「とと姉ちゃん」関連の"161"の投稿で書けなかったこと ~全156回の総括~ ※追記あり

※追記あり(2016/10/03 13:45)
「とと姉ちゃん」関連の161の投稿で書けなかったこと ~全156回の総括~

最終回に200以上の拍手を頂き、ありがとうございます

最終回の感想に200以上の拍手を頂き、改めて本作に少なからず不満を持ちながら、最終回まで見届けた方が多かったことに驚いた。そこで、最終回の感想では盛り込めなかったことや、中1日経って改めて本作について考えたことを書いてみる。

良かれと思ってやったことが裏目に出た5つのケース

本作の最大の特徴として、半年間の中で、制作統括を始め脚本家や演出家のドラマや視聴者にとって “良かれと思ってやったこと” が、逆効果に働いたケースも多々見られた点がある。今回は、幾つかの本作の特徴について[ 長所 ][ 短所 ]、やって良かった点とやらなければ良かった点について書いてみる。

そこから、本作が高視聴率を続けた理由が見えてくるかもしれないから。

1.騒動至上主義

[ 定義 ]
先ず前後の脈略に関係なく「騒動=事件、ハプニング」を見せて、最後にはヒロイン・常子の活躍や手柄や演説で解決して終わるパターン化した構成のこと。また、多くの「騒動」は短ければ15分以内、長くても5回程度の放送で解決に至る脚本と演出のパターンのこと。

[ 長所 ]
とにかく「状況説明」からでなく、突然「騒動」から始まるから期待感やサプライズがある。また、常子が解決するから常子が活躍したようにも見える。

更に短い時間で、次々と新たな「騒動」が描かれるから、視聴者な良テンポの良さを感じさせることも出来るし、「騒動」そのものが前後の脈略に関係ないから毎日見ない視聴者でも疎外感を味わうことなく、常子が活躍しているってことか伝わりやすい。

[ 短所 ]
「騒動」が前後の脈略に関係なく描かれたのは描かれるから、物語としていつも「騒動」ばかり起きている印象が強くなるし、当然短い間隔で「騒動+解決」で繰り返すから、連ドラとしての前後の繋がりや連続性が乏しくなるから、物語がスムーズに流れているように感じにくいし、マンネリ化への不満に繋がりやすい。

2.物事の順序が逆だから、意味が変わってくる

[ 定義 ]
劇中の人物、モノ、時間帯、天気などの登場する順序が意図的に逆になっていること。最終回で言うなら、「三姉妹の写真」と「三姉妹と花山の写真」か、これに当たる。

[ 長所 ]
違和感による印象付けが出来る。

[ 短所 ]
やはり違和感は違和感でしかない。特に意味が逆になるような違和感は意味不明で、不安や不信感にしかならない。

3.実在した人物や企業などをアレンジして描く

[ 定義 ]
単純に史実をなぞって物語を構成するのではなく、先に述べた「騒動至上主義」に合わせて、適宜アレンジして劇中に挿入すること。

[ 長所 ]
ドラマチックな構成やエピソードが可能になる。また、複雑な設定や状況を簡素化すれば、単純にわかりやすくなる。

[ 短所 ]
改良、改善策としてアレンジされず、わかりやすさや面白さのためであれば、単なる改悪やご都合主義になる可能性が高い。また、実在した人物や企業などのイメージだけでなく、尊厳やアイデンティティーの問題にも発展する可能性も高い。

やはり、いくらフィクションでも史実や事実を扱う場合は、細心の注意と最大の敬意を払うべきだ。それが出来ないなら、「原作」「原案」「モデル」「モチーフ」が不要の、完全オリジナル脚本にすべき。

4.俳優らに、あまり年齢を感じさる衣装や化粧をしない

[ 定義 ]
時代が移り変わり、環境が変わっているのに、俳優らに劇中の状況や設定に合わせた「装飾」をあまりしないこと。

[ 長所 ]
シーンやカットの前後の繋がりを考えなくても良くなり、撮影が簡素化出来て、結果的に撮影のスピードアップが可能。特にメイクアップについては、所謂「老けメイク」は俳優への負担が大きく、少なければ俳優の負担を軽減出来る。また、俳優(特に女優)からの「なるべく若く見せたい」との要求に応えることも出来る。

