とと姉ちゃん (第113回・8/12) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(公式)
第19週『鞠子、平塚らいてうに会う』『第113回』の感想。
なお、本作のモチーフで、大橋鎭子著『「暮しの手帖」とわたし』は既読。
昭和25年11月。鞠子(相楽樹)と水田(伊藤淳史)の結婚式を翌日に控え、常子(高畑充希)たちは一家四人での最後の食卓を囲む。いつもと変わらないたあいもない会話の中、鞠子は突然顔を曇らせる。鞠子は涙ながらに、常子、君子(木村多江)、美子(杉咲花)に「今までお世話になりました」と挨拶をする。翌朝、鞠子は白むく姿で近所の人々に見守られながら式場に向かう。こうして鞠子と水田の結婚式が始まろうとしていた…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
赤の他人でも、花嫁の挨拶は感動するものだが…
毎週末、2~3件の結婚披露宴の演出の仕事をして、20数年間で2,000件の新郎新婦や家族を見て来た私。新婦の親への手紙の朗読や親御さんの謝辞を聞いて、赤の他人ではあるが何かのご縁で同じ場所にいると言う運命も感じるし、時にはうるっとくることもあるし、感動することもある。
しかし、その一方で「新婦からの手紙」は超が付くプライベートなことだから、前夜に実家で済ませてきたら良いのにと思うこともある。最近は実際にも手紙は記念品と一緒に手渡しするだけで、朗読はしない新郎新婦も増えている。涙でお化粧が崩れるのを嫌がったり、恥ずかしいと言うのが理由らしいが。
長い爪で三つ指を突いて、深々とお辞儀をした鞠子
さて、今回は、準主役級の登場人物の嫁ぐ前夜の物語だった。故郷の実家に帰省して、親御さんと一緒に観た視聴者もいただろう。だとすればなおさら姑息な仕掛けなど一切しなくても、いとも簡単に感動の15分に仕上げるのがプロの仕事だし、それが出来なければこの先益々期待が薄まるだけだ。
そして、いよいよ嫁ぐ娘の母への深い感謝の気持ちを伝えるシーン。カメラもきちんと鞠子(相楽樹)が君子(木村多江)に三つ指を突いく手のアップがインサートされて、いよいよ準備万端。しかし、ここで演出のボロが出た。鞠子の爪は伸びてるし、深々と頭を下げてしまったのだ。
「三つ指を突く」とは、本来は親指・人差し指・中指の3本の指を床に突いて、丁寧にに礼をすること。しかし、親指を含めた3本の指では相手からの見た目が不自然なため、日舞や茶道の世界では、人差し指、中指、薬指の3本にしているケースが多い。そして、三つ指を突く時に絶対してはいけないのがお辞儀。
元々武家のしきたりが元になっている一般的な作法に於ける深いお辞儀をする時は、膝の前で手をハの字に置き、全ての指、または手の平全体を床につけるのだ。因みに、きちんとした映画などで、嫁ぐ朝に髪を分金高島田に結い上げた花嫁が両親に三つ指を突いて挨拶をするシーンを見かけたことがあるはず。
カツラが重いと言う理由もあるが、大体の場合は少し俯くだけで済ますのが通例。まあ、映像的に考えれば、花嫁衣裳を身にまとった美しい女優さんの魅力的な和装メイクを深いお辞儀で隠すなんて馬鹿馬鹿しいことは考えないのが普通。要は、手抜きせず嫁ぐ朝に花嫁衣裳を着て高島田のカツラを被せれば良かっただけのことってわけだ。
「憧れのかか」で始まり「水溜り」で締め括るセンス
ドラマのエピソードとして大変重要な場面で、手抜きをする神経がわからない。そんなシーンのあとに、鞠子が涙ながらに「憧れのかかのような存在になります」と言うものだから開いた口が塞がらない。理由は面倒だから省略するが。
その上、妹の美子(杉咲花)には「ありがとうございました」と敬語で御礼のご挨拶。親戚や隣人にに対してならともかく、妹に対しては明らかに過剰な表現で逆に私には鞠子の本性である冷淡さや他人行儀が表面化したように見えた。確かに最近の鞠子は姉以上に強かな人間になってはいたのだが。
そして、「みずたまり」で締め括る脚本家と演出家のセンスも疑わざるを得ない。
せめて、東堂夫婦はご招待しても良かったのでは?
まあ、結婚披露宴のシーンはどうでもいいって感じ。大人の事情はあるにせよ、サブタイトルを考えれば平塚らいてう(真野響子)の出席は難しくとも、東堂(片桐はいり)夫妻をお呼びするくらいの “辻褄合わせ” はして良かったのでは?これなら朝ドラお約束の集合写真1枚で済ませた方が好感度が上がったかも。
むしろ、写真1枚で済む話を、2日間もだらだらと描いてる印象が強い。新婦側の主賓席に座っていた花山(唐沢寿明)が、花山程の人間が普段着風?なのも気になったが…
あとがき
父親のいない娘が仏壇を前で、家族との最後の会話を交わす嫁ぐ前夜の話が、ここまで淡々と、そして長々と感じたのは久しぶり。と言うか、多分これまで見たことがありません。次回は花山の祝辞と常子の謝辞のドタバタコントに、宗吉が参戦してめでたしめでたしでしょうね。ふーっ。
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【これまでの感想】
[読書] 「暮しの手帖」とわたし (大橋 鎭子/著・花森 安治/イラスト・暮しの手帖社) 感想 ※平成28年度前期 NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ,大橋鎭子の自伝
第1週『常子、父と約束する』
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第2週『常子、妹のために走る』
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第3週『常子、はじめて祖母と対面す』
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第4週『常子、編入試験に挑む』
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第5週『常子、新種を発見する』
25 26 27 28 29 30
第6週『常子、竹蔵の思いを知る』
31 32 33 34 35 36
第7週『常子、ビジネスに挑戦する』
37 38 39 40 41 42
第8週『常子、職業婦人になる』
43 44 45 46 47 48
第9週『常子、初任給をもらう』
49 50 51 52 53 54
第10週『常子、プロポーズされる』
55 56 57 58 59 60
第11週『常子、失業する』
61 62 63 64 65 66
第12週『常子、花山伊佐次と出会う』
67 68 69 70 71 72
第13週『常子、防空演習にいそしむ』
73 74 75 76 77 78
第14週『常子、出版社を起こす』
79 80 81 82 83 84
とと姉ちゃん あの第82話で「連続20%超え」が途切れたそうだ
第15週『常子、花山の過去を知る』
85 86 87 88 89 90
第16週『“あなたの暮し”誕生す』
91 92 93 94
「とと姉ちゃん」自己最高25.3%。これでテコ入れも期待薄か?
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第17週『常子、花山と断絶する』
97 98 99 100 101 102
第18週『常子、ホットケーキをつくる』
103 104 105 106 107 108
第19週『鞠子、平塚らいてうに会う』
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