映画「マネーモンスター」 感想と採点 ※ネタバレなし


ざっくりストーリー
財テク番組『マネーモンスター』の名物パーソナリティ、リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は、巧みな話術と軽妙なパフォーマンスで、株価予想や投資アドバイスで視聴者の人気者だ。いつものように敏腕ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の指示を無視したアドリブで番組を進行していた。
そんな本番放送中に銃を持った男カイルが侵入し番組をジャックする。カイルは番組のアドバイス通りに投資をして全財産を失ったと言う。カイルは復讐のためにリーを人質にとり生放送で損失のカラクリを明らかにしろとパティに要求。そして、ついに「史上空前の人質犯罪事件の生中継」が始まった…※PG12
ジョディ監督ならではの “女性の描写” が見所
銃を持った男の財テク生放送番組ジャック事件と、犯人に大損失をもたらした金融業界の裏の闇とカラクリを暴くと言う2つの物語が同時進行するリアルタイム・サスペンス。
私が本作で注目したのは「女性」の描き方。もちろん監督はテレビシリーズ3作、映画4作の監督を務めており、自らも名作に出演する女優であるジョディ・フォスター。まず、ジョディにこうして次々と監督の仕事が来ると言う彼女の意思の強さと才能に感服するのだが…。
本作にも女性番組ディレクターのパティが登場する。日本のテレビ番組の制作現場ではあり得ないようなキャスターとディレクターのバトル。番組を盛り上げるために人質にも関わらず必死なリーと、命の関わる犯罪現場でもエンターテインメント性に手抜きをしないパティの演出が見所だ。
それに、フェミニストでもあるジョディ監督ならではの、女性の登場人物への演出は見応え十分。特に、徐々に周囲の同情を集めていく犯人カイルの説得に警察に駆り出させた妊娠中の恋人のブチ切れの演技とその演技指導には迫真に迫るものがった。
劇中の敏腕女性ディレクターとジョディ監督が重なる
とにかく、軽薄だが愛嬌のあるリーを演じるジョージ・クルーニー、知的で冷静で敏腕のディレクターを演じるジュリア・ロバーツがスクリーンに映るだけで豪華さの花が咲く。そして、スタジオと調整室との緊迫したやり取り、それを世界中の投資家たちが固唾を飲んで見守る姿を、小気味良いカット割りでサクサクと魅せていく。
舞台をテレビ局内からウォール街の街中、そして連邦公会堂へと移動する中で、韓国やアイスランドに住む優秀な頭脳を手際良く活用して真実に近づいていくのも如何にもネットや携帯の蔓延した現代風。
ただ、惜しむらくは、99分間と言うほぼリアルタイムで進んで行く本作だけに、終盤のネタばらしのくだりがちょっと拙速気味で雑なこと。しかし、一件落着したあとの、リーとパティの互いへの感謝と信頼、そして早くも次のネタを探すパティの底力に、ジョディ監督のそれが重なって映った。
あとがき
緊迫の立て籠もり事件が舞台で、時間経過と共に人質と犯人が互いの人間味の部分に触れて共感し合い、やがて観客も犯人に同情してしまうと言う基本構造は、アル・パチーノ主演の名作『狼たちの午後』に似ています。
あちらは、金融問題を武器に70年代のアメリカを赤裸々に描きました。こちらは、70年代から映画界の第一線で活躍するジョディ・フォスターならではの、現在のアメリカを切り取った作品と言って良いと思います。
最後に、事前情報なしに観に行った方が、リアルタイム・サスペンスを堪能できますよ。※PG12
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Ost: Money Monster
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