[ 短所 ]
劇中の状況や設定、時間軸に対してそれ相応の「老けメイク」が無いと、違和感が半端でない。また、時代劇を見ればわかるように、見た目から受ける印象の与える影響は、作品の世界観に現実味を与えるだけでなく、視聴者がその世界観に入りやすくなると言う効果もある。

とにかく、劇中の登場人物の年齢が不明瞭なのは、登場人物が作品の中で生きていないのと同じなのだ。

5.すべての登場人物を、常子の「味方と敵」に分けたこと

[ 定義 ]
文字通り、ほぼすべての登場人物たちは常子の「味方と敵」に二分され、味方は常子に徹底的に利用され、敵は用が済めば即刻退場となったり強制的に再登場させられた。

[ 長所 ]

とにかく人物設定や人間関係がわかりやすくなる。特に途中から視聴したり、細切れに視聴する人にとっては、「勧善懲悪」の対立構造になっている部分ではわかりやすい上にすぐに作品の世界に入り込んで楽しめる。また、親しいシーンも何となく微笑ましく見える効果もある。

[ 短所 ]
常子に利用される人がほぼ固定化されるから面白味に欠ける。登場人物が相対的でなく常子個人の判断で「善人と悪人」「仲間とそれ以外」に分類されるから、何となく気持ちが悪い。「味方」を残すために「敵」を退場せざるを得ないケースでは、キャラクターの使い捨てになり、その後の消息も触れられない寂しさもある。

私が一方的に「長所無し」とした5つの事柄

ここまでは、つくり手側の言い分を好意的に考えてみたことを[ 長所 ]として書いてみた。次からは、私が一方的に私が[ 長所無し ]としてした事柄について書いてみる。

1.「経過した時間」を、俳優の演技で魅せる演出が乏しい

本作が「騒動至上主義」によって、何となく時間経過させたり、強引に時間を飛ばしたりするのは、ご存じの通り。そして、「俳優らに、あまり年齢を感じさる衣装や化粧をしない」によって、俳優の見た目で年齢がわかりにくい。

ならば、俳優の演技で「年齢=経過した時間」をしてもらうしかないのだか、本作は撮影順が放送順とは異なるから、ここで重要なのが演出家による「演技指導」だ。俳優の立ち居振舞いや言葉遣いを脚本に合わせて的確にコントロールして、「年齢=経過した時間」を視聴者に魅せるべきだ。

いや、それこそ演出家がやるべき仕事の大切な一つではないのか。適正な演技指導をしないことは私には、仕事放棄と同じに映る。

2.過激な老けメイクでの極端な老化の表現

演出家が演技指導によって、「年齢=経過した時間」を魅せないなら、やはり原点に帰って、化粧と衣装と小道具に頼ることになる。ただ、これをやるには注意が必要だし危険も伴う。

だって、その時点まで、「年齢=経過した時間」を表現していないのだから、唐突さはもとより、やり過ぎは確実に嘘臭くなるし滑稽にさえ映ることがあるから。それが本作の最終回そのものだった。

3.主人公の常子が「ストーリー」を持っていないこと

やはり「騒動至上主義」によって、主人公でヒロインである常子の大きな役割が「演説による騒動の解決係」になってしまったことで、残念ながら常子自身も物語の流れの一部になってしまったのが、私の「脚本家は本作で何を描きたかったのか?」にぶち当たる。

だって、普通は主人公の言動によって物語は綴られるのだから、過激な言い方をすれば、主人公自身が物語の大きな “うねり” に飲み込まれたとも言える。

4.編集者の物語なのに編集作業が描かれない謎

もう、これは言わずもがなと言う感じ。社長の常子が直接編集作業をせずハンコを押してるか部下に指示するだけなのは多めに見るとしても、編集部員たちが主にやっていたのは、読者からの手紙の整理と「商品試験」とグダグダ会議の3つだけ。

確かに、編集作業の映像は地味だと思うが、ここまで描かないのは?今春の連ドラに漫画雑誌の編集部の『重版出来!』が大変面白かった。今期はファッション雑誌の編集部を描く『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』もある。比較してみるのも楽しいはずだ。

5.なぜ、「暮しの手帖社」はNHKに抗議しないのか?

