べっぴんさん (第5回・10/7) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『べっぴんさん』(公式)
第1週『想(おも)いをこめた特別な品』『第5回』の感想。
なお、ヒロイン・坂東すみれのモデルは、アパレルメーカー「ファミリア」創業者の1人である坂野惇子(ばんの あつこ)さんで、関連書籍は未読。
すみれ(渡邉このみ)は余命いくばくもないまま一日だけ退院した母のはな(菅野美穂)と最後の時間を過ごす。はなが娘たちのことを思って作った刺繍(ししゅう)を見て感動するすみれ。はなに将来何になりたいかを聞かれたすみれは「思いを伝えられるようなべっぴんを作れる人になる」と約束する。8年後、女学生になったすみれ(芳根京子)は、母との約束通りに刺繍を続けていた。すみれが服にいれてくれた刺繍を見た友人たちは…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
まえがき
第1回に34回、第2回に29回、第3回に69回、第4回にも69回の多数の拍手やコメントを頂き、ありがとうございます。今回も冷静&熱く “ドラマ愛” で感想を書いていきます。
途中でメモも執れない程に、最後まで見入ってしまった
時間に余裕のある朝は、朝ドラを観ながら感想記事のための下書きやメモを執るのだが、今朝はメモも取らず(正確には「取れず」)に最後まで見入ってしまった。『あさが来た』の最終回以来の体験だ。と言う訳で、今回はやや興奮気味で散漫な感想になるかもしないと、最初にお断りしておく。
無駄無し、矛盾なし。あるのは丁寧さと優しさのアバン
もう、アバンタイトルから良いんだよね。前回のアバン同様に前日の一番良いシーンから僅か4カットだけ厳選して、すみれ(渡邉このみ)、五十八(生瀬勝久)、はな(菅野美穂)のアップで今回の主役たちをきちんと提示。
そして、五十八のモノローグだけは次のシーンへ引っ張って、自然な形ではなが自宅に一時退院したシーンへ繋いだ。そこからは、これまで描いてこなかった坂東家の華麗な内部を視聴者への紹介を兼ねて、親子4人揃った構図で主題歌へ。無駄がないし、矛盾もない。あるのは、丁寧さと優しさ。今回のアバンもお見事だ。
"間もなく終わる夫婦の時間" を優しく描いた秀逸な表現
主題歌明けは、病室の狭苦しいセットからの気分転換を意識しての豪邸の屋外ショット。ロングショット(引きの画)からゆっくりとバルコニーに座る夫婦へ寄っていく。これもこれまであまり描かれなかった夫婦の会話を外の日差しの中で撮影するのも実に解放的。そう、はなはいろいろなことから解放されようとしているのだ。
きっとはなは自らの死を「終わり」でなく病からの「解放」として捉えるから、死の直前でも悲壮感が見えない。はなから見えてくるのは子供と別れる「無念さ」と忘れられるかもしれない「怖さ」。それをはなは五十八への「願い」に託し、五十八もそれを約束した。間もなく終わる夫婦の時間を優しく描いた秀逸な表現だ。
家族をずっと見守る "母の想い" が籠ったタペストリー
そして、実に映像的な表現として見入ってしまったのが、はなが “想い” を込めて作った大きな刺繍のタペストリーの裏側から、刺繍ナメ(越し)のすみれのカット。タペストリーにはどこにも穴が開いていないから、かなり大胆で挑戦的な演出だ。
しかし、誰の目にもあのタペストリーの裏側からのカットが、はなの視点であり、あのタペストリーそのものが母はなであることを、さり気なく印象付けた。これによって、はなの死後の語りの出どころはこのタペストリーだと思っても良いだろう。家族を、我が子をずっと見守る母の想いが籠ったタペストリー。うーん、いい。
最後の "家族全員での別れ" になるシーンも感動的
玄関先でのきっと最後の家族全員での別れになるシーンも感動的。きれいなレースに刺繍が施された姉妹で色違いでお揃いのワンピースで、母と娘2人が手を合わせる。悲しさで堪えきれない涙と母親の強さを見せるための最高の微笑みで、娘たちに「またね」と言ったはな。
すみれ「お母さま、私、私な、
もろうた人が嬉しい思うてくれるような、
想いを伝えられるような、
そう言う別品をつくる人になりたい」
そして、「また」がないことを察したのかわからないが、ここですみれがはなの目を見ながら、一言一言ことばを噛み締めて自分のやりたいことを伝えたシーンも良かった。
語りが "大切な人たちを天国から見守る母の想い" へ昇華
娘の気持ちを聞いて観音様のような安堵の表情になったはな。その表情がストップモーションになったのも斬新。オーバーラップもせずに、まるで現実のような解釈で、天国へ旅立つ母をむやみに引き止めるのでなく、間違いなく母の心の言葉が届いたから、涙も見せずしっかりと頷いたのも芯の強いすみれらしい反応。
このシーンのお陰で、今後のはなの語りが、ただの物語の進行役や補強係から、「大切人たちを見守ってる天国からの母の想い」に大きく昇華した。基本的に人の “死” で感動を創出するのには反対だが、ここまで必然性があり、丁寧且つ斬新に考え抜いた脚本と演出で魅せてくれるなら、大納得だ。
すみれの刺繍が上手になっていることで時間経過を魅せた
そして、夢オチなのにここもオーバーラップ無しに直結ですみれ役が “すっぴん” 風メイクの芳根京子さんにバトンタッチ。顔のアップからアップへの引継ぎもちょっと新鮮。そして母の遺影と会話するのも自然。そして何より、すみれの刺繍が上手になっているのが印象的。こう言う表現で時間経過を魅せて欲しいのだ。
あとがき
いやあ、はなの死と渡邉このみさんから芳根京子さんへのバトンタッチは土曜日だと思っていたので、まずそれに驚きました。普通は土曜日にヒロインのメインキャストの顔見世だけして、本編は週明けの月曜日からなのに、金曜日に前倒ししただけで、物語の展開が早い印象を受けます。
そして、前作なら「また時間経過させて騒動か?」となるのですが、本作のこの一つ一つ積み重ねていく丁寧な脚本と、気を衒わない安定感とたまに覗く新鮮な演出、そして真剣な俳優の演技があるので、全く気になりません。第1週を観た限りでは、半年ぶりに普通の朝ドラで毎朝を迎えられそうです。
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時空旅人別冊 “べっぴんさん"坂野惇子の生涯: サンエイムック
連続テレビ小説 べっぴんさん Part1 (NHKドラマ・ガイド)
NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
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