[読書] 人を惹きつける技術 -カリスマ劇画原作者が指南する売れる「キャラ」の創り方- (小池 一夫/著・講談社) 感想

実際の対人関係で、「キャラクターづくり」を活かす
『子連れ狼』『御用牙』等の漫画原作を数多く手掛けた著者が、漫画原作を創る過程での「キャラクターづくり」のノウハウを基に、前半は小説や脚本での「キャラクターの起て方」を、後半は実践的な「売れっ子漫画家への道」が書いてある。こう書くと、漫画家志望や劇画原作者を目指す人向けに捉えられるが…
実はもう1つの捉え方ができる。それは、実際の対人関係において、この「キャラクターづくり」のノウハウを活かして、自分の「弱点」と「欠点」を逆「魅力」に変える法が書いてあるのだ。当blogでは、「脚本術」の部分に光を当てて、キャラクターとは何か?物語とは何か?についても考えてみる。
最近のテレビドラマの脚本家たちが、忘れていること
まず、最近のテレビドラマの脚本家たちが、最も忘れていることが本書の序盤に書かれている。それが…
キャラクターとは、作品の中に作者が送り込んだ「心」です。
作者のメッセージがキャラクター(登場人物)の言葉(台詞)となって読者(視聴者)の心を揺さぶり感動や喜びを生ませるとと言うこと。嘆かわしいが、実にこんな初歩的なことさえ疎かになっているテレビ脚本が多い。ただただ、目新しいとか世間にウケそうとか鉄板キャラだとか、創作意欲ゼロの脚本家が。
主人公埋没の "中途半端な群像劇もどき連ドラ" に喝
今のテレビドラマ、特に連ドラを見ていて感じるのは、魅力的な主人公の少なさ。使い古されたようなキャラとか、似たようなキャラの群像劇みたいな作品の多いこと。著者はこんなことを書いている。
キャラの大きさは消せばわかる。フィクションでなく、歴史上の人物や有名著名人で考えればわかり易い。もしも織田信長や徳川家康が存在しなかったら?黒澤明や長嶋茂雄をいなかったら?そんな世界は考えられない。そんな存在の大きさや輝くオーラのようなものを背負っているのが、主人公なのだ。
主人公には弱点を、ライバルには欠点を
当blogでは頻繁に、「物語が登場人物を動かすのでなく、登場人物が物語を作っていくのだ」と書くが、そんな強力で魅力的な登場人物を作る方法が紹介されている。その中でも興味深いのが、「キャラの三角方程式」にある、物語には、主人公、ライバル、引き回し役の三角が必要ってくだり。その一部を紹介してみる。
●主人公には弱点をつける
完全無欠、無敵のキャラクターは、カッコよく見えそうだが実は「勝つのがわかってる」から面白くない。だから、「弱点」をつける。「○○殺すにゃ刃物はいらぬ。△△だけがあれば良い」ってこと。
●ライバルキャラには欠点が必要
悪いキャラには「弱点」でなく「欠点」が必要ってこと。「弱点」とは勝負の上での勝ち負けだが、「欠点」は人格上や性格上のこと。これも実に単純明快な論理。ライバルに「弱点」があったら主人公はそこを攻めりゃ勝っちゃう。逆にライバルの「欠点」は個性でもあり魅力にもなる。だから対立関係が面白くなる手こと。
主人公には「オーラ」、ライバルには「カリスマ性」
本書のネタを全部書いてはいけないから、最後に「なるほど」と思ったことを。それは、『主人公には「オーラ」を、ライバルには「カリスマ性」を』の章。
主人公には、人を曳き付ける魅力、オーラをつけると言うのは感覚的に理解できる。尊敬したくなるとか応援したくなるとか、そう言うのが連ドラの主人公にありがちなオーラ。別の言い方をすれば「人間性」とも言える。
一方の敵のキャラには「カリスマ」性をつける。人を恐怖で支配する冷たい闇の魅力。「非人間性」とも言える。この「カリスマ性」と言うのが実にしっくりくる。
「弱点」と「オーラ」 VS 「欠点」と「カリスマ性」
「弱点」と「オーラ」がついた主人公は、温かみがあり人間味がある。でも弱さもあってそれがまた人間的な魅力になる。一方の「欠点」と「カリスマ性」がついたライバルは、短気、乱暴、残酷、卑劣などの「欠陥」がある人間だから、人に恐れられカリスマ性を持つって仕掛け。
この主人公とライバルの仕掛け、いろんな作品に当てはまる。恋バナでのイケメンに惚れた主人公の女の子とそのライバル。刑事ドラマでの刑事と犯人。医療ドラマでの一匹狼の医者と巨大な組織。法廷ドラマでの検察官と弁護士とか。皆さんも面白いドラマとつまらないドラマの分析をしたら、またテレビドラマの楽しみ方が増えるかも。
あとがき
要は、自分自身がダメだと思う部分を、相手に「弱点」と思わせれば味方になってくれるけど、「欠点」に思わせたら敵になっちゃうよってこと。また、「オーラ」のような魅力は味方を増やすけど、「カリスマ性」は恐れられちゃうこともあるから要注意ってこと。あとは、読んでみて下さい。面白いです。
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