とと姉ちゃん (第155回・9/30) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(公式)
第26週『花山、常子に礼を言う』『第155回』の感想。
なお、本作のモチーフで、大橋鎭子著『「暮しの手帖」とわたし』は既読。
※ 本作は 8/25 にクランクアップ(撮影終了)しています。
※ 従って、僅かな編集への期待と、直感的な賛美や愚痴を書いています。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
花山のあとがきを口述筆記したのち、別れた常子のもとに連絡が入る。連絡は妻三枝子からのものだった。花山がついに自宅で息絶えた、というものだった。常子と美子は花山の死に顔にあう。その死に顔は安らかなものだった。自宅に戻った常子たちは、三枝子から預かった最後の原稿を読む。そこにさしこまれた一通のメモ書き…それは花山から三姉妹への最後の手紙であった…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
本作への不信感,怒り,憤りが、多数のWeb拍手に込まれた
まず、この記事を書いている時点で、前回の感想へのWeb拍手が105回にもなったことに、お礼を述べたい。でも、この数はきっと私の感想への共感よりも、本作やNHKやスタッフへの不信感、怒り、憤りが、これだけの数になったと信じている。と言うことで、今回もいつも通りの “ドラマ愛” で本作に斬り込んでいく。
花山の死が、「テレ死」で無残にも処理された
なぜか、前回の最後の口述手記の日から2日経過。どうして、本作はこうして時間経過が好きなのだろう。花山(唐沢寿明)の死まで2日間を要する必要性がどこにあると言うのだ。実質的には “蛇の生殺し” を更に2日間伸ばしただけの悪印象しか残らないのに。時間経過については、根本的なことを後述する…
そして驚愕だったのが、花山の死が「テレ死」で無残にも処理されたことだ。「ナレ死」に対しての私の造語だが、電話で、それも花山の妻・三枝子(奥貫薫 )が映像での登場もなく、夫の務め先に電話をかけてくると言う何とも残酷なシチュエーションで。
確かにドラマチックなのは認める。しかしだ。こんな作品でも毎朝半年間も見続ければ、登場人物に多少の愛着は湧く。特に、せっせと脳内補完をして育ててきた「花山伊佐次」とその家族の生き様を思えば、もう少し優しい最期で旅立たせる案はなかったろうか。こんな冷酷な脚本に、わたしは涙も添えるつもりはない。
訃報を聞いて花山家を訪れたシーンは、不自然さだらけ
三枝子からの突然の訃報を聞いても無表情無反応の常子(高畑充希)も、普通なら「放心状態」と言うことで納得できるが、肝心の表情が全部水田(伊藤淳史)目線でカメラには背を向けて見えない。その直後のカットは引きの俯瞰で、既に出かける準備。演技で「放心状態」に見せられないことの苦肉の策なら、何とも残念だ。
そして、続く花山家を訪れたシーンでは不自然のてんこ盛り。まず、花山の嫁に入った長女・森井茜(水谷果穂)が、花山の部屋の前で常子らを待ち構えてるのが不自然。その茜に、常子が一言も声をかけないのも不自然。
妻・三枝子への第一声が「ご愁傷さまでございました」は社長としての言葉としても、ならば社長として女性として奥さんへの慰めの言葉…と思うが、その前に美恵子の説明台詞が入るのは不自然と言うか、こう言うところで常子の優しさを描かないから共感できるヒロインにならなかったのだ。
そして、こう言うシーンを撮影することは重々承知の上で、美子(杉咲花)の衣装に赤いお花畑みたいなワンピースで選ぶ演出家のセンスが、幼少期は可愛かった美子を、自己中心的な変わり者キャラに変えてしまったのだ。脚本もどうかと思うが、最終週は本当に演出の雑さが目に付きすぎる。
脇役の退場劇を5日間も描くのは、明らかに分不相応
常子が帰宅した。花山の最後の原稿が、ちょうど5篇あったのか、複写原稿がちょうど5部あったのか不明だが、このあと今回で最大の違和感と不自然と稚拙な脚本と演出が露呈するシーンになる。
それが「美子さん」と題された亡き花山からの一通の手紙を映像化した一連のシーン。口述手記をする前の力強くペンを振るう花山や戦後の闇市での生き生きとした花山と常子の回想映像に、花山のナレーションと現在の三姉妹が手紙を読むカットで構成されたこのシーン。これ自体はそれなりに良く出来てるのは認めるが…
普通ならこの手紙は、花山が元気な頃に既に認(したた)めていたと見える。だとしたら、なぜ3日前の口述手記をした日に常子に渡さなかったのか?逆にこの2日間で元気を取り戻し手紙を書いたとしたら、前回は「読者への遺言」、今回は「常子への礼」と切り分け、2回の放送で「視聴者への遺言」を放送したことになる。
何度も書くが、花山は本作にとって重要人物の1人であることは紛れもない事実。ただ、主人公はあくまで「小橋常子」であり、「花山伊佐次」は脇役。その退場劇を「テレ死」で済ませた割に2度も「遺言」を描くのは、明らかに分不相応だしおかしい。ここへ来て改めて、この作家は、人の死をどう捉えているのだろうと考えざるを得ない。
登場人物たちに「年齢」が無い…
そして、また2か月の時間経過。この作家は「2」と言う数字がラッキーナンバーだと思っているのだろうか。さて、今回の感想の最後に本作の「時間経過について」きちんと書いておく。きっと、最終回は「総括」の長文になるだろうから。(もしかして、書く気力を失せる内容かも知れないが)
皆さんもご存知の通り、本作は「時間経過」が多い。時間経過によって各エピソードを短くし作品のテンポを良くする、と言う目的のためと想像できる。そのことは脚本として基本的に間違っているとは言い難い。ただ大問題なのは、その「経過した時間」がこちらにきちんと伝わってこないことなのだ。
