べっぴんさん "お嬢様"を言い訳にし過ぎたり、各エピソードの"配分"の悪さが、ドラマに今一つのめり込めない原因か?
ただただ"何か"が、物足りない…
もう第6週目に入っているのに、どうしても本作に入り込めない、ヒロインを応援したくならない、そう思わせる “何か” ある。決して、朝ドラや連ドラとして楽しくないと言うのではない。また、前作のようにいいとこ探しをしなくても見つからないわけでもない。ただ、“何か” が物足りないのだ。
紆余曲折はあれど、ヒロインはドンと構えて動かない…
例えば、第3週から漸くヒロインが仕事を始めるんだと期待したら、売り場は麻田が頼まれてもいないのに提供し、材料の生地や歯切れは潔や栄輔が家来のように調達。さあて商売だと言うのに値付けを忘れるような天然ぶり。
まあ、でもそんな朝ドラらしい都合の良い周囲の援助とレール敷きのお陰で、案の定順調に行くかと思いきや、戦地から帰還した夫の一声で仲良しクローバー4人が仲間割れ。「お嬢様でござる」と言わんばかりに無責任に君枝と良子が仕事を辞めてしまう。
そんなクローバー危機でもお嬢様育ちなヒロインは、ドンと構えて動かない。だって、お嬢様友だちに言いにくいことは雑草育ちの明美が代弁してくれるから。このように紆余曲折は確かにあるが、ヒロインが葛藤しているように見えるかと言えば、そうは見えない時の方が多いのは得策ではない。
4人は、やりたいことをやりたいようにやっているだけ
さて、すみれの一人娘のさくらはどうしてる?…と思いきや、育児と家事はすべて女中の喜代任せだから、夜なべ仕事も早朝出勤も思いのまま。4人が2人になっても健気に徹夜作業で裁縫をしていたが、これは商売。納期を守るのは至極当然のことをしてるだけなのだ。そう。すみれは至極当然のことをしているだけ。
君枝と良子が身勝手なだけのこと。そんなすみれを含めた4人を、本作では如何にも健気で落ち着いたように見せてはいるが、よーく考えれば、好きなことを敷かれたレールの上でとんとん拍子にやっているようにしか見えない。要は、4人は、やりたいことをやりたいようにやっているだけ。
"高級"と"お嬢様"が、ドラマすべての言い訳に…
さて、本作を、宮内庁御用達の高級子供服「ファミリア」のブランドイメージや、ヒロインたちの「お嬢様」イメージに影響されて、いつもの世話しなく展開していく朝ドラとは違う雰囲気として、楽しんでいる人もいるはずだ。
しかし、良くも悪くも「高級」「お嬢様」が、ドラマすべての言い訳になっている今の状況よりも、手芸を仕事に商売にするなら店舗の確保や仕入れの苦労、商品選択や製造過程や値付けの難しさなどを単純に見たいと思うのが普通。だって、子育ても仕事も奮闘し頑張る姿を見せてきたのが、今までの朝ドラのヒロインだから。
でも、本作のヒロインは、好きで上手な裁縫をしていると、まるで磁石に吸い付いてくるように、売り場もお客も周囲の援助やお膳立てで成功してしまう。これでは、ヒロインへの共感もを応援したくなる気持ちも湧き難いのは当然だろう。
「新型の朝ドラヒロイン」の内面を見せて欲しい
では、本作の脚本以前の段階、プロットの部分でヒロインを応援したくならない要素はあるだろうか。例えば、ヒロインが戦後の混乱期なのに恵まれ過ぎた環境の上に、更に周囲の人たちに頼り過ぎと言うのは、好印象にはちょっと遠い。
また、そんなヒロインが葛藤する姿を描いて視聴者の共感を得ようとする作戦として、君枝と良子を無責任で身勝手な人間に仕立てているのも、気分が良いとは言いにくい。「お嬢様=学習能力が無くて身勝手で無責任」と言う図式が、既に出来上がりつつあるのも問題。
いくら、強い自己主張はしなくてもリーダー的存在と言う “新型の朝ドラヒロイン” とは言っても、もう少し台詞や表情で内面を見せて欲しいし、商品が売れたり願いが叶ったなら喜んで欲しい。そして、観ながらも観終わっても、元気になるような気持ちの良いドラマにしてほしい。
あとがき
この「新型の朝ドラヒロイン」の活躍を中心に、こののんびりとして優雅な時間と物語にゆったりと楽しんでいる視聴者と、進んでは一時停止して周囲の好意とお膳立てで少しずつ成功に向かっている、やや他力本願で依存体質が強いお嬢様たちを応援できない視聴者の二極化しているのでしょうか。
やはり、良くも悪くも「高級」「お嬢様」が、視聴者へのドラマすべての言い訳になっているのが原因でしょうね。だから好意的に解釈できる人は楽しめますが、一度何かに引っ掛かってしまうと馴染みにくい。各登場人物たちを描く放送尺の配分もよくありません。無駄と思える部分が長くて、観たい部分が無いとか。
それに盛り上げるためでしょうが、無理矢理に人間関係を荒立ててるのも、一部の登場人物たちのイメージダウンになってしまっています。だから、多くの視聴者が物語や登場人物たちに、共感したり応援したりしたくなるようなドラマになっているかどうか。むしろ、イライラやモヤモヤが増すばかりな部分も多い。
以前にも書きましたが、史実があまりドラマチックで無いので、脚本であれこれ創意工夫をしてドラマチックにしているであろう部分が逆目に働いて、全体のバランスが崩れて、登場人物たちの考えや感情が見え難くなってる感じもします。どうか、一日が元気になるような朝ドラを期待します。
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第1週『想(おも)いをこめた特別な品』
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第2週『しあわせの形』
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“視聴率=作品の質”か? 「べっぴんさん」視聴率18%台と7日から大台割れ
9
「べっぴんさん」初回“総合視聴率”は27% 新視聴率調査でテレビのおばさん化に影響を与えるか?
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第3週『とにかく前に』
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第4週『四つ葉のクローバー』
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第5週『お父さまの背中』
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第6週『笑顔をもう一度』
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