とと姉ちゃん (第82回・7/7) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(公式)
第14週『常子、出版社を起こす』『第82回』の感想。
なお、本作のモチーフで、大橋鎭子著『「暮しの手帖」とわたし』は既読。
家族の後押しを受け、雑誌を作ることになった常子(高畑充希)。おしゃれをテーマに、鞠子(相楽樹)に文章を任せ、美子(杉咲花)に絵と裁縫の知識を借り、三姉妹で力を合わせて街中の目新しいファッションを取り上げた雑誌作りにとりかかる。鉄郎(向井理)と共に闇市で紙を探す常子は、粗悪な紙を高値で押しつけられそうなところに、露天商組合で働く水田(伊藤淳史)が偶然助けてくれる。そうして、雑誌は完成へと近づくが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
本気で視聴者を楽しませようと、仕事をしているのか?
今回の15分、脚本家、演出家、それに俳優たち、本気で視聴者を楽しませるため、楽しませていると思って仕事をしているのだろうか?もう、そんなことすら頭をよぎるような15分間だった。ホント、ただただ「騒動至上主義」によって次から次へと “騒動” を慣れべて、台詞と語りで物語の先に興味を惹かせてるだけ。
小橋三姉妹らが、出版の仕事を始めるまでが雑過ぎる
アバンタイトルで常子(高畑充希)が「散々悩んだんだけど…」と言っていたが、もう苦笑しかない。いつ「散々」が描かれたろうか。前回の退職届を出すくだりでも、そんな素振りは無かったし、これまでも映像的に常子が「散々悩んだ」シーンなど記憶にない。
その上、一攫千金を狙って職を渡り放浪しているが、失敗の連続の鉄郎(向井理)の無責任で根拠ゼロの “よこしまな考え” にしか聞こえない呟きで、資金の見通しもない、編集や出版取次の知識も乏しい常子が人生を賭るって。世に名を遺す人は凡人とは違うと言うが、これではただの無鉄砲にか見えない。
それに、何の説明もなく鞠子(相楽樹)に文章担当、美子(杉咲花)に絵と裁縫担当、鉄郎が資金調達係になった。普通、ほぼ見通しが立たっていない事業計画(計画があるかどうかも不明だが)にいくら姉妹でも巻き込まれたら、一瞬でも困惑するカットがないと三姉妹揃って鈍い女ってことになっちゃう。
更に解せないのは、何の努力も苦労もせず嫌なことからは少女期から逃げて、困ったら誰にでも寄生する人生しか送ってこなかった全く説得力のない君子(木村多江)の応援メッセージで、鞠子と美子がガッテンしちゃった。おいおいここまで僅か1分40秒程度。雑に作るにも程がある。
「東堂チヨ⇒青鞜⇒綾⇒ファッション誌」が、わからん
前回での、綾(阿部純子)が「青鞜(せいとう)」を見て語っていた所謂“女性”のくだりと、今回の常子たちが作ろうとする「女の人の役に立つ雑誌」が「最新の洋服やその作り方を載せた雑誌」になる過程が全く理解できない。確かに戦中はおしゃれが出来ない女性のためと言うのは超好意的脳内補完でわからないでもない。
ただ、これまで常子がおしゃれに興味があったようなくだりもないし、どちらかと言えばいつも同じ服を着るおしゃれに無頓着なキャラでなかったろうか。私の脳内補完では、おしゃれに気を遣うより家族のために(一応)がむしゃらに働いて来たと言うのが常子の設定なのだが。
わざわざ新キャラ初登場を、二度に分ける必要なし
とにかく序盤の5分だけでも小橋家たちの言動の論理的根拠が不明瞭のまま、更に水田正平(伊藤淳史)と言う新キャラまで登場。終盤まで繰り返された「今後、水田に助けられる…」の語りもホント耳障り。ドラマが面白ければ前のめりに先が気になるが、そうでないから、無意味な先延ばしってだけ。策士策に溺れる…
因みに、この水田正平なる人物、戦時中に日本宣伝協会・大政翼賛会の宣伝部に居た「横山啓一」がモデル。。劇中で花山伊佐次(唐沢寿明)のモデルである花森安治と一緒に日本宣伝技術家協会に所属して国策の広告宣伝に関わった人物。
そして、のちに鎭子さんの出版社に遅れて入社してくる人。で、次女・晴子(劇中の鞠子)と結婚して…この位にしておこう。
なぜ、スケッチする美子の手のアップだけ早回し?