屋外ロケ、スタジオセット、美術、衣装、メイク等は、予算やスケジュールの関係で許容できる要素ではあるが、私が許容できず本作の命取りにもなったと思うミスが、演出家による演技指導だ。
前回の感想で、私は基本的に俳優の演技には言及しないと書いた。実はその理由にこう言うのもある。それは、俳優の演技の上手い下手は個人的な好みや印象に左右されるし、新人は下手が当然で、俳優によっては得手不得手もあるだろう。そして何より俳優の演技は “個性” だから、一方的に言及するのはどうかと思うのだ。
しかし、本作を見続けて、こう思ったことは無いだろうか。本作の登場人物たちに「年齢」が存在しない…と。例えば今回の終盤での常子がテレビ出演したシーンで、常子が何歳かわかったろうか。聞き手の沢静子を演じた阿川佐和子さんは演技が仕事で無いのは承知だが、今の、ありのままの阿川佐和子さんで登場。
「経過した時間」を、俳優の演技で魅せる演出が乏しい
そして、常子までほぼ昨夜の『VS嵐』、本作放送直後の『あさイチ』に出演した今の、ありのまま高畑充希さんのまんま。これは流石に頂けない。過激な老けメイクで極端な老化を表現しろと言うのではない。劇中の時間軸相応の「経過した時間」を、俳優の演技で魅せる演出をすべきだったと言う意味だ。
本作は三姉妹の子役時代が終わってから、ずっとこの「経過した時間」を俳優の演技で魅せる演出を疎かにしてきた。そのツケが今に回っている。先の6/25に放送された『総集編(前編)』では、辛うじて語りでごまかせていた。さて、『総集編(後編)』でごまかせるのか。最終回を前に最後の楽しみでもある。
あとがき
『あさイチ』で、高畑充希さんが自身の大量の台詞と演技をどう整理整頓していたかの話をされていました。やはり、メモ書き程度では演技の連続性を担保するのは難しかったでしょうね。花山と常子の初対面のシーン(花山の原稿を取に行くシーン)はリハーサル無しだったそう。
こうなると、普段ならスルー出来ることも気に障りますね。また『あさイチ』の話ですが、「撮影が大変な時は高畑さんを癒してくれたのが小橋家のメンバー」のくだりで、君子と三姉妹が防空頭巾を被って「Choo Choo TRAIN」のダンスをしている映像が「こはザイル」のテロップ入りで流れました。
ここへ来て、防空頭巾で遊ぶななんて杓子定規なことは言いたくありませんが、放送は控えるべきでしたね。内輪ネタも時には楽しいですが、見る人にとってはとても不愉快に映ると思います。それが、テレビです。では、明日の最終回もよろしくお願いします。午前中の投稿を目指して(汗)
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【これまでの感想】
[読書] 「暮しの手帖」とわたし (大橋 鎭子/著・花森 安治/イラスト・暮しの手帖社) 感想 ※平成28年度前期 NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ,大橋鎭子の自伝
第1週『常子、父と約束する』
1 2 3 4 5 6
第2週『常子、妹のために走る』
7 8 9 10 11 12
第3週『常子、はじめて祖母と対面す』
13 14 15 16 17 18
第4週『常子、編入試験に挑む』
19 20 21 22 23 24
第5週『常子、新種を発見する』
25 26 27 28 29 30
第6週『常子、竹蔵の思いを知る』
31 32 33 34 35 36
第7週『常子、ビジネスに挑戦する』
37 38 39 40 41 42
第8週『常子、職業婦人になる』
43 44 45 46 47 48
第9週『常子、初任給をもらう』
49 50 51 52 53 54
第10週『常子、プロポーズされる』
55 56 57 58 59 60
第11週『常子、失業する』
61 62 63 64 65 66
第12週『常子、花山伊佐次と出会う』
67 68 69 70 71 72
第13週『常子、防空演習にいそしむ』
73 74 75 76 77 78
第14週『常子、出版社を起こす』
79 80 81 82 83 84
とと姉ちゃん あの第82話で「連続20%超え」が途切れたそうだ
第15週『常子、花山の過去を知る』
85 86 87 88 89 90
第16週『“あなたの暮し”誕生す』
91 92 93 94
「とと姉ちゃん」自己最高25.3%。これでテコ入れも期待薄か?
95 96
第17週『常子、花山と断絶する』
97 98 99 100 101 102
第18週『常子、ホットケーキをつくる』
103 104 105 106 107 108
第19週『鞠子、平塚らいてうに会う』
109 110 111 112 113 114
第20週『常子、商品試験を始める』
115 116 117 118 119 120
第21週『常子、子供たちの面倒をみる』
121 122
朝ドラ「とと姉ちゃん」の高い視聴率と増える厳しい意見の“ねじれ”を考える
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第22週『常子、星野に夢を語る』
127 128 129 130 131 132
第23週『常子、仕事と家庭の両立に悩む』
133 134 135 136 137 138 138(その2)
第24週『常子、小さな幸せを大事にする』
139 140 141 142 143
朝ドラ「とと姉ちゃん」 やはり「暮しの手帖」関係者も怒り心頭だった
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第25週『常子、大きな家を建てる』
145 146 147 148 149 150
第26週『花山、常子に礼を言う』
151 152 153 154