そして、本作最大の疑問が、なぜ、ご本家の「暮しの手帖社」が、ここまで自社や自社の出版物や創業者たちを歪めて描かれたことに抗議をしないのか?と言うこと。そこを考えると、以下のようなテレビの中の大人たちの真黒なそろばん勘定が見えてくるのは、私だけだろうか。

「視聴率1%= 約40万6千人」として、本作の全話の平均視聴率を23%とすると、多めに見て一日約933万8千人、そう毎朝1千万人が視聴するのが朝ドラ。そのモデルやモチーフに採用されれば、毎朝15分間1千万人に自社の企業宣伝を見てもらえることになる。
  【参考】視聴率からの視聴世帯・人数の推定 | ビデオリサーチ
   http://www.videor.co.jp/rating/wh/13.htm

広告料金がわかる広告代理店のサイト
https://www.kokoku-direct.jp/massmedia/tvcm/
によれば、例えば関東キー局で15秒間のCMを1回放送するのに(CM制作費は別)、 400,000円 ~ 750,000円かかる。15分間のCMとしたら2千4百万から4千5百万円かかる。それを毎日半年間NHKが勝手にやってくれるのだ。

だから、NHKには何も言わないず、いや言えない。逆に、「暮しの手帖社」の公式サイトには『連続テレビ小説「とと姉ちゃん」ヒロインのモチーフ 大橋鎭子特設サイト』を開設し、高畑充希さんの写真を帯に印刷した書籍までしっかり販売している。

「暮しの手帖社」は絶対にヒモつきであってはならない

花森安治は100号(昭和44年)の「商品テスト入門」のなかで、このようなことを書いている。
「〈商品テスト〉は絶対にヒモつきであってはならないのである」

また、第9号(昭和25年)のあとがきには、こうもある。
「たとえ何百万円の広告費をいただけるとしても、それとひきかえにはしたくない、というのが、私たちみんなの必死の気持ちでございます」

天才編集者でジャーナリスト・花森安治は、「雑誌が権力のヒモつきになったらおしまい」と考えていた人。そして、この資本主義の中では、いつでもヒモつきになるかもしれない危険性を最も恐れていた人でもあったででは?

最後に。NHKに何も言わずに商売で乗っかる今の「暮しの出版社」に、あの花森の確固たる信念は継承されていないのか?と考えるきっかけを与えてくれた。これが本作が放送された最大の現代社会への貢献だったかもしれない。その意味で、本作の放送に一定の意味はあった。と思いたい…

あとがき

どうして「暮しの手帖社」がNHKに抗議しないのか、真実は定かでありませんが、こう言う事実を湾曲した朝ドラの放送を認めることで、少しでも違和感を感じた視聴者が「暮しの手帖社」に興味関心を持ってもらい、「暮しの手帖」や大橋鎭子さんと花森作治さん関連本が売れれば、それはそれで良いとの考えでしょうか。

大橋鎭子さんと花森作治さんがご存命ならば、是非とも今回の朝ドラ『とと姉ちゃん』についての感想を聞いてみたいです。とにかく、「暮しの手帖社」が書いた本を読んで、真実に目を通すのをお勧めします。


【追記 2016/10/03 13:45】

読者のにんじんさんからも情報を頂きました。これは個人攻撃になるかなと、敢えて当blogでは掲載を見送っておりましたが、当記事への反応が大きいので、現『暮しの手帖』編集長・澤田康彦さんのインタビューコメントを紹介します。中でも私が気になった部分を無断引用・掲載します。

