べっぴんさん (第24回・10/29) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第4週『四つ葉のクローバー』『第24回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
すみれ(芳根京子)は、女学校時代の友人の良子(百田夏菜子)・君枝(土村芳)と看護婦の明美(谷村美月)と共に4人で知恵を出し合い、子供の着心地を一番に考えた「べっぴん」作りを開始する。お店の象徴となるマークを四つ葉のクローバーに決め、靴屋の麻田(市村正親)のお店の一角を借りて「ベビーショップあさや」の開店にこぎつけた。開店後、最初に訪れたのは…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
この4週間24回分の放送が、本作の大きな一区切り
放送開始から節目の4週目の土曜日。第1回のアバンタイトルの映像を持って来た。やはり、本作はこの4週間24回の放送を大きな一区切りに考えていたようだ。主題歌明けには、早速さりげなくすみれ(芳根京子)の父の五十八(生瀬勝久)のことも入ったし。やはりと言うべきか。この件については、下部でガッツリと考えてみる…
どうしても、両極端な捉え方になってしまう…
さて、本編。とんとん拍子だ。いや、テンポが良いと言うべきか。開店もショーケースへのアイデアも。ナレーションのすみれへの「語り掛け」も一切なくなり、昔話の語り部調に。確かに4人で協力して作業しているのもわかるし、周囲には応援団ばかりなのもわかる。ただ、それだけなんだよなって気がしてならない。
そして、期待通りに五十八の登場。絵に書いたような姉と妹のコントラストで終了。うーん、どう捉えたら良いのだろう?好意的に捉えれば、このまま着実に、4人の女性が子供服メーカー「キアリス」創業20周年式典を迎えるまでが描かれる違いないし、でも批判的に捉えれば、全体がオママゴト風に見えてしまう。
まあ、お嬢様育ちでお金云々を言うのは “はしたない” と言うこともあるだろうし、とにかくヒロインの周囲は驚くほどに協力者ばかりだから、ヒロインが苦労をしていないように見えてしまうのもある。
なぜ、こんな両極端な捉え方になってしまうような作品になったのか?そして、今週から私が引っ掛かっている、本作が「お金」を描かない理由について考えてみた。
なぜ、本作が"お金"を描かないのか?
決して「お金」のことを描けと言うのではない。なぜ、ここまで脚本家と演出家が「お金」の描写を避けるのか、理由が知りたくなったのだ。そこで、本作のモデルとなっている坂野惇子(ばんの あつこ)さんのことを調べてみた。ネタバレはしていないのでご心配なく。
この1か月分の史実を知ると、脚本家の意図が見えてくる
史実は、惇子さんの夫は戦争から帰国し、のちに創業に加わる元クラスメイト田村江つ子さんとその義姉・田村光子さんも夫は存在した。そして惇子さんら3人は、幼少期から手芸や洋裁をお稽古事として習得したのもあって、3人の夫が協力して、妻たちが陳列ケースの店を始めるのを応援したのだ。
そして、惇子さんに欧米の育児法を教えた外国人専門のベビーナース・大ヶ瀬久子さんは、彼女の “医学的根拠や合理性、深い親の愛情が詰まった育児法” がファミリアの基礎となり、ベビーコンサルタントとしてファミリアを支えた。
この箇条書き風の部分だけを見れば、陳列ケースのお店に4人が辿り着くまで「お金」のことは一つも出てこない。そして「ものつくりへの思い」のことも。元名家でも戦後の生活は苦しい。だから、妻にも働いてもらおうと夫たちが応援したのだ。これが事実。流石にこれでは、朝ドラの導入部としてはドラマ性が弱い。
朝ドラの導入部らしく、史実をアレンジした
そこで、脚本家の渡辺千穂氏は、まずヒロインの夫をまだ帰国していない設定にし、ヒロインとベビーナースを対立構造にした。確かにヒロインのすみれは、より孤独でかわいそうな設定になり、エイミーの登場もあって明美との関係も複雑化し、如何にも朝ドラチックに波乱万丈なスタートになる。
更に、エイミーに子供服を作るくだりで、敗戦国日本の象徴のように焼け残ったウェディングドレスを登場させて、“残ったもの、今あるものを工夫して新たな価値を創造する” と言う戦後の日本経済がやってきた “日本復興の思い” と、すみれたちの “べっぴんさんへの思い” を重ねた。
"思い"に光を当てるから、"お金"は月末まで取っておく
とは言っても、“思い” だけでは生きていけない時代。だからこそ、“思い” を込めたものが人々の “心を動かす” と言う部分にスポットライトを当て、敢えて “お金” には触れずに、これまで描いてきたのだろう。
そして、放送から約1か月の前回のラストで、正に「思いを込めたものが人々の心を動かす」が実ったからこそ、その翌日でついに “お金” を描いた。こう解釈することも出来る。もしこのような意図で史実がアレンジされたならば、ヒロインたちが商売やお金に拘るのはもう少し時間がかかるはず。
だって、父から商売のいろは的な部分を教わるだろうし、きっと君枝の夫も戦地から帰るだろうし(でないと盛り上がらないから)、暫くは陳列ケースの店が順調になるまでを描くのだろう。そう思えば、あまり「お金」を描くのを急ぐ必要もなさそうだ。もちろん、好意的に解釈をしてだが…
あとがき
もう、個々の解釈と好みの問題でしょうね。上に書いた通り、好意的に見る人には落ち着いた雰囲気で見られる友情や協力者たちの気持ちを丁寧に描いてるし、お嬢様らしい立ち居振る舞いが良いと映るでしょう。
また斜めから見たら、戦後になってからのヒロインに子育てや人生への真剣さが見えないとか、展開が都合良すぎるとか、山あり谷ありがなくて退屈に映るでしょうし。ただ、いずれにせよもう少し “思い” を映像化して欲しかったです。そこだけが悔やまれます。やはりテレビドラマは映像で魅せないと…
と言うわけで、当blogはもう少しの間は、脚本家のアレンジがどうドラマに反映されるのか興味もあるので、好意的と言うより、より期待を込めて見てみようと思います。その上で一言。予告編があるなら、なぜラストに騒動を加えたんでしょう???スッキリ終わったら良かったのに…
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坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
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