べっぴんさん (第31回・11/7) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第6週『笑顔をもう一度』『第31回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)が抜けた中、睡眠時間を削って黙々とテーブルクロスを縫い続けるすみれ(芳根京子)と明美(谷村美月)。一方、君枝は戦地から帰ってきた夫の昭一(平岡祐太)に、仕事のことを言い出せないままでいた。テーブルクロスの完成が心配になった君枝と良子は、「少しだけなら手伝えるかも」と店に行くが、明美はそんな二人の覚悟を問い直し…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
オープニング映像が好き そして実に興味深い作品
今さらだが、本作のオープニング映像が好きだ。前作もなかなか良かったのだが、本作の映像は実に刺繍やパッチワークや花をあしらった明るい背景に、正面向きと下手(画面右向)きの全身白色を纏ったすみれ(芳根京子)が元気よく歩く。
タイトル映像のデザインをまとめたのは、ドラマ『アルジャーノンに花束を』等のポスタービジュアルデザインを担当した清川あさみ氏。
アニメーション担当は、『おはなしの花(Bloomed Words)』で注目された創作短編アニメで有名な久保亜美香氏。細部のデザイン担当は、劇中に登場する刺繍の原案(あのタペストリーもそう)をデザインしている谷口聖子氏。主題歌は、Mr.Childrenの『ヒカリノアトリエ』。
オープニング映像のすみれは「何処へ」向かうのか?
やはり本作で印象的なのは、ヒロインが躓いたりする時以外は下手(画面右向)きに歩くこと。『サザエさん』のエンディングを例にするとわかりやすいのだが、テーマ曲に乗ってリズミカルにあるくサザエさんたちは画面の上手(右側)から下手(左側)の小屋に入っていくのを思い出せるだろうか。
基本的に、様々な葛藤の中で生きてきた主人公が安らぎの場所を得て帰っていくのは下手(左側)方向なのだ。だから、逆に、これから様々な葛藤や困難に立ち向かい目標に向かっていく時は上手(右向き)向きに進むのが普通。と言うことは、オープニング中のすみれは「何処へ」向かっているのか?
『ルパン三世カリオストロの城』のエンディングでも、クラリス姫が手を振るのも、ルパンたちも安らぎの場所(この場合は次の現場になるが)に行くのは下手側。要は、下手側はエンディング向けの方向なのだ。しかし、本作ではオープニングに使用している。
全体をまとめる新ヒロイン像 "すみれはチームの司令塔"
すみれのスキップみたいな感じで、飛び跳ねながら歩くのも可愛いのだが、あれが上手向きだったら、未来に向かっている若い頃のすみれと解釈が可能だが、下手向きに歩いているから不思議な世界観になる。そうなのだ、本作は特にヒロインすみれの描写が不思議な世界観を持っているのだ。
何となく世間とは違った世界観を戦前からずっと保っているのがすみれ。そこが非現実的にも見えるし、ファンタジーにも見える。明るく美しい映像の中にいるのに、どこか影があるミステリアスなヒロイン。
そして、これまでのヒロインのように自ら得点を稼いでチームに貢献し自らを誇示するストライカーのようなタイプで無く、チームの司令塔的に全体をまとめていく新たなヒロイン。そんな新しい朝ドラのヒロイン像が、このオープニング映像のヒロインから読み取れる。そう言う視点で本作をもう一度観るのも楽しいかもしれない。
"描いていない"ように見せてる、演出と編集を改善すべき
すみれ「請けた以上はやらんと。信用に関わるから」
ほら、ここでもちゃんとすみれは良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)の抜けた穴を埋めようと、諦めかけている明美(谷村美月)に発破を掛けていた。ただ、こう言う「仕事の掟」的なことを、先週の父・五十八(生瀬勝久)とのやり取りから、すみれが学んでいたら…と悔やまれる。
好意的に解釈すれば、先日の大阪での五十八らのエピソードで学んだのだが、映像がゆり(蓮佛美沙子)と潔(高良健吾)に対しての “生きた教育” にしか私には映らなかったから、すみれの言ってることもやってることも何一つ間違いないのだが、「仕事の掟」を学んだのも取って付けたように見えてしまうのがホント残念。
夜なべ仕事も、朝のカットだけ。喜代(宮田圭子)の「変わりませんね。子供の頃から」に対しても、幼少期の回想の1カットでもあれば、が印象付けできたのに…。要は描いていないのではないのだ。演出や編集が描いていないように見せてしまっているのだ。ここは、早急に改善するべき。絶対に印象が変わるはずだから。
しっかり"すみれの仕事"として描いくことが大事では?
しかし、次の場面では唐突にすみれと明美の夜なべ作業の映像が入る。“やらんと” の映像化で決して悪くないが、やはり先の自宅での夜なべのシーンと「あさや」でのシーンがセットで的確な相乗効果を生むわけで、それをしないから、「明美も意外といい人。頑張ったし」の印象の方が強めに出ちゃう。
終盤にも夜なべ作業のシーンが入るのだから、ここはしっかりと「すみれの仕事」として描いておいた方が良かった。こんな夜なべ一つのシーンでも、ホント残念。
"未熟な司令塔"をもっと表情や仕草で魅せて欲しい
テーブルクロスの完成が心配になった君枝と良子が、「少しだけなら手伝えるかも」と店に行くシーンで、明美が二人の覚悟を問い直した上で、自分が看護師を辞めたことを打ち明けるのも実にいい場面。仕事をしていた明美だから言える「責任」と言う言葉に打ちのめさせる君枝と良子。
そんな三人のやり取りに対して、明美を「言い過ぎ」と制するわけでもなく、君枝と美子に大きな理解を示すわけでもなく、ただ目の前の厳しい現実に佇むだけのすみれ、これが前述した “新しい朝ドラのヒロイン像” たる所以だ。
『あさが来た』のヒロインなら「さっさと決めなはれ」と決断を促すだろうし、『とと姉ちゃん』なら「一緒にやりましょう」と巻き込むはず。どっちもしない(できない)すみれは、云わば “未熟な司令塔” だ。その辺の部分をもう少し表情なりで見せても良いような。芳根京子さんが演じているのだから…
あとがき
君枝や美子の夫とのエピソードが、今後の4人の商売に大変重要な要素であることは容易に想像できます。だから描くなとは思いません。ただ、この度の「テーブルクロスの受注」に関しては、 君子 君枝と美子の苦悩は描いてもその他は、程ほどにして「仕事」「制作過程」を描いた方が良かったかも。
この月曜日を見ると、脚本よりも演出や編集の方に課題があるように思いました。1カット、表情一つで、「描いたつもり」と「描いた」の違いが出てしまうのです。でも、物語としては楽しめる方向に進んでいるのは間違いありません。
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坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
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