「大前提として、あれは事実を元にしたフィクションです。古くからの『暮しの手帖』の読者からは「全然違う、指摘しないのか」という声をいただくこともあります。もちろんその逆の「面白い!」という感想も。雑誌『暮しの手帖』はあくまでも“モチーフ”ととらえて、戦後を生き抜いた女性とキテレツな天才編集長のドラマとして観ていただけるといいと思います。違いを探すより、同じところを探す視点でご覧いただくことをおすすめしたいですね。」

なお、全文は下記のリンクにあります。
「自分たちの暮しがいちばん大事」が基本。 『暮しの手帖』編集長・澤田康彦 - エンタメステーション | entertainment station
http://entertainmentstation.jp/38274/

このインタビューが真実だとすれば、「毎日勝手に広告宣伝をしてくれているから悪くは言えない」と言っているようにしか聞こえません。となると、もはや『暮しの手帖』には花森作治の魂は失われたと同じではないでしょうか。

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★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
【ポケット版】「暮しの手帖」とわたし (NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ 大橋鎭子の本)
しずこさん 「暮しの手帖」を創った大橋鎭子 (暮しの手帖 別冊)
花森安治「暮しの手帖」初代編集長 (暮しの手帖 別冊 (連続テレビ小説『とと姉ちゃん』花山伊佐次のモチーフ 花森安治の本))


★本家の記事のURL →  http://director.blog.shinobi.jp/Entry/8959/
★FC2ブログへトラックバックが送信できない方は、
   http://dmesen.seesaa.net/article/442466765.html でも受付けております。


【これまでの感想】
[読書] 「暮しの手帖」とわたし (大橋 鎭子/著・花森 安治/イラスト・暮しの手帖社) 感想 ※平成28年度前期 NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ,大橋鎭子の自伝
第1週『常子、父と約束する』
1 2 3 4 5 6
第2週『常子、妹のために走る』
7 8 9 10 11 12
第3週『常子、はじめて祖母と対面す』
13 14 15 16 17 18
第4週『常子、編入試験に挑む』
19 20 21 22 23 24
第5週『常子、新種を発見する』
25 26 27 28 29 30
第6週『常子、竹蔵の思いを知る』
31 32 33 34 35 36
第7週『常子、ビジネスに挑戦する』
37 38 39 40 41 42
第8週『常子、職業婦人になる』
43 44 45 46 47 48
第9週『常子、初任給をもらう』
49 50 51 52 53 54
第10週『常子、プロポーズされる』
55 56 57 58 59 60
第11週『常子、失業する』
61 62 63 64 65 66
第12週『常子、花山伊佐次と出会う』
67 68 69 70 71 72
第13週『常子、防空演習にいそしむ』
73 74 75 76 77 78
第14週『常子、出版社を起こす』
79 80 81 82 83 84
とと姉ちゃん あの第82話で「連続20%超え」が途切れたそうだ
第15週『常子、花山の過去を知る』
85 86 87 88 89 90
第16週『“あなたの暮し”誕生す』
91 92 93 94
「とと姉ちゃん」自己最高25.3%。これでテコ入れも期待薄か?
95 96
第17週『常子、花山と断絶する』
97 98 99 100 101 102
第18週『常子、ホットケーキをつくる』
103 104 105 106 107 108
第19週『鞠子、平塚らいてうに会う』
109 110 111 112 113 114
第20週『常子、商品試験を始める』
115 116 117 118 119 120
第21週『常子、子供たちの面倒をみる』
121 122
朝ドラ「とと姉ちゃん」の高い視聴率と増える厳しい意見の“ねじれ”を考える
123 124 125 126
第22週『常子、星野に夢を語る』
127 128 129 130 131 132
第23週『常子、仕事と家庭の両立に悩む』
133 134 135 136 137 138 138(その2)
第24週『常子、小さな幸せを大事にする』
139 140 141 142 143
朝ドラ「とと姉ちゃん」 やはり「暮しの手帖」関係者も怒り心頭だった
144
第25週『常子、大きな家を建てる』
145 146 147 148 149 150
第26週『花山、常子に礼を言う』
151 152 153 154 155 156/最終回

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