣するシーンは、その瞬間にピークを持ってくる芝居だから意外とやりやすいはず。しかし、本作の津崎はあまり感情を表に出さない。表情は抑えめでモノローグで語る。
だからこそ、ちょっとした筋肉の強張りとか背中での呼吸の具合を記憶しておいて、何度も同じように再生できないといけない。その難しい芝居をずっとやっているのが星野さん。もちろん、みくり役の新垣結衣さんも同じ。この芝居の技術力が、津崎とみくりに自然と感情移入できる理由だ。
是非とも見直して欲しい。撮影順が違うことやカットとカットの間に準備時間があることなど気がつかない程に、自然な流れになっているから。
公園でのハグのクライマックスは、「ニクイね」の一言
さて、今回の演出は、本作初担当で代表作は『花より男子シリーズ』や『クロサギ』石井康晴氏。これまでよりも小ネタは少なめだったが、先に書いたように絶妙なカット割りで魅せる登場人物の心情描写は、流石って感じ。特に良かったのが公園でのハグのシーン。もちろん、素晴らしい脚本があっての名シーンなのだが。
本作お得意の広い屋外でのロケで “ちまちました話” を描く面白さだ。地面の影の長さからかなりの早朝からのロケのように見受けるが、まず家族連れのエキストラを大量に配置して “ちまちま感” を表現。
そして途中でみくりが席を離れて、津崎の実家と元ヤンでみくりの親友・安恵(真野恵里菜)のシーンを割り込ませて、主人公以外の夫婦や家族を描くことで、今回で一番の実家のほのぼのシーンと離婚のシリアスシーンを並べて、津崎とみくりが「人生」を考えるくだりへ。
ここでは敢えてモノローグを一切排除して、「契約結婚」中の2人が “結婚感” を百合(石田ゆり子)に見せるために来た公園で、真剣に「離婚」を話題にすると言うナンセンスさとシリアスさの見事なバランス。そして、かなりいい雰囲気になったところで、百合を思い出し馬鹿馬鹿しい行動を再び起こす。
「罪悪感を2人で背負う」と言う、これまた感動的な台詞でクライマックスを更に盛り上げて、1分間以上のハグ。最初ロングショット(引いた画)で2人の全身を見せて、その後の台詞はみくりだけで進めて、カットはみくりと津崎は単純な切り返しだからこそ、じっくり頭をなでるところまで2人の演技で魅せた。ニクイね。
脚本、演出、俳優が見事に高次元で三位一体に
いやあ、凄いドラマだ。「恋愛感情」と言う目に見えないものを、論理的な言葉を使って登場人物たちに説明させながら、視聴者の感情に的確に訴える脚本。個性的なカット割りと独特なモノローグ(次回の感想で詳しく触れるつもり)で、シリアスとコミカルの絶妙なバランスを保つ演出。
そして、絶妙な配役と俳優さんたちの演技力。これらが見事に高次元で三位一体になっている。思えば第5話と言えば折り返し。この先どうなるか目が離せない。
あとがき
みくりと平匡が頭が良いと言う設定が、実に効果的に活かされていますね。感情を論理的に解釈して行動に移す。これが、本当に面白い。そして、すべてが計算尽くしなのに、最後はいつも行き当たりばったりで大成功って流れも好きです。次回にも大いに期待します。
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