少しは演出的な部分にも触れてみる。気になったのは、街中取材中に美子がスケッチをするシーン。なぜか美子がデッサンをする手のアップの1カットだけに、再生速度を早くするオーバークランク(早回し)の効果が付いていた。
なぜ?手の持ち主が明らかに杉咲花さんより老けてたから?杉咲花さんでないとバレないように?美子の手捌きを鮮やかに見せるため?意味不明な1カットの加工。演出家の意図が全くわからない。
あとがき
昨日のコメントにも書きましたが、世に出て活躍する人、世に名を遺す人は、普通の人とは違う特殊な嗅覚でその時代や先の時代を読んで行動するだろうから、その時は変わり者扱いされたり理解されないことも多いとは思うんです。きっと、この脚本家もこの法則で、常子を変人キャラにして平気なんだと思います。
ただ、ふと考えたんです。同じように女性が商売を始めて世に名を遺したもう1つの朝ドラ『あさが来た』のことを。よ~く思い出すと、白岡(今井)あさも自分の考えでどんどん事業を拡大していきました。ベテランの商売人が「無謀だ」と言うようなことも、「九転び十起き」の精神で突き進んでいきました。
でも、そんな “あさ” は応援できました。彼女には、以下のような設定がしっかりと施されていたからだと思うんです。
●幼い頃から「なんでどす?」と何事にも興味を持つ性格だったこと。
●思ったことはすぐに「びっくりぽん」と言って口に出すこと。
●嫁は嫁ぎ先の家を必ず守ると言う信念。
●困った人たちのために銀行を作りたいと言う夢を抱いていたこと。
●女性を大事にし女性の活躍を心の底から願ったこと。
●許嫁の人生で全く別方向に生きることになった姉・はつとの姉妹愛。
●そして、夫・新次郎との夫婦愛。
などなど
広岡浅子さんと大橋鎭子さん、共に 戦後の日本で “働く女性” として大活躍して、世に名を遺したお二人で、奇しくも続けて『朝ドラ』のモデルになったのも何かの運命を感じます。そして、脚本家、演出家、俳優によって、このお二方の印象はだいぶ変わってしまったと思います。NHKの罪は重いと思います。悔い改める可能性はまだあると信じたいです。
【修正 2016/7/7 17:35】
まーさんのご指摘で、文中の「戦後の日本で」を「“働く女性” として」に修正致しました。
【追記 2016/7/8 16:25】
とと姉ちゃん あの第82話で「連続20%超え」が途切れたそうだ
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【ポケット版】「暮しの手帖」とわたし (NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ 大橋鎭子の本)
花森さん、しずこさん、そして暮しの手帖編集部
しずこさん 「暮しの手帖」を創った大橋鎭子 (暮しの手帖 別冊)
大橋鎭子と花森安治 美しき日本人 (PHP文庫)
大橋鎭子と花森安治 戦後日本の「くらし」を創ったふたり (中経の文庫)
花森安治のデザイン
花森安治伝: 日本の暮しをかえた男 (新潮文庫)
花森安治 増補新版: 美しい「暮し」の創始者 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)
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【これまでの感想】
[読書] 「暮しの手帖」とわたし (大橋 鎭子/著・花森 安治/イラスト・暮しの手帖社) 感想 ※平成28年度前期 NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ,大橋鎭子の自伝
第1週『常子、父と約束する』
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第2週『常子、妹のために走る』
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第3週『常子、はじめて祖母と対面す』
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第4週『常子、編入試験に挑む』
19 20 21 22 23 24
第5週『常子、新種を発見する』
25 26 27 28 29 30
第6週『常子、竹蔵の思いを知る』
31 32 33 34 35 36
第7週『常子、ビジネスに挑戦する』
37 38 39 40 41 42
第8週『常子、職業婦人になる』
43 44 45 46 47 48
第9週『常子、初任給をもらう』
49 50 51 52 53 54
第10週『常子、プロポーズされる』
55 56 57 58 59 60
第11週『常子、失業する』
61 62 63 64 65 66
第12週『常子、花山伊佐次と出会う』
67 68 69 70 71 72
第13週『常子、防空演習にいそしむ』
73 74 75 76 77 78
第14週『常子、出版社を起こす』
79 80 81