べっぴんさん (第22回・10/27) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第4週『四つ葉のクローバー』『第22回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
出産したばかりの友人・エイミーから、「代々大切に着続けられる特別な服」を娘のために作ってほしいと頼まれたすみれ(芳根京子)は、女学校時代の手芸倶楽部仲間の良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)に集まってもらい、ドレスの相談をする。生地に困ったすみれは、母・はな(菅野美穂)の形見で、戦災で焼け焦げてしまったウエディングドレスを生地として使うことに。すみれの覚悟に打たれた良子と君枝は……
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
今回は、"思い"と言うキーワードに注目してみる
すみれ「エイミーさんが娘に残したい “思い” は、
このドレスを残してくれた
お母様とおんなじ “思い” だと思う」
前回の終盤、そして、今回のアバンタイトルにも登場したこのすみれ(芳根京子)の台詞。今回の感想では、この台詞の中にも、またこれまでも何度も登場した “思い” と言うキーワードに注目して、なぜ本作がたまに視聴率を20%割れをし、世間的に「盛り上がっていない」と評価されるのかを、最終的に考えてみたい。
本作の抒情的な印象を創り出しているのが、美しい映像
さて、第20回の感想で、本作の印象派絵画風の映像が、登場人物たちの “大きな現実” の一部を偶然に切り取ったスナップ写真が貼り詰められた記念アルバムを、1頁1頁丁寧にめくって読んでいる、そんな作風が似合うと書いた。
最近の朝ドラは、時代は現代設定より昔の設定が多いが、作風としては登場人物の生きる時代を、視聴者が覗かせて貰ってるような多かった。その方が、ハラハラドキドキするし臨場感も出せる。しかし、本作はちょっと違う。何十年も前に起きて済んだことを、今の時代に見ているって感じ。そう、昔話を聞いているような…
だから、前者は全体的に叙事(出来事や物事を表現する)的になり、後者は抒情(気持ちを表現する)的な印象が強くなる。前作と今作の大きな違いと言えば、わかって頂けるだろうか。
美しい抒情的な映像が、見た目で退屈な印象を与える
であるから、今回も中盤まではこんな感じ。すみれが子どもをあやす具体的な映像を描かずに、遊び疲れたすみれの寝顔を見るすみれの映像に置き換えた。紀夫(永山絢斗)への思いも紀夫の回想シーンで無く、街中の傷ついた帰還兵のカットに置き換えた。
良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)のすみれを思う描写も、すみれが良子と君枝のことを案じる映像も無しに、完成した子供服のスケッチ画一枚で、「今だけの手芸倶楽部再結成」が決まってしまった。その後も良子が古新聞紙に型紙を引くシーンはあったが、すみれが型紙を生地に写すカットは無くていきなり裁断。
確かに、珍しく壮大な音楽で盛り上げてはいたが、どうしても物足りなさが出てしまう。またこの直後に、主人公不在の闇市の元締めのくだりは結構しっかりと描かれたたりするから、物足りなさが助長されてしまう。結局、この美しい抒情的な映像が、見た目で退屈な印象を与えているに違いない。残念なことだが…
裁縫する3人のシーンで、抒情的映像が抜群の効果を発揮
ただ、終盤の3人で裁縫をするようなシーンでは、この抒情的な映像が抜群の効果を発揮する。はなのナレーションもすみれへの「語り掛け」でなく、視聴者への当時の人たちの「状況説明」で合わせてある。あくまでも、昔話を語っているように。やはり、適材適所で映像効果は使い分けた方が、見ていて楽しい。
モノを売ってるのに"お金"が登場しない不自然さ
さて、話を冒頭で書いた “思い” に戻してみる。本作が「ものづくり」の物語であることは毎度書いているが、もう一つの側面に「起業」「商売」の物語がある。戦地から未だ戻らぬ夫を待ちながら、世間知らずのお嬢様が「自らの手で働きお金を稼ぐ」話。それに賛同して、子供服会社を設立し大成功する話。
そのために最も正確に描かなければいけないのが「お金」だ。どうだろう、本作に「お金」の匂いがするだろうか。第1,2週では父親の商売が描かれたし、「裕福な」と言う部分で「お金」は間接的に描かれてきた。では、すみれが靴屋の店先で小物を売り出してから「お金」は登場しただろうか。
熊の置物は登場したが、近所の主婦たちとの「お金」のやり取りは描かれなかった。エイミーに初めて会って「日本式おしめ」を売った時は? 作り直した「西洋式おしめ」を売った時は?
"お金"の描き方次第で、もっともっと面白くなるはず
近所の主婦たちとの部分では、裁縫教室で茶を濁した。「日本式おしめ」の時はエイミーのヒステリックな言動で茶を濁した。「西洋式おしめ」の時はすみれの衝撃で茶を濁した。確かに、「お金」のやり取りを映像にするのは、下世話な感じがする。しかし、「起業」「商売」の物語で「お金」を描かなくて良いのか。
ここで、本作に今一番足りないのは「お金」を描くこと。しかし、本作は「お金」を「思い」で代用している。優しい近所の主婦たちへの「感謝」の思い、エイミーの「憤慨」と言う思い、明美に素晴らしことを教えてもらった「衝撃」と言う思いで、「お金」を表現することを避けているように見えてしまっている。
「思い」を描くことは大切なことだが、ヒロインが「お金」で苦労し、「お金」を稼ぐ姿を描いて欲しい。“お金は後からついてくる” と言う言葉があるが、本作もそれで良いのだろうか。きっと、「お金」の描き方次第で、もっともっと面白い作品になるはずだ。
あとがき
第16回で、ジョン・マクレガー(ドン・ジョンソン)がすみれの商品を買おうと財布を出したら、「まだ値段考えてなくて」と言うシーンがありました。あのシーンでもお金は登場しませんでしたが、ああ言うお金を感じさせる、商売を感じさせる映像がもっと入るだけでも、どんな物語かグッと見えてきます。次回に期待します。
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
坂野惇子 子ども服にこめた「愛」と「希望」 (中経の文庫)
ファミリア創業者 坂野惇子 - 皇室御用達をつくった主婦のソーレツ人生
坂野惇子の人生 (MSムック)
上品な上質---ファミリアの考えるものづくり
時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」オリジナル・サウンドトラック
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