NHK「超入門!落語 THE MOVIE」 完璧なアテブリ芝居が生み出す不思議な臨場感

落語初心者向けの超真面目で遊び心満載の企画ドラマ
2016年3月に第1弾、7月に第2弾、そして10月19日からレギュラー放送となった『超入門!落語 THE MOVIE』(公式)なる番組をご存知だろうか。今回は、この番組を紹介してみる。
番組の主旨は、とかく「長い」「単調」「難しい」と言われがちな落語に、完璧な「アテブリ芝居」を被せたドラマ仕立ていしたら、落語初心者でも「面白くわかりやすい新たなエンタメ」になるのでは?と言う、超真面目で遊び心満載の企画ドラマと言ったら良いだろうか。
これまでも、落語の演目を題材にした映画などはあった
これまでも、落語の演目を題材にしたり、登場人物の設定を借りてきた映画やドラマはあった。古くは映画『幕末太陽傳』(川島雄三監督・フランキー堺主演/1957年)が主人公が落語『居残り佐平次』からの引用で、『品川心中』『三枚起請』『お見立て』などの噺が入ってた。
映画『やじきた道中 てれすこ』(平山秀幸監督・十八代目中村勘三郎主演/2007年)は、落語『東海道中膝栗毛』でお馴染みの弥次さん喜多さんの珍道中を映画化。 中村勘三郎さん、柄本明さん、小泉今日子さんのコメディ映画で、何れも落語口演の方が面白いが、映像作品としてはなかなか楽しめた。
徹底的に"声と唇の動きを合わせる"演技が最大の見所
しかし、本作は違う。要は、噺家の落語(語り)に合わせて、時代劇の中の再現役者の口が動くのだ。つまり、俳優はクチパクで、声を出さない(聞こえない)。ただこの説明では、「単なるアテブリ芝居」に思えるかもしれない。
しかし、本作のスゴイのは “声と唇の動きを合わせる” 所謂「リップシンク」に徹底的に拘ってる点。一見は江戸時代の「噺」を時代劇ドラマにしたようなのだが、声は1人の噺家で、演じるのは複数名だから、落語の登場人物たちが実際に話しているような不思議な臨場感が出るのだ。
"キャスティングと演出"に運命が懸かる企画
第2回(10/26)に放送されたのは「粗忽長屋」と「目黒のさんま」。
特に良かったのが「粗忽長屋」。無精でそそっかしい八五郎(神保悟志)は、身元不明の行き倒れの死体(脇知弘)を見て、似た者同士で兄弟同様に仲が良い親友の熊五郎(内山信二)だと早合点。熊五郎の家に押しかけてって「お前が死んでいる」と…こんな話で、神保悟志さんが、マメで粗忽(そそっかしい)八五郎を熱演していた。
実はこの企画、完全に俳優と演出で面白さが決まってしまうのだ。なぜなら、耳は落語口演で目は時代劇だから、まずかなり役と俳優のイメージがピッタリ合っていないと違和感を覚える。また、基本的に癖があり早口の落語口演の独特のテンポとスピードに、俳優の演技が完全にシンクロしないとつまらない。
何となく合っているレベルでは面白くないのだ。それに、演出も大事。特に噺家の演技(動作)がオチになっているような話だと、落語家の見せ場がない訳だから、元の落語を知っていると肩透かしを食らってしまう。とにかく、キャスティングと演出が運命のこの番組。実力派の俳優さんが出演してくれるかどうかに懸かってる。
【番組情報】
番組名:超入門!落語 THE MOVIE
放送局:NHK総合
放送日時:水曜 午後10時50分
再放送:金曜 午前1時25分(木曜深夜)
あとがき
初めて観た時は、かなりの衝撃でした。「俳優さんの演技力ってスゴイんだなあ」って。落語をあまり知らない人には、落語入門編として悪くないと思います。もちろん、本作をきっかけに本物の落語に興味を持ってほしいです。落語入門編のCDを下記に4つ紹介しました。名作を耳で味わってみて下さい。
次回(11/2)の見所は、柳家三三さんの落語「転失気」で小坊主を演じる鈴木福くん、林家たい平さんの落語「粗忽の釘」で女房役を演じる田中美里さん。何せ、林家たい平さんの男性の声と田中美里さんの女性がどうマッチするか。今から楽しみです。
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